「・・・姉さん。話っていうのは?」
「わかってるんじゃない?」
 ボクは今、伊集院大橋の下にいる。
 ボクと対峙しているのは一人の女性。
「・・・牧和輝のこと・・・ね」
 うなずく。
 和輝くんは四天王のうち、3人を倒してしまった。
 そうなったら、絶対に近いうちに4人目が彼の前に顔を出すはずだ。
「少年はもう止まることは出来ないのよ」
「わかってる・・・けど、和輝くんは!・・・和輝くんは優しいから」
 和輝くんの性格からいって、女性と戦うのは無理だと思う。
 だから・・・だからボクが和輝くんの代わりに。
「無理はしないほうがいいわよ」
「ボクは・・・ボクはお兄ちゃんの妹だ!」
 確かに格闘技の経験は無いけど、腕力とかには結構自信はある。
「説得は無理・・・か」
「お兄ちゃんの妹だからって、手加減は無しだよ」
 バイト番長。
 お兄ちゃんの舎弟で唯一の女性。
 いろんなことを知ってて、僕も色々教えてもらったっけ。
「それじゃあ・・・いきますよ」
 ボクは和輝くんの見様見真似で構えをとる。
 バイト番長の実力は、実は何もしらない。
 けど、お兄ちゃんが認めてるだけはあるんだから、そこいらの不良よりは強いはず。
「奥義・・・三十六計逃げるが勝ち!」
「へ?」
 あ・・・あれ?逃げちゃった?
 えっと・・・・・・・・・・・・・・・
 はっ!ボクが少し呆けている間に、もう姿が見えないよ。
「これって、ボクの勝ちになるのかな?」
 これでバイト番長が和輝くんと決闘する必要がないんだったら、それでいいんだけど。
 でも、どうして逃げたんだろ。
 まさか弱い・・・なんてことはないよね。
 やっぱりボクがお兄ちゃんの妹だからなのなかぁ。
「時間もいっぱい余っちゃったし、買い物して帰ろうっと」
「おっと。どこ行くんだい」
「え?」
 ボクは肩を捕まれて振り向く。
 そこには見たことない男の人。
 ボクが振り向くのを確認して懐からナイフを取り出した。
 誰だろう。不良っぽいけど、お兄ちゃんの舎弟にはいないよね。
「一文字茜ちゃんだろ?」
「そ、そうだけど」
 う、なんかやばいかも。
 一人かと思ったら男の後ろに何人か別の男もいるし。
「ぼ、ボクはもう帰るんだ。そこをどいてよ」
「けっけっけ。そういうわけにはいかないんだよ。アンタの兄貴に用事があるんでね」
 うわぁ。
 ナイフを舐めまわしてるよ。汚いなぁ。
 それにお兄ちゃんに用事って。
「ヤだからね」
「なにがだい?」
「どうせ、人質に使おうとか思ってるんでしょ。アナタたちみたいな人のいいなりになんてなるもんか」
 ボクは男の股間を蹴り上げると、土手の上に走り出した。
 家は近くだし間に合うはず。
「てめぇ!!お前ら捕まえろ!!」
「追いつけるもんなら追いついて・・・え!?」
 土手をあがりきったボクの前に、男の人が現れる。
 学生服姿の男の。
「ごめんね」
 お腹に鈍い痛みが走る。
 ダメ・・・いしき・・・が・・・


「んっ・・・」
「気がついた?」
 目の前には見たこと無い男の人。
 あ・・・ううん。さっき、ボクの前に急に現れた人だ。
「動かないほうがいいよ。危ないから」
「え・・・!?」
 ボクが座っている椅子の周りには有刺鉄線が張られていた。
 逃げれないようにするにしても、これはちょっと。
「でも、キミのためでもあるんだ。こうでもしないと、あいつらがキミに襲い掛かりそうだったから」
「うっ」
 そ、そっか。
 この男の人がボクを守ってくれたのかな?
 でも、記憶の最後に残るあのお腹の痛みは。
「ねぇ。キミたちは誰なの?」
「キミのお兄さんに復讐を誓う人たちの集まりさ」
 やっぱり。
 お兄ちゃん、いろんな場所で喧嘩してくるから恨みもいっぱい買うんだよねぇ。
「キミも?」
「・・・ううん。さっきキミに蹴られたの僕の友達なんだ。それでついてきただけ・・・」
「あ、ご、ごめん」
 謝るのもへんかもしれないけど。
 でも、この人はあまり悪い人には見えないし。
「それに、もう一度キミに会いたくて・・・一文字・・・茜さん」
「え?」
 この男の人、ボクのこと知ってるのかな?
 でも学生服についてる校章は見たことないし。
 誰・・・だろう。
「覚えてるわけないよね。もう、8年以上も昔の話しだし」
「・・・8年以上って」
「僕がこの街に住む叔父さんのところに遊びに来たときの話。公園や空き地で一緒に遊んだ女の子がいるんだよ」
 ウソ・・・
 だって、それは和輝くんが。
「ひょっとして、覚えててくれてる?」
「え?あ・・・うん。でも」
「うれしいなぁ。茜ちゃんも覚えててくれたなんて。あの時は急に帰ることになってキミに何も言えずに帰っちゃって」
 忘れるわけ無いよ。
 だって、初恋の想い出だから・・・それに和輝くんとの。
「おい!数馬。見張り変われ」
「わかった・・・あ!彼女に手を出さないでよ」
「わぁってるよ。ったく」
「じゃあ、また後でね」
 ・・・ねぇ。和輝くん。
 どういうことなの?
 教えてよ・・・ねぇ・・・和輝・・・くん・・・

 
 

 戻る