「昔な」
大阪が唐突に話始める。
「・・・私、一回死んだことあるねん」
「はぁ?」
声に出した智だけでなく、暦もちよも榊も目を丸くする。
昼休みの屋上。大阪が立ち上がり、フェンスそばまで歩いて行き外を見る。
「大阪に居たときにな、車に轢かれたんや」
「ならなんで生きてるんだよ」
「・・・聞きたいんか?」
フェンスに手をかける。
「そ、そこまで言われて聞かないわけにはいかないだろ」
智の言葉によみがうなずく。
ちよと榊はあまり乗り気ではないらしい。
「轢かれた時のことは、よく覚えてるで・・・まずは一台目にはねられてねられて飛んで壁に激突したんや」
4人はつばを飲み込む。
「でな、倒れた私の腕や脚を二台目・三台目がつぶしていったんや」
「お・・・大阪?」
「痛かったでぇ・・・右腕はな、完全にバラバラになって道路に散らばってたんやで」
4人の顔をが青ざめる。
大阪の雰囲気がおかしい。
「・・・こんな感じになっとったんや」
大阪が左手で右腕を引っ張る。
『!?』
右腕ははずれ真っ黒になってゆく。
「お、大阪・・・それ、おもちゃだよな?」
かろうじて智が声をだす。
残った3人は身動きすらとれない。
「・・・でな。そろそろこの体も無理っぽいねん」
振り向く大阪。
「ひっ」
あまりのことにちよの目には涙がたまる。
「だからな、さよならがいいたかったんやけど・・・」
大阪の顔からは眼球が飛び出し、腹は裂け臓物が飛び出ている。
腕や脚もボロボロだ。
「やっぱ、さみしいのはいややんなぁ」
大阪が一歩歩き出す。
体の一部分が崩れだした。
「智ちゃんもよみちゃんも・・・ちよちゃんも榊さんも・・・一緒にいかへんか?」
「お、大阪!?・・・お、お前」
徐々に4人に近づいてくる。
「ホントはな。死ぬ時に一人になりたくてこっちに引っ越したんや。けどな・・・ここは暖かすぎたんや」
榊がちよをその身で抱きしめる。
「っく・・っく・・・おおさか・・・さんがぁ・・・」
「大丈夫だ。ちよちゃん・・・大丈夫」
大阪が動きを止める。
「まだみんなと一緒にいたいんや・・・ほな・・・いこか」
ちよは目をつぶる。
一瞬、微かな衝撃がその小さな体に感じられた。
「・・・ぁ」
ちよが目を開く。
青い空。白い雲・・・いつもの校舎。
大阪の姿はどこにもない。
地面に血溜りが出来ているだけだ。
「!?・・・榊さん!!智ちゃん!!よみさん!!・・・大阪・・さん・・・」
ちよを抱きしめていた榊も、隣にすわっていた智と暦も・・・その姿を消していた。
先ほどまで食べていた弁当箱だけが、その場に転がっている。
「ぁ・・・ぁぁ・・・」
ちよは榊の弁当箱を持ち上げ、胸に当てて泣き崩れるちよ。
「・・・一人残るのはさみしいねんな」
「え?」
カラン。
弁当箱が落ちる乾いた音が、誰も居ない屋上に響き・・・そして、消えた。