「それとも・・・リボルバーさん、とお呼びしましょうか?」
「・・・なるほど。さすが、世界最高峰の傭兵部隊ミスリルの艦隊長だな」
それを聞いた宗介。そして、テッサの後方にいる男の顔に緊張が走る。
テッサの後方にいる男は、アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニン。階級は少佐。
宗介の直接の上官であるこの男は、今はテッサの警護としてここに居る。
「・・・大佐殿。リボルバーとはもしや」
「えぇ。Gunsの部隊長に与えられたコールサインです」
再び宗介の顔に緊張が走り、和輝の顔を見る。
「俺は元Gunsだ。Gunsはもう・・・解散したんだからな」
話についていけない少女二人。
「・・・えっと。牧さんって実はすごい人?」
光が首を横に振る。
「和輝くん、去年、7年ぶりにひびきの市に戻ってきたばっかりだから。その前のことは私も聞いてないから」
「そっか」
和輝もテッサもあれから一言も言葉を発さない。
お互いに隙をうかがっているような、そんな感じもする。
「大佐。そろそろ本題を・・・」
カリーニンがテッサの耳元でそう言う。
「・・・いえ、せっかく来たのですし、特に用事もないので私はここに残ってゆっくり話をしてみたいと思っています」
「なんと!?いえ、それは・・・」
「大丈夫です。相良さんもかなめさんも居ますし。それに、彼らとはもう少し話をしてみたいので」
テッサは物言いはやわらかいのだが、一度決めると頑固で押しが強い部分がある。
特にこういったことに関しては、カリーニンがあの手この手を使おうと絶対に止めさせることは出来ない。
「相良軍曹!」
「はっ。何でありましょうか少佐殿」
「軍曹に大佐の護衛を命じる。期日は明日1900だ。」
「了解いたしました。明日1900まで大佐殿の護衛をいたします。サー!」
直立不動。敬礼の姿のまま宗介がそう言う。
「では、明日の日本時間1900にお迎えにあがります」
「はい。では、カリーニンさんもお気をつけて」
カリーニンがヘリに乗り込む。
そうして、5人が見つめる中、すでに陽の落ちた空の向こうへと消えていった。
「さぁ、今日は金曜日ですし。みなさんでお話しましょう」
『かんぱぁい!』
和輝と光がこちらにいる間に生活するホテルの部屋。
そこに和輝と光、それに宗介、かなめ、テッサと全員そろっている。。
誰が用意したのか、この部屋は一流ホテルのスィートだ。
おかげで、部屋も食べ物もすべて豪華なものだ。
「今日は、私たちと光ちゃんたちの出会いを祝福ってことで」
「はい。よろしくお願いします。陽ノ下さん」
「うん。こちらこそよろしくね。テッサさん。あ、私のことは光でいいからね」
和気藹々の女性陣。
一方、男性二人はというと。
「・・・Gunsの部隊長だったのか。ならば、あの動きにも納得だ」
「まぁ、あんなことをするのも久しぶりだけどな。それよりも、相良の判断力もさすがだな」
お互い干し肉をナイフで削りながら、口に運ぶ。
豪華な料理を前にしてなぜそんなものを。
「はいはぁい。ねぇ、和輝くん。Gunsってなに?というか、私全然わけがわかんないんだけど」
光が和輝の横に擦り寄ってくる。
「それじゃあ、まずは俺のことから話すか。Gunsってのはな」
Guns。
the Ground Unchain Natural forceSの略。
日本語に直訳すれば、自然開放陸上軍とでも言うのだろうか。
正式な各国の軍隊には所属していない傭兵軍だ。
自然開放と言っているが、あくまで目的は戦争の早期終結を意味している。
「傭兵って戦争でお金もらって戦うあの?」
「あぁ。ミスリルみたいにある統一の意思決定によって動く傭兵もいるけど、俺たちの方針は戦いの早期終結と金だった」
和輝の両親は、当時のGunsの極東支部のメンバーだったのだ。
そして、今から8年前。両親がヨーロッパに転属になった際に彼も共にひびきの市を出ることとなった。
両親と共にヨーロッパにいった和輝はGunsのメンバーになるための訓練をつむこととなった。
「特に俺は特殊工作と肉弾戦の訓練をつまされた。それこそ、血を吐くような訓練だった」
「・・・なんか、宗介に似てるね」
「あぁ。違うのは、俺は物心ついたときから戦場にいたというだけだ」
光をはじめ、かなめも宗介もテッサも、和輝の話を真剣に聞いている。
「3年前。幹部の数人が死んだ。負けた国の戦争に協力してたからな・・・それでGunsは解散し、俺はひびきの市に戻ってこれた」
「でも、テレビで戦争とかの話なんて見たこと無いよ?」
「それはひびきの市とその周辺が、特殊な地区だからさ。だから、俺もさっきみたいに襲われずにすんでいたんだ」
逆に言えば、そこを出れば和輝は昔、Gunsと敵対していた組織に狙われてしまうということだ。
それもあって、強引な方法でひびきの市へと戻ってきたのだが。
「Gunsの部隊長クラスで生きてるのは俺と俺の両親を含めても、10人もいないだろうな」
「なるほど。そういえばGunsに恨みをもつ連中は世界中にいると聞いたことがある」
その後も、ミスリルの話や宗介とかなめの話を語り合った。
生まれてずっと、軍事保護特別地区からでたことのない光には驚きの連続だった。
「あ・・・で、でも。そんな話を私が聞いてもよかったの?」
「確かに。Gunsはもう解散した上になんの力もないからいいが、ミスリルはその身分を明かすのはまずいんじゃないのか?」
それには宗介もかなめも不思議な顔になる。
テッサが一般人の前に顔を、それも自分の本名と所属に階級まで明かすことはタブーなはずだ。
「それは、これからお話することを聞けばわかると思います」
テッサの表情が女の子から軍人へと変わる。
「牧さんと光さんは、今の相良さんとかなめさんの境遇と同じ可能性があるのです」
「え?」
「光さん。ウィスパードと呼ばれる存在は先ほどお話した通りです」
「うん。かなめさんとテッサさんもそうなんだよね」
テッサがうなずく。
「そして、あなたもその一人・・・なのです」
その場にいたテッサを除く全員が動きを止める。
ウィスパードと呼ばれる存在の重要さ、そして恐ろしさを先ほど聞いたばかりだ。
自分がそれだと言われても、光には納得することが出来ない。
「で、でも、そんなの私・・・」
「気づかないのも無理はありません。ウィスパードの能力は肉体的または精神的に弱ったときに発動しやすいのですから」
今まで特別地区で平和に暮らしていた光にその力が確認されなかったのも無理は無い。
「今回は私たちミスリルが先に気づくことができました。もし、非人道的な組織が先に気づいていたら」
「確かに。そういうことであれば、大佐殿がこられた意味がわかりました」
「ちょ、ちょっと待ってよ!本当に?本当に私も、そのウィスパード・・・とか言うものなの?」
光がテーブルに見を乗り出してテッサに詰め寄る。
「はい。光さん・・・手を貸してください・・・そして、目を瞑って肩の力を抜いて」
テッサが光の手を取る。
すると、光の頭のなかに不思議な空間が浮かび上がる。あたかも自分がそこにいるかのような感覚にまで陥ってしまう。
そして、その不思議な空間の光のすぐ目の前には・・・なにも身につけていない生まれれたままの姿のテッサが見える。
「光さん・・・これがウィスパード同士の共鳴です。光さんはまだ覚醒していないので、接触することでしか発生はしませんが」
光が目を開けると、そこは先ほどと同じ部屋。
和輝が心配そうに顔を覗き込んでいる。
「あ・・・」
「わかっていただけましたか?」
そして、テーブルをはさんで向こう側には、先ほどと変わらぬ服装のテッサが。
「・・・うん」
「では、次の話を・・・牧さん。ミスリルに所属していただけないでしょうか?」
「なに?」
「光さんの護衛としてです」
その話を聞いた瞬間、和輝の答えは出ていた。
NOだ
金輪際軍隊とかかわらないと、両親とも誓ったのだから。
光を守るだけなら軍に入らずとも可能だ。
「あ、もし、牧さんがミスリルへ所属していただけないのであれば、誰か別な方を派遣しなくてはなりませんね。光さんの護衛のために」
「ぐっ・・・」
その一言で結論を変えざるを得なかった。
もし、拒否してしまえば、光と一緒にいることの出来る時間がほとんどなくなるからだ。
「そんなことを言われて・・・拒否できるわけがないだろ」
「よかった。では、色々と手続きがありますので、明日、私と一緒に来てください」
テッサの顔が無邪気な少女の顔に変わる。
と、同時にシリアスムードが終わり、張り詰めていた空気が一気に抜けたように軽くなる。
「私からのお話はこれでおしまいです。では、また親睦を深めるためのお話でもしましょう」
今度は和輝と宗介も含めて楽しそうに話し出す。
と言っても、数分に一度は、かなめのハリセンの音が響くようになったのだが。
「ねぇ。光ちゃん・・・寝ちゃった?」
「ううん。あんな話聞かされて、今日は眠れそうにないよ」
「そっか」
ベッドの中でヒソヒソ声で話す二人。
ベッドルームのベッドはかなりの大きさのため、女の子3人が使うことになったのだ。
「テッサさんは?」
「ダメ。もう、熟睡よ」
先ほど景気付けにと、かなめがワインを開けたのがまずかった。
テッサは、たった一口飲んだだけで、ろれつが回らなくなり、宗介や和輝に抱きつき。
挙句の果てには、彼らの目の前で服まで脱ぎだしたのだ。
さすがにまずいと思ったかなめたちが先にベッドに寝かせた。
「まさか、テッサがあんなにお酒に弱いなんて思わなかったわ」
「ふふ。弱点見つけたり、ね」
「テッサの?テッサって弱点だらけよ。なにも無いところでつまずいたり転んだり。運動神経は0というよりマイナスだもの」
「へぇ・・・そうなんだ」
天はテッサに知能と美貌を与えた。
が、その利点で補えないほどの欠点も同時に与えていたのだ。
「ねぇねぇ。光ちゃんは牧さんとどんな感じなの?恋人?さっきも護衛になるの簡単に引き受けちゃうし」
「え?私たちは・・・そんな・・・ただの、幼馴染・・・だもん」
「またまたぁ。告白してないならしちゃいなよ。絶対にOKだって」
「うぅ・・・そういうかなめさんは?相良さんとどうなんですか?」
「うっ。そ、それは」
などと、まるで修学旅行中の学生のような話をする二人。
『あれは貴様だったのか!!』
急にリビングの方から宗介の怒鳴り声が聞こえる。
突然のことに顔を見合わせる二人。
「・・・ふにゃ・・・なん・・・ですか?」
テッサが上半身だけを起こして首をかしげる。
その仕草がかなめと光のツボにはまってしまった。
「かわぃぃぃ!」
「うんうん」
二人がテッサを抱きしめる。
「にゃ、にゃんですかぁぁ」
二人がテッサを抱きしめたままベッドにもぐりこんだとき、けたたましい電子音が、部屋の中に響き始めた。
「しかし、13でGunsの部隊長とは」
「あぁ。ま、いろんな偶然が重なって俺になっただけさ」
男二人は、ランタンを部屋の中におき、その光の中で話をしていた。
こうすることによって、戦場での気分が味わえるのだとか。
「過去にはどんな作戦を行ったんだ?」
「たったの一個小隊で大隊をやぶらないといけないこともあったし、今日みたいにASに何度も素手で立ち向かったさ」
「それで生き残っているとは、やはりツワモノだな」
宗介が戦場気分を味わうために持ってきたレーションを口に含む。
「運がよかったのさ」
和輝は相変わらず、干し肉を口にしているようだ。
「そういや、何機ものアームスレイブを堕としてきたが、もう絶対にやりあいたくない相手もいたな」
「ほう。貴様にそう言わせるとは」
「ある戦場で捕虜にしたヤツなんだが、バランサーのいかれたASを奪って脱走したんだ」
和輝が目を瞑ってそのときの光景を思い出す。
「その追撃命令が俺に下された。相手は壊れたAS一機。俺一人の仕事だった」
「・・・ん?」
「だがな、そいつは手動でバランサーを操作しながら逃げたんだ。追撃した俺をあしらうさまも見事なものだった」
懐かしむように思い出す和輝とは正反対に、宗介の眉がゆがむ。
「まったく無駄のない動きで俺の攻撃をことごとく回避していった。俺が出来たのはかろうじてASの動きをとめることだけだった」
「それは、まさか」
「結局、捕虜には逃げられた。聞いた話だと俺と同じ年くらいだとか。それであの操縦技術だ。末恐ろしいよ」
「・・・その捕虜の名前は?」
「ん?まぁ、本名じゃないだろうけどな。たしかカシムだったかな」
「あれは貴様だったのか!!」
珍しく宗介が怒鳴り声を上げる。
目の前にいた和輝は、あまりのことに耳を抑えてしまった。
「おかげで脱走から合流までの時間がかかりすぎて、こっちは撤退を余儀なくされたんだ」
「・・・あのAS乗り、相良だったのか。ま、昔の話だ。こっちもお前を逃がしたから作戦の続行ができなかったんだからな」
もしどっちかが相手に攻め入っていたら、この場で顔を会わすこともなく人生を終わらせていたかも知れない。
「世間は狭いな」
「まったくだ。だが、あれが貴様なら味方としては心強い」
「こっちもだ。よろしく頼む」
「あぁ」
硬い握手。男の友情が深まる瞬間だった。
「!」
突然、宗介のポケットの中で電子音がなる。
音楽ではなく甲高い警戒音のような音。
「相良さん!」
ベッドルームから寝巻き姿のテッサが現れる。
その後ろには光とかなめの姿もある。
「大佐殿トゥアハー・デ・ダナンからの緊急信号です。衛星回線をつなぎますのでパスワードを」
「えぇ」
「・・・和輝くん」
「嫌な予感がする・・・」
和輝 「はぁ・・・テッサたん・・・」
光 「!?」
かなめ 「ん〜、彼女もちの男を骨抜きにするとは。恐るべしテレサ・テスタロッサ」
テッサ 「嫌ですわ、かなめさん。骨抜きなんて・・・あ、牧さん。お紅茶がはいりましたよ」
和輝 「はぁいw」
かなめ 「だめだ・・・腑抜けてる」
光 「ぶぅ・・・和輝くんのいじわる」
かなめ 「ちょっと、宗介。あんたもなにか言いなさないよ。座談会なんだから無口は損よ」
宗介 「・・・・・・」
かなめ 「そう来たか」
宗介 「・・・むぅ・・・話すことは特にない」
光 「でも、なんか展開遅いよね。4話で終わるのかな?」
かなめ 「4話なの?」
光 「うん。前に作者さんが話してた話だと・・・そのはずだけど」
かなめ 「そっかぁ・・・寂しくなるなぁ」
光 「うん。せっかく知り合えたのにね」
テッサ 「あん。牧さん、そんなとこ舐めたらダメですよ」
光 「和輝くん!!いいかげんにしなさい!!」
和輝 「テッサたん・・・・・・」
光 「・・・和輝くん・・・ちょっと」
かなめ 「あらら、連れていかれちゃった。あんたもあんな風にならないようにね」
宗介 「心しておく」
テッサ 「さぁて、次回のフルメタルパニック〜メモっふ〜は」
かなめ 「勝手に次回予告してるし。それに何よその、意味のありそうでないサブタイトルは」
テッサ 「相良さんと牧さんの二人が私を賭けて決闘!?ダメよ・・・」
かなめ 「おぉい・・・この座談会のテッサって絶対にどっかおかしいわよね」
テッサ 「私は・・・どっちかなんて選べません・・・そんなの悲しすぎます・・・」
宗介 「『君の心にハートブレイク』・・・俺は必ず勝つ」
かなめ 「アンタもそんなウソ予告に付き合うなぁぁ!!」