ふぅ。あぁ・・・青あざになっちまったか。
ったく。昨日の奴ら、この時代に長ラン、リーゼントにサングラスって。
初日から遅刻しちゃったからな、今日は遅刻しないようにしないと。
「なに・・・してるんですか?家の車の前で・・・」
「へ?あ、あぁ。ちょっとミラーで顔の確認を」
目の周りが気になって、通学路途中にあった車のサイドミラーで顔の確認していたのだが。
確かに不信人物に見られてもしょうがないか
あれ・・・この子・・・どっかで。
「あ、ひどい怪我・・・大丈夫ですか?」
「ん。あぁ。痛みはないからさ」
この顔、どっかで見たことが。
この制服、ひび高だよな。
「同じ学校ですよね。えっと・・・」
「牧和輝。1年だ」
「・・・・え?」
あれ。止まった。
俺のことを知ってるのか?
ってことは、昔俺がこの町に住んでた頃の知り合いで女の子ってことは・・・
まさか・・・ひょっとして。
「光?陽ノ下光か?」
「・・・和輝くん・・・なの?・・・本物・・・本物だよね」
陽ノ下光は、俺がこっちに住んでいた時期。
今から7年ほど前だけど、その時に隣の家に住んでいた女の子だ。
「ってことは、ここ。光の家で、隣が俺の家?」
光の家も元俺の家も、リフォームされていて外見からずいぶんと変わっている。
それどころか、街並み自体が全然違う気がする。
区画整理でもしたのかな?
「・・・ずいぶん変わったんだなぁ。全然気が!?」
光が俺に抱きついてきた。肩の震えからからいって泣いてるのかな?
そういや、昔から泣き虫だったっけ。
まだ、時間もあるし。少しくらいなら、このままでいいか。
「和輝くんの、和輝くんの身体・・・大きくなったね」
「まぁな。お前だってすぐにわかんないくらいに可愛くなったよ」
「えへへっ。ありがとう」
ったく、こいつの笑顔はやっぱ可愛いな。
引越した後はつらかったなぁ、しばらく光のこと考えて眠れなかったし。
「それに、お前も大きくなったろ。特にこの辺りが」
光の胸に手をあてる。
「!?・・・・和輝くんの・・・エッチ!!」
「そっか。和輝くん・・・隣のクラスなんだ」
「あぁ。ん、まぁ。またな」
俺と光はそれぞれのクラスに入っていく。
光と同じ学校かぁ。これから先は、バラ色の新生活って感じだな。
余裕持って家を出たはずなのだが、遅刻ギリギリの登校になってしまった。
「あ、やっと来た。えっと、牧くんだよね」
見知らぬ女子生徒が俺に声をかけてくる。
誰だっけ。
「ボ・・・あ、私は一文字茜」
「お、おう」
確か、同じクラスの子・・・だよな。
「あのね、昨日・・・けん」
一文字さんが何かを言おうとした瞬間に、始業のチャイムが鳴り始める。
と、同時に先生が教室に。
廊下でチャイムを待っていたとしか思えないようなタイミングだ。
「あ、先生来ちゃった。じゃあ、後でね」
一文字さんがそそくさと席につく。
「なんだったんだ?」
「今日はこれまで。来週からは午後も授業があるからな。よし、解散」
ふぅ。やっと授業が終わった。
午前中だけでこれだ、午後の授業じゃ絶対に寝るな。
さてと、今日はどうするかな。部活でも見に行こうか、それとも商店街でもよって帰るか。
「あ、牧くん」
「ん?あぁ、一文字さん。どうしたの?」
声をかけられ横を見ると、帰り支度を済ませた一文字さんが立っていた。
そういや、朝、なんか話しの途中だったっけ。
「途中まで一緒に帰らない?わ・・・私と一緒に」
「まぁ、用事もないし。いいよ」
俺も帰り支度をはじめる。
制服の上着を着て、カバンを持つだけなんだけどな。
「さ、帰ろうか」
「うん」
俺と一文字さんが教室を出ると、廊下には光が立っていた。
「あ、和輝くん。一緒にかえ・・・誰、その子?」
「光。あぁ・・・先客がいるんだけど。なぁ、一文字さん、光も一緒じゃダメか?」
「え?あ。えっと・・・出来れば・・・2人だけの方が」
一文字さんがうつむいてしまう。
あ、やばい。なんか光の方から黒いオーラが感じられる。
「ふぅん。和輝くん・・・・・・」
「あ、ひ、光・・・さん」
「しらない!!」
光が黒いオーラを撒き散らしながら階段を下りていく。
あぁ、周りの生徒がみんな避けてるよ。
「いいの?」
「明日にでも謝っておくさ」
「んで、話って?」
「あのね。昨日のことなんだけど。牧くん、けん」
「待ってたぜ!牧ぃぃ!!」
一文字さんの話の途中でまた横槍が入る。
って、昨日の不良の男。
昨日は二人だったが、今日は一人か。
「牧よぉ。昨日のカリはきっちりと返させてもらうぜ」
「はぁ。ったく・・・一文字さん。ちょっと離れてて」
俺は一文字さんにカバンを預けて、背中にかばうように移動する。
「女連れとはいい身分だなぁ。えぇぇ?」
「いいから来いよ。そっちからでいいぜ」
男が殴りかかってくる。
俺はそれを軽く避け、男の足を払うようにひっかける。
「うぉ!」
男は地面に顔をこすりつけることとなった。
ふぅ、やれやれ。
「まだやるのか?」
「てめぇ!」
昨日は不覚にも殴られてしまったが、落ち着いてやれば問題はない相手だ。
この後も舐められないように少し痛めつけるかな。
男は起き上がると、俺ではなく後ろの一文字さん腕を取る。
「はん!抵抗すんじゃねぇぞ・・・抵抗したらこのお嬢ちゃんの可愛い顔が台無しになるぜ」
ったく、一人できたからもう少し骨のあるヤツだと思ったんだけど。
「一文字さん。すぐに助けるから」
「ふん。出来るもんなら・・・一文字?・・・げげ、姉さん」
「いいかげん、ボクの腕、放してくれるかな」
あれ?
不良の男は、一文字さんの腕を放してその場で土下座をはじめた。
どういうこと・・・?
「まったく。ボクの顔もわからないくらいに周りが見えなくなるから簡単にあしらわれるんだ」
「へへぇ。まったくそのとおりで」
「あ。あの・・・これはどういう展開?」
「つまり、一文字さんは、ここいら一帯をしめている総番長の妹」
一文字さんが首を縦に振る。
「んで、その舎弟を怪我させた俺はその総番長に目をつけられたと」
今度も同じように首を縦に。
目の前が暗くなってきた。
「一文字さんからそのお兄さんになんとか言ってもらえないの?」
「えっと、ごめん。ボ・・・私が言ってもこればっかりは」
そっかぁ。ふぅ。バラ色の新生活が・・・一転したか。
あれ。そういえば。
「さっき、自分のことボクって言ってなかった?俺と話すときは私って言いかえてるみたいだけど」
「え・・・あ。あの・・・ボク・・・って一人称ってヘンだから」
「そんなことないと思うけど。いいんじゃない?」
そう言うと、一文字さんの顔が明るくなる。
「そっか。よかったぁ。えへへ」
う。一文字さんって、光とはまた違った可愛さがあるかも。
「え?・・・な、なに?ボクの顔に何かついてる?」
「あぁ、いや・・・可愛いなって思って」
「えぇぇ!?」
一文字さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
俺は思ったことを言っただけなんだけど。
「あ、あの・・・これからお兄ちゃんたちが迷惑をかけると思うけど」
「うん。そのことについてはゆっくり考えていくよ」
「うんうん。これからよろしくね。ボクも出来るだけ、お兄ちゃんに言ってみるから」
「あぁ。よろしくな」
まぁ、一文字さんとも知り合えたわけだし。
完全にいやな新生活ってわけでもないか。
それにしても・・・総番長・・・か。
「??・・・何がそんなに楽しそうなの?」
「ん?俺、楽しそうか?・・・そっか。まぁ、色々とな」