「榊さん、今日はどっちに行きましょうか?」
「じゃあ・・・こっちにしよう」
 ちよと榊、そして忠吉とマヤーがいつものように散歩をしている。
 これは毎日の日課として二人と二匹は道を進む。
 夕焼けが徐々に沈み、高台からみる街が真っ赤に染まる。
「綺麗ですね」
「あぁ」
 天気のよい日にしかみることのできない景色。
「ん?あわわわわ。忠吉さんダメですよ〜」
「マヤー!」
 草むらに落ちていた何かを二匹は食べていた。
 黒い何か。
 二匹はそれを食べきってしまった。
「ぁぅぅ。いったいなんでしょう」
「多分、蛙とかだと思う」
「カエル!?もう、ダメですよ!忠吉さん!!」
「マヤーも。落ちているもの・・・特に生き物をそのまま食べるのはダメだ」
 二人は二匹をしかる。
 頭のよい二匹だ、二人が言ったことを理解したのだろう。
 頭を下げて、反省の意を見せる。
「ふぅ。じゃあ、帰ろうか」
「はい!」
 二人の後ろに二匹がついて歩く。
 徐々に太陽は沈み、暗闇が街を支配する時間がやってくる。

「おじゃましま〜す」
 今日は土曜日。
 ちよちゃんのうちに、いつものメンバーが集まって勉強会だ。
 ただ、榊とちよの顔だけは少し暗い。
 あの日、散歩の途中で何かを食べた忠吉とマヤーの調子が悪いのだ。
 獣医につれて行ったが、原因は不明だった。
「なぁなぁ。忠吉さんおらんのか?」
「え?」
 普段は庭かちよの部屋にいる忠吉。
 大阪が言ったとおりにどこにもその姿は見えない。
「マヤーもいないな」
 暦が部屋を覗いてそう言う。
「・・・ちよちゃん」
「あ、朝はいましたよ?」
「脱走はしないだろ?あの二匹、榊たちに懐いてるし」
「よっしゃー!!忠吉とマヤーの捜索だー!!」
 ちよの家はでかい。
 とはいえ、小さなマヤーとは違って、大きな忠吉なら簡単に見つかるだろう。
「どこに行ったんでしょう」
「私は・・・外を見てくる・・・ちよちゃんたちは家の中を」
「はい」
 榊が外に出る。
「それじゃあ、私は・・・隣の部屋をみてこよっと」
 智はちよの部屋の隣の部屋のドアを開く。
「・・・っ!?」
 部屋の中を見て、声にならない悲鳴をあげる智。
 なんとか、部屋の外にいる暦たちに知らせたいが驚きで声があがらない。
 そして、彼女は何者かに部屋の中に引き釣りこまれてしまった。
「とも〜・・・そっちにいたか?」
 一階を見ていた暦が二階にあがってくる。
「あれ?とも?」
 ともが探すと行っていた部屋のドアを開く。
「!?・・・とも!!!」
 暦が部屋の状況を見て叫び声を上げる。
 その声を聞きつけた他のメンバーが部屋に向かってくる。
「どうしたんですか?」
「ともが怪我でもしたのか?」
「・・・忠吉さんおったん〜」
「お前ら来るな!!・・・うっ。うわぁぁぁ!!!」
 部屋の外。
 ちよたちには部屋の中は見えない。
 尋常ならざる事態と把握した神楽が真っ先に部屋の中に入る。
「うっ」
 あまりの状況に神楽の顔がゆがむ。
「どうしたんですか?」
 ちよと大阪もその後に続いて部屋に入ってくる。
「見るな!」
 部屋の中が見えないように、神楽がちよの体を抱きしめる。
 しかし、一瞬遅かった。
「え?」
「なんや・・・あれ」
 3人の前。
 そこには熊ほどの大きさの真っ白な犬と牙と爪の光る巨大な猫。
 二匹とも、口の周りと足元を真っ赤に染めていた。
 そして、足元には真っ赤な液体の中に身を沈める二人の少女。
「とも・・・ちゃんと・・・よみさん?」
 先に部屋に入っていたともとよみの身体。
 四肢は切断され、内臓が飛び散っている。
 二匹の獣はその二人の身体を一心不乱にむさぼっている。
「忠吉さんや・・・忠吉さんとマヤーや」
 大阪の言ったとおり、二匹の獣は忠吉とマヤーにも見えなくもない。
「うそだろ。なんで」
 神楽がちよを抱きしめたまま一歩さがる。
「っ!!大阪!!そこをどけ」
「へ?」
 大阪が横を向いた瞬間、その首が宙を舞う。
 真っ赤な鮮血を撒き散らしながら廊下を転がる首。
「・・・何かあったのか?」
 外から戻ってきた榊が階段を上ってくる。
「榊!!逃げろ!!ちよちゃんを頼む」
 神楽はちよを榊の方に投げ、榊が抱きとめる。
 乱暴なやり方だがそのおかげでちよは死を逃れた。
 神楽の胸をマヤーの腕が貫き そのまま先ほどまでちよが立っていた場所にまで爪が伸びている。
 大阪の首を刈ったそのままの勢いで神楽の方に飛んできたようだ。
「・・・マヤー?」
「榊さん!!榊さん!!みなさんが」
 ちよを抱きしめたまま、階段を下りる榊。
「どうなってるんだ」
「わかりません。わかりません・・・」
 ちよは涙を流し続ける。
 階段に背を向け、玄関から出ようとしていた二人の背後。
 何かが上から落ちてくる音がする。
 恐る恐る振り返る二人。
「!?」
 そこには、胸に巨大な穴の開いた神楽の体。
「かぐら・・・さん。うっ」
 ちよがその場に四つんばいになり、嘔吐する。
 屋敷の中にむせ返るような血の匂いが充満している。
 榊が顔をあげると、階段の上から忠吉が二人を見下ろしている。
 その足元には、大阪の頭が。
「春日さん・・・神楽・・・」
 榊が顔を背ける。
 その一瞬に忠吉は飛び出し、榊にその巨体をぶつけ吹き飛ばす。
「っ・・・ぐっ」
 ドアにぶつかりその場に崩れ落ちる榊。
 うつぶせに倒れ、その目の先にはまだ動くことの出来ないちよの姿。
「がっ!」
 その榊の頭を何かが踏みつける。
 マヤーだ。
 マヤーの前足が榊の頭を踏んでいる。
 つぶさず、逃げられない程度の強さで。
「ま・・・マヤー」
 呼びかけるがマヤーは何の反応もしない。
 視線をちよの方に戻す。
 動けないちよの上に忠吉が覆いかぶさる。
「ちよちゃん!」
「・・・ぇ?」
 榊には見えた。
 忠吉の生物のものとは思えない、先が鋭くとがり長く巨大なペニスが。
 それが、一気にちよの小さな膣に突き入れられる。
「ぁっ・・・ぁ・ぁ・ぁ」
 ちよの目が見開かれる。
 巨大なペニスは、処女膜だけではなく膣そのものを裂き、ちよの身体に進入してゆく。
「ちよちゃん・・・くっ」
 榊が顔をそらそうとするが、マヤーに押さえつけられそれもできない。
 目を瞑るが、目に焼きついた友の姿が鮮明に映る。
「・・・マヤー・・・忠吉さん・・・どうして」
 マヤーの顔は榊からは見えない。
 忠吉は、すでに事切れているちよを未だ犯し続けていた。
 それがどれだけ続いていただろうか。
 5分か10分か。もしくは1時間か。
 榊のあらゆる感覚はすでに麻痺し始めていた。
 全く動かなくなった榊。
 その頭からマヤーが足をどける。
「ぁ・・・くぁっ」
 そして、後ろ足で砂をかくように榊を吹き飛ばす。
 強く壁に叩きつけられ身体のいたるところから血を噴出す。
 榊は呆然と自分の身体を見る。
 上半身と下半身が別れ、上半身は壁に張り付き、下半身はその下で倒れている。
「・・・夢・・・これ・・・は・・・夢・・・なんだ」
 榊の視界が徐々に狭く暗くなってゆく。
 最後に彼女が見たのは、マヤーの巨大な口だった。




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