「あれ、この机まだ片付けてなかったんだ。宗介、放課後片付けに行くわよ」
 かなめが教室の後ろに並んだ二つの席を見てそう言う。
「1週間なんて、あっという間だったなぁ」
 和輝と光。トゥアハー・デ・ダナンの作戦に参加させられてから、特に事件はなにも起きなかった。
 しいて言えば、宗介が暴走して光のスカートの一部がこげたことはあったが。まぁ、かなめにとっては日常茶飯事だ。
 そして、二人が帰ったのが先週の金曜日。たった1週間だけなのに別れはひどくつらいものだった。
「はいはい。みなさん。席に着いてください」
 かなめたちのクラスの担任、神楽坂恵理が教室へと入ってくる。
「えっと、今日は転校生を紹介します」
「転校生?こんな変な時期に?」
 クラス中がざわめく。
「みなさんも、この二人のことは十分に知ってると思います。さ、入って」
 ドアを開けて入ってきたのは、先日、自分の街に戻ったはずの牧和輝と陽ノ下光だ。
 ただし、二人ともひびきの高校の制服ではなく、陣代高校のものを身につけている。
「ちょ!なんでアナタたちがここに居るの!?」
 思わずかなめが立ち上がって叫ぶ。
「はいはい。千鳥さん、質問は後にしてください」
「あぁ・・・とりあえず。今度は転校してきた。1年半ほど、よろしく頼む」
「えっと。ただいま・・・になるのかな?えへへ。みんなまたよろしくね」
 挨拶が終わり、先日まで座っていた、教室の後ろに二つ並んだ席へと座る。
「・・・まぁ、いいわ・・・後で質問攻めよ」
 そのまま授業が始まり、そして、最初の休憩時間。
 予想通りというか、クラス中のみんなが和輝たちの周りに集まってきていた。
「ちょ、これじゃあ、話できないじゃない」
「・・・みんなを静まらせればいいのだな?」
 かなめの隣に立っていた宗介が懐から拳銃を取り出す。
 それを天井に向かって一発発砲する。
『・・・・・・』
 一瞬クラスのみんなが沈黙する。が・・・
「相良脅かすなよ」
「えっと、どこまで話したっけ?」
「牧くん。おかえりなさい」
 ・・・・・
 宗介の発砲が日常となりつつあるこのクラスでは、その程度では役には立たなかった。
「・・・む」
「宗介・・・なにしてんの?」
「これならば、全員まとめて沈黙させることが出来る」
 宗介が次に懐から取り出したのは、手榴弾。通称パイナップルボム。
 どうやら、先ほどの行動がうまくいかなかったため強攻策に出るようだ。
「沈黙の意味が違うでしょうが!!」
 かなめの巨大ハリセンがうなりを上げる。
 そして、先ほどの発砲音と変わらない大きさの炸裂音が教室内に響いた。
「ま、いっか。放課後でも」


「光、牧くん。ちょっと話をしたいんだけど」
 放課後、かなめが光たちに話し掛ける。
 先週の1週間で、かなめと光は呼び捨てで呼び合うような仲の良さとなった。
「あ、私も聞きたいことあったの。生徒会室ってどこ?」
「生徒会室?」
「うん。私と和輝くん、生徒会長さんに呼ばれているのよ」
 そういわれて、かなめが宗介をお供にし、光と和輝を生徒会室に案内する。
「はじめまして。私が生徒会長の林水敦信だ」
 生徒会室にはただ一人の生徒だけが居た。
 ただ一人だけの白い学生服姿の生徒会長。
「はじめまして。今日この学校に転校してきた、陽ノ下光です」
「同じく牧和輝です」
 林水の前に二人が並んで立つ。
「えっと・・・じゃあ、私たちはこれで」
「あぁ。待ちたまえ。千鳥君と相良君んも呼ぼうと思っていたところだ」
「へ?」
 かなめと宗介が顔を見合わせ、二人も林水の前に並ぶ。
「実は4人に頼みたいことがあるのだ」
「頼みたいこと・・・ですか?」
「うむ。実は多自連主催の裏スポーツ大会が開かれるのだが」
「帰ります」
 かなめが回れ右をして生徒会室を出ようとする。
「まだ何も言ってないではないか」
「言わなくてもわかります!あの多自連が主催で、なおかつ!裏ってなんですか裏って!!」
「別に全裸で行うとか、そういった類ではないぞ」
「わかってます!」
「まぁ、話だけでも聞いてくれ。それを聞いてから決めても遅くはあるまい」
 林水の話はこうだった。
 多自連。多摩地区高校自治連絡会。
 簡単に言えば、多摩地区に存在する全ての高校の生徒会長が集まって高校生によりよい生活を送ってもらおうという組織だ。
 その多自連の今年の議題は、爆発寸前の不良どもをどう鎮圧するかだった。
 会議の内容はさておき、結論として出たのが、不良どもを統一する人物を選び出し、統一してしまえばいいということだった。
 その統一する人物を選ぶのが、裏スポーツ大会。ぶっちゃけ、不良ども掃討大喧嘩といったところだ。
「まぁ、古来より、あぁいった輩は頭に従順に従うものだからな」
「・・・はぁ・・・で?」
「幸か不幸か、我が陣代高校には目立った不良と言うのがいない・・・そこでだ」
「わかりました。宗介と牧くんを出場させて、優勝を狙おうと」
 確かに、一介の不良程度ではこの二人に負けるわけがないだろう。
 もし優勝することが出来れば、辺り一帯の不良は全て陣代高校の傘下に入るわけで・・・あまりよい結果ではないように見えるが。
「えっと・・・私はなんのために呼ばれたんですか?」
「そうですよ。私と光は別になんの関係もないじゃないですか」
「君たち二人は商品だ」
 ・・・・・・・・・・・・
 きっかり30秒、その場の空気が停まる。
「参加するものは自分がもっとも大事な商品を用意することとなっている。優勝商品の代わりだな」
「なんなんですか!!その人権を無視した・・・というか、それなら普通に物をもってこさせればいいじゃないですか」
「問題ない。俺たちが優勝すればそれでいいだけだ」
「いや、そうなんだけど・・・」
「決定だな」
「ちょ。ちょっと!!」


 大空に煙と音の花火が打ちあがる。
「・・・はぁ。とうとうこの日になっちゃった」
「安心しろ、君の商品としての登録は通った」
「・・・おかげで、他の学校の人がやっきになってるんだけど・・・」
 今日は多自連主催の裏スポーツ大会の開催日。
 場所は、某巨大グラウンド。
 もちろん、周りのギャラリーは全て不良たちだ。
「和輝くん・・・信じてるから」
「あぁ」
 人の目をはばからずにいちゃつく二人。
 以前のトゥアハー・デ・ダナンでの一件以来、何かとラブラブな二人だった。
「光が応援していてくれれば俺は絶対に負けないよ」
「うん。もう、めいっぱい応援してあげる」
 好きにしてくれ。
『予選と本選の抽選を行うので、参加選手の方はお集まりください』
「・・・行ってくる」
「し、仕方ないから・・・応援してあげるから・・・頑張るのよ。べ、別に・・・自分の・・・ためなんだから」
「・・・了解した。善処を尽くす」
 宗介と和輝が予選会場へと向かう。
 予選はいたってシンプルなものだった。
 ・・・最終的に立っていたもの8校が予選通過。
 ルールは殺し以外はOKのルール。乗り物以外の武器は可。ただし、美しき不良の美学ある武器とされている。
『そこ!拳銃は美学に反します、没収。地雷も手榴弾も使うな!!』
「・・・宗介」
 アナウンスが聞こえて、かなめが頭を叩く。
「あ・・・あははは」


 予選は誰もが予想だにしなかった結果となった。
 開始5分。
 審判が止める暇もなく、その場に立っていたのは2人の男。
 相良宗介と牧和輝。
 それぞれの足元には、ぐったりと動かなくなった男どもが倒れている。
『・・・えっと・・・これは、陣代高校の優勝でいいんでしょうか?』
 そんな自信のなさげなアナウンスが流れる。
「・・・やっぱりそういう結果になったか」
「あの二人に普通の高校生が勝てるわけないよね」
「うんうん」
 かなめがしきりにうなずく。
 ただ、光の頭の中には彼らに勝てそうな人物が一人だけ浮かぶ。
 ひびきの市に住んでいて、和輝との決闘で引き分けた男が。
「まぁ。これでいいんじゃない?」
『えっと・・・へ?』
 会場の真ん中で、和輝と宗介がにらみ合いをはじめる。
「どっちが上か決めようってのか?」
「あぁ。貴様はクルツよりは腕がありそうだしな」
「言ってくれるじゃねぇか・・・工作部隊として単独で任務をこなすための訓練を受けた俺に勝てるとでも?」
「思ってるから言っている」
 二人は構えをとる。
 宗介は右腕を上着の中にいれ、横移動できるように。
 和輝は右手にコンバットナイフを持ち、体の重心を下げ、いつでも前に飛びかかれるように。
「あ・・・アイツら!!なにしてんのよ!!!」
「和輝くん、ファイト〜」
「へ?あ、むぅ。こらぁぁ!宗介。負けたら古文のノート見せてあげないからね」
 真剣。
 まさに今の二人は戦場にいるかのようだ。
 じりじりとその間合いを詰めながら、お互いの距離を詰める。
「ね、ねぇ・・・ちょっとこの雰囲気はやばいんじゃないかな?」
「うん。でも、もう・・・止められないよ」
 光にはわかる。
 強いものを目の前にしたときの和輝。
 ひびきので、あの男と対面した時も同じだった。
「・・・行くぞ」
 先に動いたのは宗介だった。
 横に飛びながら懐から拳銃を取り出す。
 審判の目を潜り抜けて手に入れたものだった。
「っ!」
 和輝がそれに瞬時に反応し、手に持ったナイフを宗介に向けて投げる。
 それは、まさに宗介の動きを予想した行動だった。
 横に飛んだ宗介の位置を先読みして投げられたナイフは、拳銃にぶつかりそれをはじく。
「・・・!」
 和輝はナイフを手放すと同時に動いていた。
 拳銃がはじかれ宗介の動きが一瞬止まった瞬間、彼の顔に向かって拳が飛ぶ。
 宗介はそれを左肩で受けると、その反動を使って和輝を後方に投げ飛ばす。
「ふっ」
 空中で器用に反転し足から着地する和輝。
 そして、その足元には先ほど弾き飛ばした拳銃とナイフが。
「しまっ!」
 宗介が体勢を立て直そうとした瞬間。
 その額に銃口を突きつけられた。
「・・・終わりだ」
 和輝の抑揚のない声。
 戦場で敵を前にしたときのような、そんな冷酷な瞳を宗介に向ける。
「え?」
「和輝くんだめぇぇぇ!!」
 一発の発砲音。
 地面に穿たれた一発の弾痕。
「俺のほうが上だったようだな」
 弾丸は宗介の脇を抜け、地面に当たっていた。
 撃つ瞬間に銃口をずらしたのだ。
『・・・・・・うぉぉぉぉぉぉぉ!!』
 会場は割れんばかりの歓声で包まれた。
 男と男。いや、戦人と戦人の真剣勝負。
 映画などでは決して真似の出来ない緊迫感。
 それが会場にいた不良たちを感動させていたのだった。
「ふぅ・・・まったく、心臓に悪いわよ」
「うん。戻ってきたらお説教だよ、まったく」
『これで真の勝者が決定だ!!優勝校は文句無しの陣代高校。そして、俺たちの王は!牧!!和輝だぁぁぁ!!』


「・・・少佐に再度訓練を付けていただかねば」
「俺はいつでも挑戦を受けるぞ」
 優勝商品が届くということで高校に戻ってきた4人。
 商品はのほとんどは特攻服やバイク。変り種では、パソコンや改造車なんてのもあった。
 あたりまえだが、自分の彼女を賭けている人間は誰も居ない。
「さって、たいして欲しい物はないな」
「・・・む。この、61式戦車と言うのは」
「どうせラジコンだろ」
 荷物はトレーラーでまとめてグラウンドに届くということなので待っているのだが。
「どうするの?こんなの」
「生徒会長にでも預けるさ。あの人なら倉庫の1個や2個持ってるだろうし・・・別に元の持ち主につき返してもいいだろ?」
「はぁ。多自連もろくなこと考えないわね・・・あ、トレーラーが着たわよ」
 グラウンドに一台のトレーラーが入ってくる。
「あれ。1台に全部入りきったのか?」
「さぁ」
 どう考えても、車やバイクが何台も入っているようには見えない。
「牧和輝と相良宗介ってのはどいつだい?」
「あ、俺たちですけど」
「んじゃ、荷台開くから後ろにまわんな。長年輸送業やってるけどこんなの運んだの初めてだよ。うらやましいねぇ」
 トレーラーの運転手がそんなことを言う。
「うらやましい?」
「・・・そんなにいいもの入ってたっけ?」
 和輝と光が顔を見合わせる。
 4人がトレーラーの後方に回ると、後方の扉が自動で開き始めた。
「牧さまぁぁぁ!」
「宗介・・・さん。愛してます」
 扉から出てきたのは、機械の塊や布ではなく、下着姿の女性。
 それも、1人や2人ではない。ざっと見ても20人以上はいるだろう。
「はぁはぁ・・・和輝さま・・めちゃくちゃに・・・してぇぇぇ」
「もう、アタイだめ・・・ねぇ、宗介。あなたの硬いの・・・ちょうだい・・・」
 あっけにとられる4人。
 女たちは我先にと、宗介と和輝の体に自分の体をこすりつけて行く。
「・・・はっ!ちょ、ちょっと待て!!誰だお前たち」
「おっと、もう届いていたか」
 林水がどこからともなく現れる。
「あの戦いを見ていた女性陣が君らに惚れたようでね。各不良の宝物と交換したのだよ」
 すごいことをさらっと言いのける。
「・・・・ふぅん・・・和輝くん・・・」
「宗介・・・そういうことだったんだ」
 光とかなめからどす黒いオーラがにじみ出る。
 今までに感じたことの無いような激しい殺気だ。
「最後の真剣勝負って」
「これが目的だったのね」
『最低!!』
 和輝と宗介の頬に真っ赤な跡が残るほどのビンタを放つ。
 そして、二人は彼らのことを見ることなく帰っていってしまった。
「ちょ!光!!光!!!」
「放せ・・・千鳥を追いかけなくては」
 二人が女たちから開放されたのはこれから10分後。
 だが、この問題が解決するまでの1週間、彼らは一度も口をきいてもらうことは出来なかった。





かなめ  「サイテー」
光    「見損なったよ」
和輝   「ちょっと待て!!俺は・・・言われた通りにしただけだ!!」
光    「でも、ものすごく嬉しそうだったしぃ」
宗介   「・・・嬉しいものなのか?あれが・・・アレでは敵に殺してくれと言っているようなものだぞ」
和輝   「は?」
宗介   「確かに、降伏の証として着衣を脱いで武器の所持をしていないことを表現することもあるが」
かなめ  「あんたがどっかずれてて、今回は救われたわ・・・」
恭子   「しくしくしく」
かなめ  「あら?恭子」
宗介   「常盤ではないか。どうしたんだ?」
恭子   「ねぇ・・・カナちゃん・・・私たち親友だよね?」
かなめ  「へ?・・・あ、あぁ・・・うん。そうだと思う」
恭子   「なのにどうして私は一回も出てないの?」
かなめ  「一回もって、学校内の話って今回が最初じゃない。そのうち出番あるって」
恭子   「・・・林水先輩はいっぱいでてるのに・・・」
かなめ  「う・・・」
宗介   「常盤。大丈夫だ。キミが出れないのはたんに作者がキミのことを千鳥の友人Aとしか思っていないからだ」
恭子   「びぇぇぇぇぇぇん!!」
かなめ  「バカ!!なんてこと言ってるのよ」
宗介   「事実を言ったまでだが。つまりは出れるかもという希望的観測はだな」
かなめ  「黙ってなさい!」
和輝   「帰るか?」
光    「うん。取り込み中みたいだしね」
テッサ  「あら、牧さん。こんにちは」
かなめ  「あれ?テッサ・・・今日は出てなかったのにどうしたの?」
テッサ  「相良さんと牧さんに会いに来たんです」
和輝   「・・・・・・せっかくだけど、俺は光と帰るから。じゃぁ」
光    「・・・(よし」
かなめ  「行っちゃった・・・この前まではテッサにべた惚れだったのに」
テッサ  「・・・これは忌々しき事態ですわね・・・洗脳でしょうか」
かなめ  「テッサ?」
テッサ  「それでは私も帰ります。このことに対して対処しなければ」
宗介   「いってしまわれたな」
かなめ  「うん・・・・・・・・・ま、いっか。楽しそうだしね」
宗介   「うむ」
恭子   「私は楽しくなぁぁぁい」

 
 

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