「んっ。ぁっぁぅ、ザ、ザベルさまぁ。もっと。もっとぉ」
 全裸の女が金色の髪を振り乱しながら身体を上下させる。
 彼女の下には覚めた顔でタバコを吹かす一人の男。
 ザベル・ザロック。
 世界を渡り歩くロックシンガー。
「つまんねぇ」
「ひゃぅ、あ、あ、あっ、イク、イクッ、ヒッ」
 女の声が途中で止まる。
 ザベルの光の無い目の先で、女の首がぱっくりと裂け鮮血が噴水のように溢れだしている。
 その血を上半身に浴び、真っ赤になったザベルがその場から起き上がる。
「うめぇ」
 女は屍となり、床へと転がり落ちる。
「やっぱ、女は犯すもんじゃねぇな。喰うもんだ」
「あら。食べちゃうの?もったいない」
 ザベルの背後から、耳に息がかかる距離で先ほどとは別の女の声がする。
「!?……誰だ!!」
 まったく気配無く現れた女。
「てめぇ、ヒトじゃねぇな」
「御明察。面白いお祭りがあるんだけど、参加してみない?」
「祭りだぁ?」
「そう、魔界も物質界も全てを巻き込んだ盛大なお祭り」
 魔界と言う言葉を聞いてザベルの表情が険しくなる。
「あの村も塔も時期に復活するわ。ヤツラの魔力……欲しいと思わない?」
 険しくなった表情が驚きに変わり、ザベルは首だけを女の方に向ける。
「俺は何をすればいい?」
「聞き分けのいい子。すぐに別なヒトが誘いに来るわ。そのヒトと一緒にいればいいの。そのうち、また会いましょう」
 それだけを言うと女は、来たときのようにまったく気配を感じさせずに部屋からいなくなる。
「ひゃっはぁぁ!!サイコーに盛り上がってきやがったぜぇぇぇ!!」
 ザベルがベッド脇に立てかけてあったギターを掻き鳴らす。音が響くたびに、ザベルの顔や身体が溶けはじめる。
 その姿は骨と肉のみの動く屍。
 ザベル・ザロック。
 魔界にその名を馳せた恐怖のロックシンガー。




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