「状況を」
テッサが艦長席に着く。
「0218に艦のソナーが未確認の潜水艦を発見。小型探査艇を出したところ撃墜。その後、ソナーには何も反応がなくなりました」
テッサの前に第2種警戒態勢後の状況を記した紙の束が運ばれてくる。
それを速読で読みはじめる。
「・・・AS隊は?」
「現在、ウルズチームが操縦席内で待機中です。相良軍曹もアーバレストへの搭乗を指示しました」
トゥアハー・デ・ダナン副艦長のリチャード・マデューカスがそう報告する。
「・・・確かM9が一機空いていたはずです。牧和輝さんをそれに搭乗させてください」
「なんですと!?どこの馬の骨かもしれない男にM9を」
「大丈夫です。彼はきっと乗りこなしてくれます」
「牧和輝」
「はい」
「特例をもってこの時よりミスリル西太平洋戦隊への所属を命じる。階級は伍長だ」
「了解しました。サー」
和輝の目の前にいるのは、12時間ほど前にあったばかりのカリーニンだ。
そして、自分がミスリルに所属になったと言うことは、今から彼は和輝の上官となる。
「千鳥かなめ、陽ノ下光。申し訳ないが君たち二人にはこの作戦が終了するまでここにいてもらう」
「はい」
「和輝くん。無茶しないでね」
カリーニンが和輝を連れて出て行く。
向かう先はASの格納庫だ。
「・・・これは。M9!?・・・さすがミスリル・・・」
「貴様には今からこれに乗ってもらう。操縦方法はわかるな」
わかるか?ではない、わかるな。だ。
つまりは、問答無用で乗れと言っているのと同じこと。
「いいか。事と次第によってはいきなりの実戦だ。甘く見ていると、死ぬぞ」
「肝に銘じておきます」
「よし。行け!」
脚部のスイッチを入れ、操縦席までのラダーをおろす。
「・・・内部仕様はM6の発展と言ったところか。スペックは桁違いなんだろうけどな」
慣れた手つきでM9を起動していく。
『はぁい。聞こえてる?』
起動が完了すると同時に、無線機から女性の声が。
「はい。聞こえてますが」
『私はメリッサ・マオ。曹長よ。コールサインはウルズ2。このSRTのリーダーをやってるわ』
「隊長ですか。よろしくお願いします」
『本当なら顔を合わせてからの方がいいんだけどね。とりあえず、暫定であなたのコールサインは』
『マオ。こいつはリボルバーだ』
宗介が突然、無線に割り込んできた。
『リボルバー?・・・長いからウルズRって呼ぶわよ。OK?』
「了解しました」
『かったいねぇ。まるでソースケが二人いるみたいだぜ』
また別の声が割り込んでくる。今度は男の声だ。
『俺はクルツ・ウェーバー。階級は軍曹。コールサインはウルズ6。ちなみにソースケは7だ』
「はっ。軍曹殿」
『だからかてぇって!ま、最初だから仕方ないか。これが終わったら親睦を深めるために飲みに行こうぜ』
『はいはい。おしゃべりはそこまでよ』
マオがその場を仕切る。
あたりまえだが、隊長とはそう言う役目もになう必要がある。
『ウルズR。ASの操縦経験は?』
「M6であれば。1年ほどほぼ毎日乗ってました」
『OK。操作系は似てるけど、レスポンスと出力がまったく違うからね。最初から慣れろとは言わないけど、動けないっては無しよ』
「は。善処を尽くします」
メインモニターの一角に、四角い枠が表示され、そこにテッサの顔が映る。
どうやら、作戦が決まったようだ。
『敵が判明しました。敵は世界的に手配を受けているテロ組織。この先の無人島に基地を作っていたようです』
サブモニターに地図と衛星写真が映る。
それを見る限りでは、基地は地上にはほとんど出ていないうえに、木々で覆われている。
今まで見つからなかったのも無理はないだろう。
『では、作戦を説明します』
敵は警戒はしているが、このトゥアハー・デ・ダナンを発見はしていないようだ。
それが、技術力で世界の10年先をゆくミスリルの作り出した最新鋭機の本領だ。
『AS隊は上陸後、直ちに基地の包囲。敵もASを所持していると思われるので、敵ASの沈黙を最優先事項とします』
AS戦闘。
和輝は久しく忘れていた高揚感を感じ、今一度、大きく息をする。
『敵の沈黙後、こちらの工作隊が内部に侵入・・・その際に牧伍長。あなたも中に入ってもらいます』
「自分がでありますか?」
『えぇ。あなたはこのミスリルでは新人ですが、Gunsでは工作部隊長を勤めていたほど。よろしくお願いします』
「了解しました。サー」
『では。今から10分後に作戦を開始します』
モニターからテッサの顔が消える。
操縦席内を見回し、全機能が正常に動作していることを確認する。
『へぇ。Gunsの隊長さんだったんだ。そこんとこも、後でじっくり教えてもらうわよ』
『あぁぁ。マオ姐さんの質問攻めはつらいぜぇ。覚悟しておけよ』
『・・・牧。これは逃げられないからな。俺も通った道だ』
「了解。必ず生きて戻ります」
つまりはそう言うことだ。
みんた言いたいことはただ一つ。
死ぬな・・・と。
『トゥアハー・デ・ダナン急浮上開始。AS隊は発進準備を』
オペレーターからの指示が出る。
各種安全装置と機体を固定しているロックを解除する。
『ウルズ2発進』
『ウルズ6発進』
『ウルズ7発進』
マオたちが乗るM9と宗介の乗る見たことのない新型機が外に射出される。
「ウルズR発進」
言葉と同時に、すさまじいGがかかる。
一瞬にしてモニター越しの視界が、暗い格納庫から朝焼けの中綺麗な屋外となる。
「よし」
砂浜に着地し、機体を動かす。
軽く踏み込んだつもりだったが、脚部の動力が高出力を発生させる。
それにより、砂に足をとられその場に倒れこむ。
「なに!?」
バランサーが働き、自動で脚が動いたため、完全に倒れるのだけは防ぐことが出来た。
『それじゃあダメよ!もっと優しく丁寧に扱いなさい!!』
マオからの叱咤の無線が入る。
一度体勢を立て直しさらに慎重に踏み込む。
「・・・なるほど」
今度はバランスを崩すことなくゆっくりと歩き始める。
『そうそうその調子。ん?ウルズナンバー各機へ・・・熱源反応。敵のASが5機と戦車が10機ってとこね』
『ウルズ7了解』
『ウルズ6了解』
「ウルズR了解」
自分のモニターにも敵の位置を知らせるマーカーが点滅している。
先行している、マオと宗介が間合いに入った。
「・・・よし。コツはつかめてきたぞ」
出力を調整しながら、敵との間合いを詰める。
同時に、手に持ったショットガンを構える。
味方が射線軸に入らないように調整し、突き進む。
「見つけた!」
引き金を引くと、数十の鉄の塊が敵のAS目掛けて放射状に飛んでいく。
が、敵は基地に備え付けられた遮光壁を盾にしてかわしてしまう。
「タイミングが合わない。くそ・・・」
敵ASが逆に襲い掛かってくる。
敵はRk−92サベージ。
先日の一件で和輝を襲ってきたのと同じ機体だ。
サベージはM9から見れば旧式だが使いやすさという意味ではパイロットを選ばない。
それゆえに、M9の扱いになれていない和輝よりも高い反応をたたき出す。
「くそ!」
サベージがハンマーを持ち接近してきたので、ショットガンをその場に捨て肉弾戦に入る。
だが、まったくと言っていいほど和輝の攻撃は当たらない。
「ったく。これじゃあ推薦してくれたテッサに申し訳がたたないな」
高性能なだけに、乗り手を選ぶ機体。それがM9だ。
「・・・ふぅ・・・」
神経を集中させる。
ASを乗り物ととは思わずに自分の手足だと思え。AS乗りの彼の父親の言葉だ。
それが出来れば苦労はしないが、そう考えない限りは、ASはただの道具でしかない。
「・・・乗りこなすんじゃない。使うんじゃない・・・自分の手足なら自由に動かせるはずだ」
指先足先まで、神経をすり減らすかのように集中する。
とたんに、和輝のM9はまるで命を持ったかのように動き出す。
敵ASの攻撃をかわし、自らの攻撃を確実に当てていく。
「ひゅぅ。すげぇじゃんアイツ。ソースケと対はれるんじゃないか?」
『けど。エンジンがかかるのが遅すぎよ。ソースケが相手ならその前に終わってるわ』
「確かに」
クルツは無駄口を叩きながらも、基地の要所要所をライフルで破壊していく。
それこそ、針の穴を通すような正確さだ。
「っと。アンテナはこいつで最後っと」
基地から外に出された全アンテナがクルツによって破壊された。
「サベージが3機。こっちに来てくれれば他のヤツが生きて帰れる確立が高くなる」
宗介は淡々と敵との距離を詰めていく。
一見、直線的に動いてるように見えるが、無駄のない動きで、確実に相手の射線をはずしながら進む。
「・・・うかつだ」
痺れを切らして接近戦を挑んできた相手に、至近距離でのショットガンを食らわせる。
直撃を受けて、まず1機が沈黙した。
「後2機・・・3分で片をつける」
「そんな戦車程度でASに勝てるわけないじゃない」
マオはハンドガンで確実に戦車隊をつぶしていく。
装甲の薄い間接部分などに当たれば別だが、一介の戦車砲ごときではAS、特にM9の装甲を破るのは難しいだろう。
「さて。と。これでおしまい。もうみんな終わったようね」
『姐さん!!危ない』
マオのレーダに突然敵機の反応が起こる。
それも、自機の真後ろだ。どうやっても迎撃は出来ない。
「うそ!」
回避も間に合うかどうかギリギリと言ったところだ。
敵ASのナイフがM9に当たる寸前、そのASの肩が吹き飛ぶ。
「・・・え?」
『ウルズ2聞こえますか。ウルズ2』
通信は敵機からのものだ。
「その声、ウルズR?」
『ふぅ。間に合った。こいつ、かなり接近していないとレーダに映らない特殊装備をつけてたみたいで』
操縦席のハッチから和輝が顔を出す。
『俺の腕じゃ、見失う可能性もあったし、倒せないとやばいから確実な方法をとらせてもらいました』
確実な方法とは、生身で操縦席に乗り込んで操縦者を倒す。
その後、操縦席から腕を切り離したのだ。
ASには各所を細かく切り離せるようになっており、操縦席でそれを制御することができる。
「ふぅ。ありがとう。もう少しでM9を一機ダメにするところだったわ」
「どうでした?」
「幹部のほとんどは地下から潜水艦で逃げ出したようです」
マデューカスが報告書を読み上げる。
「・・・M9のレーダに映らないAS。デ・ダナンのソナーにもレーダーにも映らない潜水艦ですか」
「ただ、出現時にはレーダーに映っていたところを見ると、まだ未完成品かと」
テッサは報告を聞きながら自分の三つ編みされた髪の毛をいじる。
彼女の考えるときの癖だ。
「どこからか技術提供があったと見るべきですね」
「あとは、内部から持ち帰った資料・・・それにかけるしかありません」
「わかりました。ごくろうさまです」
「くぁぁ。すごかったぜぇ。いつのまにか敵のASの操縦席を乗っ取ってるんだもんな」
「ホント。よく、動いてるASの操縦席になんてあがれるね」
クルツとマオが祝杯をあげている。
もちろん、その場には和輝に宗介、光とかなめも一緒だ。
「俺は元々そっちが本業だから」
「だからってASの操縦技術も悪いわけじゃねぇし。ちょっとエンジンかかるの遅いけどな」
「けど、あの戦い方。3分も持たないからな・・・集中力が続かん」
ただし、お酒を飲んでるのは二人だけ。
残りはフレッシュジュースだ。
「いやいやさすがは元Gunsの部隊長さんだ。ソースケもうかうかしてらんないな」
「俺は別に。戦力が増えるのはありがたいことだ」
「・・・ぶぅ。活躍見たかったなぁ」
「さすがにそれは無理だって。危ないし」
和輝の活躍の見れなかった光がテーブルの上に突っ伏す。
さっきからずっとこの状態だ。
「あ、多分、デ・ダナンの監視カメラで撮ってるか見れるぞ。それぞれのASのカメラも録画されてるしな」
「ホント!?やったあ、見たい見たい」
ドアが開いてテッサが部屋の中に入ってくる。
「あ、テッサ。こっちこっち」
マオが手招きして椅子に座らせる。
「それじゃあみんなそろたっところで、新しいお仲間、牧和輝とそのガールフレンドの陽ノ下光ちゃんの歓迎を祝って」
『かんぱぁい!』
かなめ 「メモっふ・・・って・・・」
宗介 「前回の予告どおりだな」
テッサ 「あ、ちなみにですね。第2話を書いていた時点ではまだこの作品のタイトルが決まってなかったんです」
かなめ 「うわぁぁ!!もう!この作者は!!『フルメタル・メモリアル』じゃなかったの?」
宗介 「それについて説明文が来ているぞ。『フルメタルだけだと某錬金術作品の英語表記とかぶってわからなくなりそうだからパス』だそうだ」
かなめ 「適当ねぇ・・・あれ?そういえば光ちゃんと牧さんは?」
テッサ 「先ほどどこかへ行きましたが?」
かなめ 「あやしい・・・」
光 「ただいまぁ」
かなめ 「あ、どこに行ってたの?」
光 「ん?気にしないで気にしないで。あ、和輝くんはもう帰ったから」
宗介 「・・・座談会にも出ないでか?」
テッサ 「あらあら。せっかく、美味しい紅茶でもご一緒しようと思いましたのに」
光 「あんたのせいよ・・・・・・あ、紅茶なら私がご一緒しますよ」
かなめ 「なんか、一瞬顔が変わったような」
宗介 「そうだ。作者からもう一つ話を受けている」
かなめ 「へ?」
宗介 「4話で終わらないそうだ。ちなみに全何話になるかは未定とのこと」
テッサ 「嬉しいです。これで牧さんと光さんとまだ一緒にいれますのね」
光 「ふぅん・・・そう・・・・・・・・・・・」
かなめ 「どうしたの?」
光 「ううん。別になんでもないよ・・・なんでもね」
テッサ 「次回は牧さんと一緒にここでお話したいですね」
光 「・・・・・(メラメラ」