「千鳥かなめくん。相良宗介くん。よく来てくれたね」
「はっ。会長閣下のお呼びとあらば」
都立陣代高校生徒会室。
その部屋にいるのは2人の男子生徒と1人の女子生徒。
部屋の奥に座っている男子生徒。本学校の生徒会長、林水敦信。
彼を前に並んで立っているのが、生徒会副会長の千鳥かなめと安全補償問題担当生徒会長補佐官の相良宗介。
「今日は何の用事ですか?会長。私、今日は見たいテレビが」
「すまないがそれはキャンセルしてもらおう。君たちは、ひびきの高校という学校を知っているかね?」
「えっと。確か、ウチの姉妹校ですよね?」
かなめがそう答える。
世間一般にうとい宗介には学校の姉妹校など到底わかるはずが無いためだ。
「そうだ。実は、そのひびきの高校の生徒と陣代高校の生徒を2人、交換留学することになった」
「留学?」
「まぁ、同じ日本なので内地留学といったところだな。それに期間も1週間だ。まぁ、交友的なものだ」
林水が淡々と話す。
しかし、そんな話は宗助もかなめも初耳だ。
「はぁ。で、それが何か?」
「まさか、交換留学とは名ばかりで、実はどこかの要人では」
「いや。普通の高校生だ。まぁ、問題はあるのだがね」
「問題ですか?いやですよ。宗介みたいなのが増えるのは。私は宗介の面倒だけで精一杯ですからね」
「人格には問題のない二人だ。問題は彼らの住まわれているひびきの市の環境にある」
なんのことかわからず、宗介とかなめが顔を見合わせる。
林水が立ち上がり、二人に背を向ける。
「君たちは、軍事保護特別地区というのを聞いたことはあるかね?」
「・・・さぁ・・・」
今度ばかりは博識なかなめも聞いたことは無いようだ。
「それは発足されたばかりの非武装非戦闘地区のモデルケースのことでしょうか?」
「そうだ」
軍事関係には強い宗介が答える。
ただ、彼の顔から察するに、完全に理解しているわけではないようだが。
「軍事保護特別地区とは、一切の軍事行動及び軍事情報を流してはいけない地区だ。ひびきの市はその中にはいっている」
「え?」
「つまりはアームスレイブをはじめとする、我々ですら知っている一般的な軍事情報も彼らは知らないというわけだ」
アームスレイブ。
全高8m前後の人型を模した攻撃用兵器。
現在は専用の雑誌が一般に出回るほど、誰でも知っているポピュラーな兵器だ。
かくいうこの相良宗介も、ある秘密組織の兵士。アームスレイブの操縦は世界レベルだったりもする。
「・・・えっと。それは、何かあったときに守れということですか?」
「出来れば・・・彼らにはそういったことを一切秘密にしたい」
「無理ですって!!普通にニュースや雑誌に載ってるんですよ?そんなのどう隠し通すんですか」
かなめが机をバシバシと叩く。
相変わらず林水の顔色は変わらない。沈着冷静が売りの生徒会長。
「なるほど。そのために自分が呼ばれたのですね」
「は?」
「機密に近づくのを阻止するために。強攻策も辞さない覚悟であると」
「ちょ、ちょっと宗介!なにするつもりよ」
「問題ない。損傷を与えずに気絶させる方法は心得ている」
一瞬林水が顔を動かしメガネが光る。
本当にそのために呼んだのだろうか。
「ふむ。説明の手間が省けてなによりだ」
そのために呼んだらしい・・・この生徒会長にしてこの生徒ありといったとことか。
もっとも、二人ともこの性格は出会う前からのものなのだが。
「わかりました。私が注意してみていますから・・・宗介も出来るだけ穏便によ」
「・・・む。通学帰宅中は眠らせておくのが確実なのだが」
「却下・・・それで、その二人はいつくるんですか?」
林水が一枚の紙をかなめに渡す。
そこには、交換生の名前や成績、そして、こちらに来る期日などが載っていた。
「・・・って!あと20分ないじゃないですか!!」
「駅までなら走れば10分で着く。では会長閣下、失礼します」
宗介がドアを開けて廊下に飛び出す。
「あ、ちょ、宗介、待ちなさいって!!宗介!!」
かなめも後を追って廊下に飛び出していった。
「・・・たのむぞ。二人とも」
「遅いぞ、千鳥」
先に駅に着いていた宗介がかなめを叱咤する。
「はぁはぁはぁはぁ。まったく、そこまで、いそぐこと、無いじゃない」
「しかし、彼らが早く着く可能性も無いわけでもない」
息の上がっているかなめに対して、宗介はまったく乱れていない。
宗介は、かなりの距離を全力疾走してきたはずなのだが。
「あれ・・・珍しく正論を」
「その場合、テロリストに狙われる危険性がある。幸いにもこの付近に彼らを狙ったテロリストはいないようだが、念のため、各所に武器を配備しておいた」
「前言撤回・・・どうして、たかが高校生をテロリストが狙うのよ!!武器を全部回収してきなさい!」
宗介が眉をひそめる。
「しかし」
「しかしも案山子も無い!!さっさと片付ける」
しぶしぶではあるが宗介が武器を隠した場所へと消えていく。
かなめが駅の時計を見ると、約束の時間まで後1分。
ちょうどその時、一台の列車がホームに滑り込む。
「あの列車に乗ってるのかな」
ドアが開き、学生やサラリーマンが一気に降りてくる。
まるで波のようなものだ。
「えっと・・・あ、あの二人かな」
見慣れないセーラ服を来た女子高生と隣の詰襟学生服の男子学生。
ふたりは改札を出てキョロキョロと何かを探しているようだ。
その二人にかなめが近づく。
「あの。ひょっとしてひびきの高校の」
「あ、君が陣代高校の迎えの人ですか?」
男子学生の方がかなめにそう聞く。
「えぇ。陣代高校2年の千鳥かなめです。生徒会副会長を務めてます」
「俺はひびきの高校2年、牧和輝。んで、こっちが陽ノ下光」
「はじめまして」
お互い軽く自己紹介を済ませる。
「本当はもう一人、相良宗介ってのがいるんだけど。ちょっとはずしてるの。戻ってきたら紹介するわ」
とりあえずかなめはあたりを見回す。
しかし、どこにも宗介の姿は見当たらない。
「ったく、どこまで行ってるのかしら」
和輝と光はどうしていいかわからずに、かなめの方を見ている。
「じゃあ、とりあえず陽ノ下さんたちが泊まるホテルにでも行きましょうか。教科書の類もそこに届いてるはずですし」
「はい」
「・・・あぁ・・・あれ?・・・」
「??どうかしました?」
和輝がしきりに自分の後方を気にするそぶりを見せている。
首筋を手で抑えたり、後ろを向いたり。
「視線が・・・・あ、いや。なんでもないよ」
「そう。じゃあ、行きましょう。すぐですから」
ビジネスホテルに向かって歩き出す3人。
それを確認するかの彼女たちの後ろから鋭い眼光が光る。
「へぇ、光ちゃんって陸上部なんだ。じゃぁじゃぁ、脚は速いの?」
「うぅん・・・一般の人よりは速いかな」
出会ってまだ5分。光とかなめはすでに打ち解けあっていた。
周りから見ても、今日知り合ったばかりには到底見えない。
「それにしても、宗介のやつ一体どこ行ったのかしら」
かなめがそうぼやいた時だった。
突然、耳がおかしくなるほどの爆発音。
かなめたちの前に停めてあったバスが爆発を起こしたのだ。
「なに!?なんなの!?・・・・まさか、ソースケ!!!」
「え・・・っと」
辺りを見回し宗介を探すかなめと、あまりの光景に呆然とする光。
「なにぼうっとしてるんだよ」
和輝が光の腕をつかみ爆発元から離す。
幸いにもバスには誰も乗っておらず、爆発もその周りには被害をもたらすようなものではなかった。
ただし、二次爆発の恐れはまだ十分にある。
「千鳥。大丈夫か?」
野次馬の人垣を掻き分けて宗介がかなめたちの前に姿をあらわす。
「大丈夫かじゃないわよ!これ、どういうこと?」
「わからん。誰かを狙ったものなのか、ただの愉快犯なのか」
「アンタじゃないのね?」
「俺にはバスを爆破する理由は無い。それに俺がトラップを仕掛けたのはバスではなく、あの時計台だ」
言った瞬間、かなめは宗介の首を締める。
「いい!そんなもの片付けなさい!!」
「・・・う、うむ。わかった」
そんな二人のやり取りを少し離れたところから見ている和輝たち。
非日常的すぎる光景にあっけにとられている。
「あ、えっと・・・これは・・・その」
ちどりが言い訳を考え始めると、とっさに宗介がその前に出る。
「二人のうちのどちらかが狙われた可能性がある。心当たりはないか?」
「無いに決まってるでしょうが!!あんたは・・・この二人は普通の高校生なのよ?」
かなめがどこから取り出したのか、巨大なハリセンで宗介の頭を叩く。
小気味よい音が響き渡る。
「む!」
「光!」
宗介がかなめを和輝が光を抱えて、急にその場から飛びのく。
直後、彼らが立っていた場所に一台の大型トレーラーが飛び込み、そのまま近くの建物に突っ込む。
あのままあの場所にいたら間違いなく命はなかっただろう。
「か、和輝くん?」
光が和輝の腕の中からその顔を見上げる。
「舌を噛むから黙ってろ」
和輝は光を抱えたまま、トレーラーとは逆の方向へと走る。
周りにはいつのまにか、野次馬の姿は無い。
トレーラーの発進音が聞こえないところを見ると、その場に停止しているらしい。
「光。ここに居てくれ」
和輝は光をさきほどの場所から離れた場所へとおろす。
「和輝くんは?」
「俺は千鳥さんを助ける。絶対にここに居るんだ。他の場所には行くなよ!」
和輝はきびすを返し、今度はトレーラーに向かって走り出す。
「あ・・・・・・和輝くん・・・」
和輝が戻ってくると、トレーラーの荷台が開き始める。
そこには巨大な人型の何かが横たわっている。
「バカが!なぜ戻ってきた!!」
宗介が和輝を見つけ叱咤する。
かなめの姿が見えないところを見ると、同じように宗介もかなめを避難させたのだろう。
「こいつが、俺を狙ってるからだ」
「なに?」
和輝と宗介が合流を果たす。
トレーラーの上の人型。アームスレイブはすでに立ち上がりその目にはモノアイが光り始める。
「Rk−92・・・サベージ」
「なぜその名を知っている」
「お前と同業者だからさ・・・元、だけどな」
それだけを言うと和輝はアームスレイブの足元に向かって走り出す。
「援護を頼むぞ」
「・・・む・・・・・・・了解した!目をつぶれ!!」
一瞬、逡巡した宗介だったが、すぐに側に置いてあったカバンの中から、スプレー缶のようなものを取り出す。
その頭についたピンを引き抜き、アームスレイブの顔面目掛けて投げつける。
それが顔にぶつかった瞬間、すさまじい閃光が辺りを包み込む。
スタングレネード。閃光を撒き散らす手榴弾だ。
特に、宗介が投げたそれは、彼が所属する部隊の特別製で、アームスレイブのカメラを短時間使用不可にするためのものだ。
「いまだ!!」
サベージのような旧式アームスレイブであれば、カメラの明度が再調整されるまで約3秒。
その間、中の操縦者は外の様子がわからないはずだ。
和輝は器用にアームスレイブの脚を登っていく。
まるで何度も何度も同じことをしてきたかのように、はしごも何も無い状態で登る。
「よっと」
サベージの操縦席のハッチ。そのすぐ横には手動用の開閉レバーがある。
それを回し、ハッチを開ける。
「俺の勝ちだ」
操縦者が驚きの顔で後ろを振り向く。
とっさに銃を構えようとするが遅い。
その顔面に和輝の拳がヒットする。
アームスレイブの操縦者は普通、顔面が開いたヘッドセットをつける。この男も同じだった。
剥き出しの顔面に一撃を食らった男は、白目を向いてその場に崩れる。
「ふぅ。外に出たとたんにこれかよ」
「和輝くん!!」
光を迎えに行くと、急に抱きついてきた。
「怖かったんだから・・・それに、和輝くんが死んじゃうんじゃないかって・・・」
「ごめんな・・・」
和輝が光の頭を撫で、振るえた肩に手を置く。
「牧。俺の上官がお前に会いたいそうだ」
光を引き離し、宗介の元へと歩いて行く。
これも宗介の所属する組織の力なのだろうか。和輝と光、宗介とかなめ以外、辺りには人は誰も居ない。
「で、どこで会うんだ?」
「ここでだ・・・もうすぐ現れる」
宗介が顔を上げ、夕日に染まる空を見上げる。
その視線の先に、一機の軍用ヘリが姿をあらわす。
「・・・ひょっとしてテッサ?」
「うむ。大佐殿が直々に会われるらしい」
ヘリは駅前の広いロータリーの中心に降り立つ。
エンジンの停止後、ドアが開き、一人の少女が中から出てくる。
テレサ・テスタロッサ。通称テッサ。
階級は大佐。宗介の所属する特殊部隊<ミスリル>の西太平洋戦隊戦隊長。
「お待ちしておりました。サー」
宗介が彼女に向かって敬礼をする。
テッサはまだ幼さの残る容姿。そしてそれに似つかない軍服と階級章。
「はじめまして・・・牧和輝さん」
愛らしい顔から紡ぎだされる声もまた、愛らしいものだった。
「それとも・・・リボルバーさん、とお呼びしましょうか?」
和輝 「ついに始まりました新シリーズ!」
光 「しかも、和輝くんと二人っきり。嬉しいなぁ」
かなめ 「ちょいちょい。誰かを忘れてませんかぁ?」
光 「あ、かなめさん。こんにちは」
かなめ 「言っておくけど、私の目の黒いうちは不順異性交遊なんてさせないわよ!」
光 「えぇぇ。つまんないぃ」
和輝 「しようとしてたのか・・・お前」
かなめ 「あれ。宗介は?」
光 「そういえば。さっきまで居たのに」
テッサ 「はい。相良さん。あぁん」
宗介 「あ〜む・・・んむんむんむ。美味であります。大佐殿」
テッサ 「あらあら、お口の周りにシロップがついちゃいましたね。いま、舐めてとってあげますね」
かなめ 「こぉらぁぁ!!何をしてるの何を。しかも、原作よりも全然積極的だし!」
光 「原作?」
かなめ 「こっちの話。はぁはぁ・・・全然座談会が進まないじゃない」
和輝 「・・・あ、そういえば俺が司会進行か」
かなめ 「お前かぁぁ!!」
和輝 「ぐふぅ・・・・な、ナイスハリセン・・・・がく」
光 「そういえば、今回は作者さん出ないんだね」
かなめ 「極力出ないみたいよ」
テッサ 「あらあら。もう行数がなくなりましたね。それではみなさん。次回もよろしくお願いします」
かなめ 「全然、説明できてない!!」