「データロードプログラム実行。初期化。成功。インターフェース検定。終了。異常なし」
「データデリート処理開始。完了まであと2分」
 楓子と花桜梨が、世界の再構築と消滅を同時にすすめる。
 ただ、その台詞はあまりにも機械的というか、本当にコンピュータのようだ。
「なんか、普通にコンピュータの処理を見てるみたいだな。もっと叙事詩風とかに出来ないのか?」
 その間にも2人の実行は続く。
「データデリート完了」
 4人を残し、全てが目の前から消え去る。
 ヒカリの手が、がっちりと和輝を捕まえる。その手はかすかに震えていた。
「当該世界のロード完了。再起動を行います」
 和輝とヒカリの頭の中が一瞬真っ白になる。
「再起動終了。全システムチェック」
「チェック開始します」
 急に目の前が明るくなる。
 と言っても、暗いことには代わりは無いのだが。
「あぁぁ。そらがチカチカしてる。目がおかしくなったのかな」
 空には満点の星と月が、地面を照らしている。
 未来のあの地獄のような世界では、なぜか夜に星も月も見えることは無かった。
「ヒカリ。あれは星っていうんだ。光っているもんなのなんだよ。綺麗だろ」
 戻ってきた。
 空には星と月。そして、今たっている、山の下には見覚えのある高校と街。
「チェック完了」
「記憶の欠片からのデータロード作業、全て完了しました」
 2人の羽が消え、風も収まる。
「お疲れさま。ありがとう。俺なんかのために」
「いえ。これが私たちの使命ですから」
「そうです。牧君は気にしなくていいんだよ」
 和輝とヒカリが山を降りる。
 花桜梨も楓子も、シャツを着ていないので、とりあえず隠れていてもらうことにした。
「今はいったい何時なんだろう」
「あれ?あの大きい黄色いの無くなった」
 空を見上げると、月が見えない。
 雲に隠れたわけでも無さそうなのだが。
「月食?ひょっとして!」
 和輝が幼馴染みの家の前に急ぐ。
 その家の幼馴染みが住んでいる部屋から、闇の波動が感じられる。
「やっぱり。あの日なんだ。じゃあ、まだ誰も死んでいない。みんなを助け出せる!」
 魔王が降臨し、そして、この日を境にその攻撃は激しさをまし、次々と死んでいく。
「あれ。何してるの?」
 ヒカリが上を見上げ、和輝の服の袖を引っ張る。
「げ!?」
 そこには窓に手をつき、苦しくも気持ちよさそうな光の顔が。
 もちろん、その後ろにはあの時の和輝。
「あぁ。えっと。もっと大きくなったら教えてやるよ」
 とりあえず、ヒカリに見せないように、顔を伏せさせその場から離れる。
 ひびきの市の商店街にも裏通りは存在する。
 非合法なものを売りさばいている場所。普通の人はこんな場所があることも知らないはずだ。
「誰だ」
「悪魔と踊るは天使の役目」
「はいんな」
 ドアが開き、中へと通される。
 地下室への階段を下りていくと、そこには頭に大きな傷のあるスキンヘッドの男がいる。
「魔王様!?今日はどのような用件で」
「こいつを換金してほしい」
 和輝はポケットの中から、いくつかの宝石を出し机に置く。
 あの胴元が隠しこんでいた宝石を、価値の高い奴だけ持ってきたのだ。
「なるほど。こいつはかなりの上物だ。で、そっちのお嬢ちゃんも売り物ですか?」
 ヒカリが男の顔におびえ、和輝の背後に隠れる。
「残念ながらこの子は俺の娘だ。売り物じゃない」
「そうですか。では、この宝石でこれでどうです?」
 男が指を3本立てる。
「そいつはそれでいいだろう。あと、服をくれ。普通のな」
「服ですか?普段の魔王の装束はどうしました?」
 和輝が男を睨みつけると、それっきり黙ってしまう。
 親父が机の上の宝石をしまい、代わりに札束3つを1度机に置き、それをバックにつめる。
「普通の服ですか。ここにはありませんが。それじゃあ」
 電話を手にとり誰かと話をはじめる。
「あれなに?」
「電話って言ってな。遠くにいる奴と話をすることが出来るんだ」
 ヒカリはこの時代に着いてから、見るもの全てが真新しい。
 不思議なものを見るたびに、今のように説明を求める。
「話はつきました。商店街のアルマってブテッィクが30分だけ店を開けてくれるそうです」
「サンキュ」
「ただ、あの店の店主は魔王様だとはわからないのでなにとぞ」
「わかったよ」
 男が机の中から一本のビンを取り出し、机の上に置く。
「あと。これをどうぞ」
 錠剤の入った透明なビン。
 ビンには何もかかれておらず、中の錠剤も綺麗な丸い形はしていない。
「かなりぶっ飛ぶヤツらしくてね、あの時にキメレば、そこの譲ちゃんだって天国行きって代物さね」
「あのなぁ。ま、何かに使えるかもしれないか。もらっていくよ」
 和輝が薬をポケットにしまい、札束の入ったバックを背に担ぐ。
「それじゃあな」
「えぇ。また」
 店を後にする和輝とヒカリ。
 すでに深夜ということもあり、店はほとんど閉まっている。
 ただ、一件だけが、シャッターをあげ光が外に漏れている。
「親父が言ってたのはあんた?」
「あぁ。そうだけど」
 店の前に立っていた男が和輝とヒカリを、上から下まで舐めるように見る。
「ふぅ。コーディネートしてあげるからこっちにおいで」
 きっかり1時間後。男のコーディネートにより和輝とヒカリは綺麗な服に身を包んでいる。
 ただ、あくまでも動きやすさ重視の服だが。
「ふわぁぁ。まったく。夜更かしは美容に悪いのに。それじゃあね」
 男が店の中にはいり、シャッターを降ろす。
「これ。なんか窮屈」
「そう言うな。すぐになれる」
 バックは金のほかに、楓子と花桜梨の服と、着替えでかなりパンパンだ。
 和輝が左腕に捲いた新品の時計を見る。
「ん、そろそろか」
 歩いていた速度が少し速くなる。
 ヒカリにいたっては、もう完全に駆け足だ。
 向かった先は河川敷公園。
「あれ。カズキ?」
 公園の中央には魔王の装束に身を包んだ和輝が立っている。
「魔王になるのか」
「なるのではない、戻るのだよ」
 和輝と魔王が自らの中で葛藤する。
 今の彼は立ちの悪い二重人格と同じようなものだ。
「さぁ、我の身体。返してもらおうか!」
「これは俺の身体だ!」
「そう、それはお前の身体だ」
 和輝が魔王装束の和輝に近づく。
 魔王がそれに気付いた時には、額に手をあてられ、脳に精神的な衝撃がはしる。
 魔王の目がうつろになり、身体もフラフラと揺れだす。
「これでよし。じきに俺の記憶がお前の中に生まれるはずだ。さて、とりあえず、2人のところに戻るぞ」
 和輝が公園に背を向け歩き出す。
 背後では、正気を取り戻した魔王が、闇の中に消えていく。

 翌朝、和輝たちは更なる行動にでた。
 まずは、これから死んでいく友人たちの救出だ。
「魔王の種は身体の精神体に埋まっている」
 和輝の前に、私服姿のヒカリ、楓子、花桜梨が座っている。
「そいつは、死ぬ瞬間に砕けるはずだ。だから、どうしても1度、死の直前まで肉体を壊さなくてはならない」
「つまり。みんなが傷つくのを黙って見てなきゃいけないんだ」
 楓子の顔が辛そうにゆがむ。
「あぁ。だから、2人にはその死ぬ瞬間に、みんなを助け出して欲しいんだ」
「無茶なことをいいますね」
 花桜梨は何時にもまして無表情。これはかなり怒っているサインだ。
「すまない。けど、俺はどうしてもやらなきゃいけないことがある。だから、みんなの救出は頼む」
「ふぅ。わたったよ。牧君のたのみだもん」
「仕方ないですね」
 和輝が頭をさげる。
 今から約3週間後に、最初の犠牲者である華澄が死に至る。
 美幸はあの時点では死なないので、救出することは出来ない。
「私は?」
「ヒカリは俺と来てくれ。あるものを探して欲しいんだ」
「うん」
 元気にうなずくヒカリ。
「それじゃあ」
「あぁ、魔王宮で。光と魔王が対峙した瞬間。その場で会おう」
 楓子と華澄が消える。
「さて。まずはベルスペースへ行かないとな」

「誰です」
「はじめまして。牧和輝といいます」
「ヒカリだよ」
 純白の空間、ベルスペース。
 そして、その主であるメローラ。
 和輝は全てのいきさつをメローラに話す。
「そうでしたか。それはさぞお辛い思いをなさったことでしょう」
 メローラの瞳に涙が浮かぶ。
「はい。しかし、今はそんなことを言っている場合ではありません」
「わかっております。レインボーベルですね」
 闇を消滅させるためのアイテム、レインボーベル。
 それが無くては、いくら光が闇を封印しようとしても、失敗を繰り返してしまう。
「100年前にもレインボーベルを探しましたが、とうとう見つけることは出来ませんでした」
 その代わりとして、メローラが作成した3つの鐘。
 それが、ひびきの高校に伝わる伝説の鐘だった。
 100年前に封印の地として、あの場所に鐘を立て。そしてそこに高校が建設されたのである。
「ヒカリ。ヒカリはここで、このメローラと一緒にレインボーベルを探してくれないか?」
「私が?」
「この少女からは不思議な運命の力が感じられます。ひょっとしたら」
 ヒカリがうつむき考える。
「私がそれを見つけれるかもしれないんだよね。見つけたらカズキ嬉しいんだよね」
「あぁ。お前なら必ず見つけ出せるはずだ」
「なら、探す。レインボーベルを探しに行く」
 和輝はうなずき、ヒカリを見つめる。
「頼むぞ」

「じゃあ。せいぜい無駄なあがきをして苦しむことね」
 華澄が塵となり、消え去る瞬間に世界の時がとまる。
「この人だれでしょう?」
「さぁ。けど、牧さんの知り合いなら助けてあげないと」
 動きの止まった空間に、舞い降りる楓子と花桜梨。
 その翼のかもし出す雰囲気は、さながら天使と悪魔といったところか。
「まずは1人目」
 楓子が、胸から上だけになった華澄を抱き上げる。
「肉体の再生と回復。時間がかかるわね」
「大丈夫だよ。まだ、時間はあるんだし。それより、決戦直前に死んじゃう人の回復が大変だよ」
「まったく。無理難題を押し付ける人ですね」
 2人が上空に飛び去ると、止まっていた時間が動き出す。

『なるほど用件はわかった』
「あぁ。あんたなら出来るんだろ」
 和輝の目の前には、まさに山のごとき大男。
『しかし、それは我らの国の理に反すること。おいそれと許可を出すわけにはいかんな』
「それを知って頼んでいるんだ」
 大男は、数十年ぶりに悩む。
 この世界に王として君臨し、二百余年。これまでは死者の行き先しか決めては来なかった。
『ならばそれ相応の代償はいただくぞ』
「あぁ。全てが終わった後なら、俺の命でもなんでもくれてやる!」
『そんなものに興味は無いわ。我が欲するものそれは』
 大男の名はヤマ。日本では閻魔大王として恐れられている、冥府の王。
 その実体は、現世界とは別な世界にある、精神体による世界の王だ。
「その程度ならお安い御用だ。わかった交渉成立だな」
『うむ。こちらの行動には、少々手続きがあるから時間がかかるがよいな』
「かまわないぜ、どうせ魔物を先に一掃しないと行けないんだからな」
 和輝はヤマの間を後にする。




作者  「やばい」
輝美  「どうしたの。おじちゃん」
作者  「おじ、お兄さんな。ちょっと話の展開が遅いかも」
光   「えぇぇ。24話で終わらないの?」
作者  「終わらせる予定だけど。1話1話が長くなるかも」
和輝  「勘弁してくれ。それじゃなくても俺はしんどいんだから」
光   「和輝君、二役だもんね」
楓子  「それにしても、最初の台詞あれでよかったの?」
花桜梨 「予告編と全然違うのだけれど」
作者  「ん。なんか、予告編みたいな台詞って、いろんなところで使われてて陳腐かなって」
光   「でも、ジャンルが一気にSFチックに」
和輝  「戦隊モノってSFじゃないのか?」
光   「でも、魔法みたいなの使うし。魔王だし。私はファンタジーだと思うな」
楓子  「サイエンスフィクションじゃなくて、サイエンスファンタジー?」
光   「うん。そんな感じ」
花桜梨 「どちらにしても、場違いと言うか、おかしいと言うか」
作者  「気にするな!」
輝美  「ねぇねぇ」
作者  「ん?」
輝美  「光ママと和輝パパは、お家で何をしてたの?」
和輝&光「ゑ」
作者  「あぁ、えっと。大きくなれば君もわかるさ」
輝美  「なぁんだ。エッチしてたんじゃないのか。つまんない」
和輝  「誰だよこんな子連れてきたのは!!」
   チャンチャン
 
 

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