「あけましておめでとう」
「うむ」
 今、ボクとお兄ちゃんの前には、お兄ちゃんの舎弟がいっぱい。
 お正月はみんな集まるのがしきたりなんだよねぇ。
 あ、ちなみにボクらの両親は、海外に行ったっきり・・・えっと、何年帰ってないんだっけってくらい帰ってこない。
 向こうで仕事はじめちゃったらしくて。
「姉さんの料理さいこーっす」
「お、おで・・・おかわり」
 はぁ。せっかく今日は和輝くんと一緒にお出かけしたかったのに。
 この様子じゃ例年どおり時間無さそう。
 残念だなぁ。
「姉さん・・・今日、なんか機嫌悪くないっすか?」
「そんなことないよ。ボクはいつもどおりだよ」
「目が、笑ってないっす・・・」
 そんなこんなで、結局もう夜。
 あぁ、せっかく昨日の夜に和輝くん、誘ってくれたのに。
 ・・・こんな時間に電話してもしょうがないよね。
「姉さん」
「あ、バイト番長。どうしたの?」
「外に姉さんの待ち人が来てますよ」
 え?
 ひょっとして。
「はぁはぁ。和輝くん」
 家の門の前に和輝くんが立ってる。
 でも、どうして?
「あ、茜。あけましておめでとう」
「あ。うん。おめでとう。今年もよろしくね」
 うわぁ。和輝くんだよ。
 今日はもう会えないと思ってたのに。
「どうしても会いたくなって。会えるかどうか心配だったんだけど」
「ボクも。会いたかったよ・・・少し時間ある?」
 そう聞かれて、ボクは首を縦に振った。
 こういうとき、親がいないと便利かも。
「じゃあ、ちょっと散歩しようよ」
「うん」
 ・・・・・・
「ん?どうしたの?」
「へっ?あ、あぁ・・・ううんなんでもない」
 ふぅ。まさか見惚れてたなんて言えないよね。
 でも、こうやって改めて見ると、和輝くんって・・・かっこいいなぁ。
 背は高いし、細いけど筋肉はあるし。顔だって。
 それに比べてボクは
「どした?さっきからなんか変だぞ?」
「え?そうかな。フツーだよ」
「そか・・・それにしても。晴れ着似合ってるな。綺麗だよ」
「ありがとう」
 やったぁ。脱がなくてよかったぁ。
 それに綺麗だよだって。うれしいなぁ。
「和輝くんは和服着ないの?」
「羽織と袴か?家にはそんなの無いからなぁ。着たことも無いし」
「似合うと思うんだけどな」
「そか?んじゃ、レンタルでもしてそのまま初詣でも行くか」
「うん。約束だよ」
 和輝くんと初詣かぁ。
 楽しみだなぁ。何をお願いしようかな。
 学業はいまさらだし、家内安全かな・・・それとも・・・恋愛成就?
 うぅ。迷っちゃうなぁ。
「姉さぁぁん!!」
 あれ。向こうから走ってくるのって、たしかお兄ちゃんの。
「姉さん。番長は家にいますか?」
「うん。多分いるけど・・・どうしたの?そんなに血相かえて」
「山向こうの町のやつらがバイクでやってきて、神社付近を荒らしまわってるんですよ」
 えぇぇぇ!?
 山向こうの不良?会ったこと無いけど、こっちに来るなんて・・・
「じゃあ、俺は番長に知らせに行くので」
 ん〜・・お兄ちゃんのことだから絶対に喧嘩になるよね。
 あぁ、心配だなぁ。
「行っていいよ」
「え?」
「心配なんだろ?お兄さんのこと」
 あ・・・ばれちゃった。
 でも・・・。
「いいって。神社には近づかないし、俺ももう帰って寝るからさ」
「うん・・・ごめんね」


「はぁはぁ。お兄ちゃんは?」
「あ、姉さん。たった今出て行きましたけど」
 遅かった。
 うぅ、でもボクが居ても止めるのは無理だったけど。
「不良が暴れてるのって神社の方だよね」
 もし警察沙汰になってお兄ちゃんたちは捕まってほしくないし。
 えぇぇい。考えててもしょうがない。行かないと。
 自転車を使えば追いつけるだろうし。
「はぁはぁはぁ。お兄ちゃん、早まらないでね」
 えっと・・・神社はもうすぐだけど・・・特に声とか聞こえないなぁ。
 ひょっとしてもう警察に捕まっちゃった!?
 自転車は・・・ここのコンビニに停めてと。
「お兄ちゃんはどこかな?」
 いないなぁ。
「ちょっと、やめてください」
「へっへっへ。お嬢ちゃん。こんな夜道に一人は危険だぜ」
 あれ?女の子が長ラン姿の男二人に絡まれてる。
 あ・・・見たこと無い長ラン・・・
 まさか、この男の人が山向こうの?
「てぇぇい!」
 ボクの拳が男の頬を捉える。
 完全な不意打ちだったから伸びちゃったかな?
「な!なにしやがる」
 もう一人の男がこっちを睨む。
 うわぁ・・・なんか変な睨み方。これならお兄ちゃんの舎弟の方が上だね。
「キミは帰っていいよ」
「あ、ありがとう」
 女の子が走って逃げていく。
 ふふん。総番長の妹が伊達じゃないってこと教えてあげるんだから。
「てぇい!」
 ボクの拳が立っていた方の顔に突き刺さる。
 あれ?フェイントのつもりだったのに当たっちゃった。
 弱いよこの人たち。
「・・・ふん。これに懲りたら自分の街にもどりなさい!」
「誰が懲りたらだって?」
 え?
 あ・・・倒れている男たちの向こうにもう一人、別な男が。
 でかい・・・お兄ちゃんと同じくらいあるかも。
「キミたちだよ!ボクの住む町にいきなりやってきて狼藉を働くなんて」
「どうせすぐにこの町は俺の支配化になるんだ。今だろうがそれからだろうが同じだろ!!」
 大男がほえる。
 うぅん。やっぱお兄ちゃんに似てる。
 でも、お兄ちゃんの方がかっこいいし、強そうかな。
「嬢ちゃんよぉ。俺の舎弟二人をやったからっていい気になるなよ?」
 ん〜、これで強さもお兄ちゃん級だったら、さすがにボクでも手が出ないかも。
「その手足を折って、ついでに俺のモノで使い物にならないようにしてやろうか?」
 もう、下品だなぁ。
 ふぅ・・・
「何とかいえよコラ!!」
「・・・すぅ・・・おにいちゃぁぁぁぁぁん!!!」
 ボクがそう叫ぶと、数秒もたたないうちに反応がある。
 大型トラックか重機でも走っているような地響きがこっちに向かってやってきた。
「茜ぇぇぇぇぇ!!どうした?大丈夫か?」
 やってきたのはもちろんお兄ちゃん。
 あれ?後ろに四天王もみんないる。
「あ、えっと・・・あれが敵のボスみたい・・・それで・・・ボクに・・・」
 泣きまねをしてみる・・・
 するとお兄ちゃんの顔面が真っ赤に。噴火直前。
 ちょろいちょろい。
「貴様ぁぁ!!茜に何をしたぁぁぁ!!フン!!」
 あまりのお兄ちゃんの気迫に、向こうの男があとづさる。
 やっぱりお兄ちゃんの方が上だね。
「て、てめぇが・・・い、一文字か・・・ぶへらぁ」
 あ、なんか言ってたみたいだけど、お兄ちゃんの拳をまともに受けて吹っ飛んだ。
 この状態のお兄ちゃんを前に隙を見せるなんて。
 まだまだだね。
「ふん。弱い弱い弱すぎるぞぉぉぉぉぉ!!!」
「はいはい。お兄ちゃんはもう怒りを静めてね・・・あ、そういえばみんなここに居ていいの?他の不良は?」
 いくらなんでも、立った二人の手勢でここに来るはずは無いだろうし。
「あぁ。それなんだけどよ。俺たちが駆けつけたときには、神社の裏手でほとんど伸びてたぜ」
「みな、一撃で落ちていた・・・なかなかの手練れと見てよさそうだ」
 ん〜・・・この町でお兄ちゃんたち以外でそんなに強いのって。
 あ。まさか!?
「まったくもぉ。素直じゃないんだから」
「ん?誰か心当たりがあるのか?」
「いいのお兄ちゃんは・・・きっとそのうちに会うことになるから」
 明日、お礼を言いに行かなくちゃ。
 おせちでも、持っていってあげようかな。

 
 

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