−TAKA−
 美浜ちよという名の少女がある高校に通っている。
 俺の義妹だ。
 もっとも、彼女はまだ11歳。
 本来であれば小学6年生なのだが、特例中の特例で高校に飛び級。今は高校2年だ。
 俺の友人たちは、俺のことをうらやましがる。
 可愛い義妹がいて、ゆくゆくは恋人だと。
 と、いっても。俺には幼女の趣味はまったくない。
 俺とちよは8歳の年齢差だ。恋愛感情を抱くほうがおかしい。
 彼女は俺の・・・妹なのだから。
「うわ。雨か。そういや、日本は梅雨時期だったっけな」
 俺は中学を卒業して、アメリカの高校に進学をした。
 色々大変だったが、努力の甲斐もあって今はMITの学生だ。
 そして、2年ぶりの帰国。
 羽田空港に降り立った俺は雨の降る外を見ていた。
「タカお兄さん。おかえりなさい」
 外を見ていた俺の背後から声がかかる。
 可愛らしい声だ。
 最後に会ってから2年・・・俺は一日たりともこの声を忘れたことは無かった。
 振り向く。
 声のイメージ通りの可愛らしい姿の少女。
 髪を両側でお下げにし、白いワンピース姿だ。
「ただいま。ちよ」
 美浜ちよ。俺の義妹。
「また、可愛くなったな」
「えへへ。ありがとう」
 少し背も伸びたようだ。
 10歳で高校に入学と聞いて、どうなるかと思ったがどうやら元気でやっているようで安心した。
「さぁ、お家でお父さんとお母さんが待ってますよ」
「そうだな。色々土産話もあるからな、後で聞かせてやるよ」
 俺はちよの小さな手をとって歩き出す。

−CHIYO−
 お兄さんが帰ってきた。
 美浜貴洋。私はタカお兄さんって呼んでいます。
 4年前にアメリカに留学して、2年前に一回帰ってきたきり。
 電話も手紙もこっちからしないと、絶対に自分からはしてこないお兄さん。
「どうした?俺の顔に何かついてるか?」
「あ。ううん。なんでもないです」
 嫌われたのかなとも思ったけど、お兄さんの優しい顔は変わってませんでした。
 お母さんの言うとおりに、忙しかったのと筆不精なだけみたいです。
 大好きなお兄さん。
 お父さんとお母さんの次に大好きです。
 いつも私に優しくしてるところも好きだし、手をつないでいてくれるのも好き。あと、頭を撫ぜてくれるのも。
 こうして電車に乗っている時でも手をつないでいてくれます。
「結構ビルとか増えたな」
「私はあまり知らないけど、友達がまたビルが建ったって言ってましたよ」
「そういや、高校に行ったんだよな。学業は問題ないとして、友達とかはどうだ?」
「えへへ。大丈夫だよ。友達い〜っぱい出来たから」
「そっか。なら安心だ」
「うん。あ、お兄さんにも今度紹介しますよ」
 お兄さんの笑顔が好き。お兄さんの声が好き。お兄さんの全部が大好きです。
 あ、彼女さんとか出来たのかなぁ?
 もし、彼女さんがいるなら私はあまりくっつかないほうがいいかもですね。
 ちょっと寂しいです。
「あれ〜?どっかで聞いた声だと思ったらちよちゃんじゃん。やっほ〜」
「え?あ、ともちゃん」
 前の座席に座っていたのは、なんと同じクラスのともちゃんでした。
 こんなこともあるものなんですねぇ。
 ともちゃんは座席をひっくり返して、私たちと向かい合う形に座席を変えました。
 あ、お兄さんが不思議な顔で私とともちゃんを見ています。
「紹介しますね。クラスメートの滝野智ちゃんです。ともちゃん、こっちは私のお兄さんです」
「へぇ。ちよちゃんにお兄さんいたんだ。ども〜、滝野智でぇす」
「俺は、美浜貴洋です。よろしく。いつもちよがお世話になってるみたいで」
「あはは。いえいえ、そんなことはありませんよ」
「どっちかっていうと、私が世話をしているような」
「ちよちゃん、言うようになったねぇ」
「は、き、聞こえてました〜!?」
 うぅ。ともちゃんは地獄耳さんです。
「あ、ともちゃんはどうしてここに?」
「あぁ、うちのオトンが出張で北海道に行ったんだ。それの見送り〜」
 へぇ・・・あ。そういえば、ともちゃんのお父さんってどんな人なんでしょう?
 見たことありませんねぇ。
「ねぇねぇ、ちよちゃんのお兄さん」
「ん?」
「彼女・・・いる?」
 あわわわわわ。さっき、私が疑問にしてたことをともちゃんが口に。
 ともちゃんはこういうことが大好きだから油断できません。
「残念ながら。女友達はいるけど、彼女はいないよ」
 お兄さんは肩をすくめて言います。
 なるほど。いいことを聞きました。はっ・・・ともちゃんまさか!?
「へぇ。素材はすごくいいのに・・・ひょっとして性格が悪いとか?」
 確かに。それは私も疑問です。
 って、お兄さんの性格は悪くありません。悪いのはともちゃんの方です。
「そうだ。それじゃあ、私が立候補しようかな」
「ダメです!!そんなの絶対にダメなんです!!」
「ち、ちよちゃん?」
 はっ。えっと・・・あの、私。
「そんな立ち上がってまで否定しなくても。んふふ。お兄さんの幸せ者」
 あうぅ。顔から火が出そうです。
 あっ。お兄さんが・・・頭を撫でてくれました・・・こうされていると、とても幸せな気分になれます。
「いいなぁ。お兄さんかぁ。私もお兄さん欲しかったなぁ」
「えへへ。お兄さんは私だけのお兄さんなんです」

−TAKA−
「さ、つきました〜」
 俺とちよはタクシーを降りる。
 相変わらずこの家はでかい。
 そういえば、俺がこの家に来てからもう10年以上はたつんだよな。
 俺の両親が死んで、親父の親友だったちよの父に引き取られたのが8歳の時。
「どうしたんですか?」
「いや。相変わらず大きい家だよなと思って」
 丁度ちよが生まれたころのことだった。
 だから、ちよは俺が養子であることを知らない。本当の兄妹だと思っているはずだ。
「お兄さんの部屋はそのままです。あ、シーツとかお布団類はちゃんと洗濯されてますし、掃除もしてありますよ」
「ありがとう」
 俺は荷物を持って二階にあがる。
 お父さんとお母さんの靴が無かったところを見ると、まだ仕事から帰ってきていないようだ。
 俺は懐かしさを感じながら自室のドアを開く。
 ベッドがあって机があって。本棚やタンスがある。
「ん〜・・・やっぱここはいいなぁ」
 俺は荷物を置いて上着を脱ぐとベッドに横になる。
「あれ?これは・・・」
 ベッドと壁の隙間に何かが落ちている。
 白い布?
 ほほう。これはひょっとして。
「お兄さ〜ん。お父さんとお母さんはあと1時間で・・・って、あわわわわわ、な、何を持ってるんですか〜!」
 俺はその白い布を広げてちよに見せていた。
 ペンギンのワンポイントの入ったそれは、ちよのパンツだと思われる。
 それはちよによって奪われ隠された。
「むぅ」
「なんで、こんなのが落ちてるんだ?」
「・・・寂しかったときに・・・お兄さんの部屋で寝たから・・・」
 うつむいた顔が紅い。
「そか。ちよ。こっちにおいで」
 俺はちよを抱きしめる。俺の鼻腔をちよの甘いにおいが突き抜けていった。
「休みは短いけど、休みの間は出来るだけ一緒にいるようにするよ・・・寂しい思いをさせてごめんな」
 ちよが頷く。
 頭もよくて高校生のちよだけど、やっぱりこういうところはまだまだ子供だな。
「お兄さん」
「ん?」
「今日は一緒に寝ていい?」
「いいぞ」
「一緒にお風呂に入ってくれる?」
「もちろん」
「・・・・・・嬉しいです」
 そうだよな。
 やっぱりちよは子供なんだ。自分よりも5歳も上の人たちに囲まれて過ごして。
 不安や寂しさや辛さがないはずがないんだよな。
 少なくとも俺がいる間だけでも、それが和らいでくれればいいな。
「そういえば、お兄さんはいつまでいるんですか?」
「えっと、今日が土曜だろ?2週間はいれるから・・・再来週の土曜までだな。日曜の朝の便で帰るから」
「2週間・・・うぅ。やりたいことがいっぱいあって全部できないかもです」
 ちよは、俺の部屋の本棚から雑誌を取り出す。
 レジャーランドの雑誌のようだ。
 俺の本じゃないな。ま、ちよがここをよく使っている証拠のようなものだ。
「えっと。ここも面白そうですし、こっちもいいですよね。あ、でも・・・」
 一生懸命に雑誌を読んでは折り目をつけている。
 そんなちよを見ているとどうにも微笑ましい雰囲気になってしまう。
「あ。私の顔に何かついてます?」
「いや。楽しそうだなって思って」
「楽しいですよ。お兄さんと出かけるなんてめったにないんですし」
「そうだな。よし、じゃあ俺も片付け終わらせてちよと計画を練るか」
「はい!」

−CHIYO−
「ふぅ。いいお湯です」
「くく。なに年寄りみたいなこと言ってるんだ」
「そんなにお年寄りみたいな言葉ですか?」
 浴槽にはられた真っ白なお湯。
 普段はこんな入浴剤は入れないんだけど今日は特別です。
「うへ。真っ白だな。これじゃあ何も見えないぞ」
「見えないって何を見るつもりですか?」
「もちろん、ちよのおっぱいがどれだけ成長したのかをだな」
「入浴剤を入れて正解でした」
 お兄さんも湯船につかる。
 本当に入ってしまえば、自分の手すら見えないくらいに真っ白です。
「やっぱ風呂はこうだよなぁ」
「??」
「俺の住んでる場所、ユニットバスなんだけどさ。浴槽が狭くて狭くて。向こうはシャワーが多いから広さは必要ないんだと」
「あぁ。なるほど」
 そうは言っても、お兄さんは背が高いから特別な気が。
 あ、でも、アメリカの人ならお兄さんと同じくらいの背の人はいっぱいいますよね。
 じゃあ、やっぱり狭いのかな?
「温泉に行きたいなぁ。紅葉に囲まれた露天風呂・・・日本の風物詩だよな」
「そうですね。露天風呂って気持ちがいいです」
「・・・ちよ。こっちにこい」
 きゃっ。抱きしめられました。
 さっきと違って裸だから、少しドキドキします。
「あっ」
「ん〜。こっちはあんまり成長してないなぁ」
「お、お兄さん・・・」
 お兄さんの手が私の胸の上で。
「バカバカバカバカバカバカ」
「いてててて。桶でたたくな、悪かったよ」
 もぅ。お兄さんがこんなにエッチになってたなんて。注意しないといけませんね。




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