「ほう。この子が」
「苦労したぜ、ここまで育てるのによ」
暗い室内に男が4人と赤髪の少女が1人。
「んで。いくらからだ」
「まぁ、まてよ。こいつはこれでも生娘だ。そこんとこわかってもらわねぇとな」
少女はアイマスクをかけられ、手足を椅子に縛り付けられている。
着ている物も、服というより、ただ布を捲きつけているといった感じだ。
「何歳だ」
「明日12になる」
「上物だな」
対して男たちの方は、ただ1人を除いて、ボロボロのシャツにボロボロのジーンズ姿。
1人だけは、白いマントを頭からかぶっているため、姿はわからない。
「じゃあ、100万からスタートだ」
「110」
「120」
闇競売が始まる。
この少女が商品だ。
「150」
「おい、兄さん。アンタは参加しねぇのか?」
マントをかぶった男に問いかけるが、反応しない。
胴元らしき男が、肩をすくめ続ける。
「150。他にいないか」
「180!」
「200でどうだ!!」
そこでマントの男が動く。
指を三本立て、胴元に見せる。
「300万か」
「いや、3だ」
男がマントを捨てて動く。
隣にいた2人の男の首が地面に落ちる。
そして、胴元がそれに気がついたときには、すでにその首筋には一振りの剣が突きつけられている。
「男の首3つだ。商品はもらっていく」
そう言うと、胴元の首を刎ねる。
男は剣で、少女の縄を解き、アイマスクをはずす。
「お前は自由だ。どこにでも行け」
男が背を向け、マントを羽織りなおし、階段に足をかける。
マントが何かに引っ張られるのを感じ後ろを振向く。
「連れて行って。どうせ、この時代じゃ私は1人じゃ生きていけないし」
「ダメだ。俺には目的があるんだ」
「私を買ったんでしょ。なら、私はあなたのものよ」
少女が男を見上げる。
「それだけモノが話せれば生きていけると思うが。名前は」
男がマントを開き少女を迎え入れる。
「ヒカリ。あなたは?」
「和輝だ」
外は日差しが強かった。
あたり一面は砂の海で、昔の建物の残骸が残っているだけ。
人間は建物の地下で暮らすのが現状だ。
「それにしてもヒカリか」
「?」
ヒカリがマントの中で首をかしげる。
「昔の知り合いにいたんだよ。って、そういえば、アイツの小さい頃に似てるな」
この世界で外を出歩くためには、和輝のようにマントを羽織って生きなければならない。
そうでなければ、直射日光にやられてすぐに倒れてしまう。
「どこかでお前のマントを調達しないとな」
「あ、ここに行って」
ヒカリが一枚の紙切れを差し出す。
そこにはなにかの住所がかかれていた。
「ここは?」
「オトーサンの家。いろんなものがあるよ」
「オトーサン。あぁ、あの胴元か」
住所の位置まではそう遠くない。
ヒカリをつれてこの競売場まで来たのだからそれもそうかもしれないが。
そこまで黙々と歩きつづける。
外を出歩く場合は、黙って歩くのが原則だ。無駄な体力を使わないように。
「ここか」
元は3階建てほどのビルなのだろうが、今は1階と2階部分が地下に埋まり、入り口は3階の窓だ。
3階から、階段を下りて2階に行く。
2階は、外や3階とは違い、ひんやりとした空気だ。
「ふぅ。すこしここで休んでいくか」
和輝がマントを脱ぐ。
地上がどれだけ暑かろうと、地下になればそうでもない。
意外と地下は涼しいものだ。
「電球があるってことは、どっかで自家発電でもしてるのか」
今の時代。電気はかなり珍しい。
廃油などを再利用して電気を使う場所もあるが、それもかなりの金持ちだけだ。
「ここでまってて」
ヒカリが1階に下りていく。
「じゃあ、ちょっと物色させてもらおうか」
闇競売の胴元だけあって、なかなかなモノを揃えている。
大小様々な銃や衣服。それに宝石の類。
とりわけ丁寧に扱われ、保管されているものがある。
辞書や漫画などの数多くの書物。
「へぇ。ん。これは」
その本の名から一冊の本を取り出す。
いや、本ではなく、雑誌や新聞の切抜きを集めたものらしい。
「こいつがあれば、俺が寝ている間のことがずいぶんわかりそうだな」
切り抜きの内容をざっと見回すとこんな事がかかれている。
空を不思議な闇が覆い1年が過ぎたころ。人間をはじめとする数多くの生命体が次々に死に始めた。
そして、その怪奇な死が訪れてからさらに1ヶ月。今度は空を覆っていた闇が消えた。
同時に、地球を守るはずのオゾン層なども消滅。今、地球は太陽の光を直接浴びさせられることとなった。
「それで、この砂漠化と海面上昇か」
どうやら、光が魔王の封印に失敗してから、この星は死の星と代わってしまったようだ。
だが、やはり何故自分が生きていたのかの問題を解くことができないが。
「この西暦が正しければ、今はあの事件から15年後か。ってことは、俺は33?」
自分が急にふけたような気がする。
ただ、この部屋の衣装と共に置いてあった鏡を見る限りではそうは見えないのだが。
「待たせちゃってごめんね」
背後からヒカリの声がする。
「おう、どうし。え?」
和輝が振り返ってみたもの。
それは、3人の少女の裸。
1人はヒカリ。後の2人の顔は和輝の振るい記憶に存在していた。
「佐倉さんに八重さん!?」
佐倉楓子と八重花桜梨。
和輝がひびきの高校の学生だった頃の友人。
ただ、楓子は転校し、花桜梨は退学してしまったので、1年ほどの付き合いだが。
「こんにちわ。久しぶりだね」
「お久しぶりです」
2人が丁寧にお辞儀をするので、ならい礼を返す和輝。
「って、違う!なんで2人がここに、あと、なんか服着て!服!!」
2人の顔は高校時代とあまり変わっていない。
15年以上の歳月が経ったとは思えないほどに。
「ヒカリも。そんな格好でくつろいでないで」
ヒカリは、裸で椅子に座り3人をじっと見ていた。
「なんで?ここではいつもこうだよ?」
ヒカリが首をかしげる。
どうやらそう言う生活を送ってきていたらしい。
「どうしても。ほら、3人とも早く服を着てよ」
ヒカリが2人に、バニースーツやら白衣やらスクール水着を渡すものだから、着替えには時間がかかった。
結局、和輝が選んだ普通のシャツとジーンズに落ち着いたのだが。
「むぅ。オトーサンが、男の前で服を着るならああいう服を着なさいって」
「それはもう忘れろ」
頬を膨らませたヒカリが和輝の膝の上で暴れる。
「それで、2人はどうして?」
「色々あったんです」
花桜梨がそれだけを言う。それ以上聞くなということだろうか。
結局その日は、特に話を聞くことも出来ずに寝ることになった。
「ねぇ。カズキ」
「ん?」
「目的ってなに?」
同じベットで横になっているヒカリが和輝に聞く。
「魔王に会うこと。出来れば俺の手で倒したいんだけど」
和輝が旅をしている理由。それは魔王。いや、闇に会うことだ。
なぜ、自分が生きているのか。なぜ、この世界を滅ぼすのか。
そして、出来ることなら、自らの手で滅してやりたい。そう考えていた。
「魔王?」
「うん。この世界を滅ぼした張本人。どこにいるのかはまだわからないけどな」
目覚め、旅をはじめて1ヶ月。ここで過去の記録を目にし、やっと手がかりの片鱗を掴んだという程度だ。
とはいえ、全く当てもなく旅をしているわけではない。
最初の目的地はひびきの市。そこに何かの手がかりがあるような気がする。
「さて、そろそろ寝るか」
「うん」
ヒカリが和輝に覆い被さる。
「何してるんだ?」
「んと、ご奉仕するの」
「しなくていい」
和輝はヒカリを自分から降ろし、背を向け目を瞑る。
「えぇぇぇ。ぶぅぶぅ」
その後ろではヒカリが不満の声をあげ、ポカポカと和輝の背を叩く。
それでも、疲れたのか5分ほど立った頃には、小さな寝息と共に睡眠に入ってしまった。
「それでは、牧さんは魔王をお探しなのですか?」
朝食をとりながら花桜梨が和輝に聞いてくる。
「ん。どこにいるのかわかんねぇけどな」
「牧君。もし、私たちが知ってるって言ったら?」
「へ?」
楓子と花桜梨の顔が真剣になる。
「実は私たちは、あなたの知っている八重花桜梨と佐倉楓子ではありません」
「あなたも、昔の牧君とは違うんだけどね」
2人がおもむろにシャツを脱ぎだす。
そして、苦しそうな顔と声、それと共に何かが裂ける音。
「くぅ、あぁぁぁぁぁ。はぁはぁはぁ」
今、2人の背中には血に濡れた翼が生えている。
楓子の背には、純白の白鳥の羽が。花桜梨の背には、漆黒の蝙蝠の羽が。
「そ、それは?」
純白の羽は所々が血で赤く染まり、漆黒の羽からは血が滴り落ちる。
「私たちはあの闇から作られました。そして、あなたもです。牧さん」
花桜梨の口から伝えられる事実。
冗談のようにも聞こえるが、2人の瞳と翼をみる限りは、そうではないらしい。
「あの闇は私たちを取り込み、作り変えたのです」
「目が覚めた時は、もうこの世界になってたんだよ。けど、私たちには記憶と使命があった」
「使命?」
2人はうなずく。
「牧さん。あなたを導くこと」
「あなたが、もしも闇を倒すと誓っているのであればそれを手助けすること」
「まさか、君たちを作り出したのって」
「はい。サクシャです。闇の中で唯一のこった力で」
和輝が魔王だったときの記憶は、今は鮮明に残っている。
その時、彼を支配していたものはサクシャの名と精神を乗っ取ったあの闇。
しかし、その中でたった一欠片だけ、サクシャの古の心が残っていたのを覚えている。
「俺は闇を倒せるのか」
「いいえ。倒すのはあなたではなく、牧さんと陽ノ下さんです」
「え?」
「私たちに与えられた力は、世界を作り変える力」
楓子と花桜梨が手を合わせ、それを開いたところに闇の球が出来る。
「この世界を削除し、サクシャの最期の記憶の欠片を再構築します」
「そうすることにより、この世界はまだ、破壊されていない世界に戻るわけです」
記憶の欠片は、サクシャとメローラが持つ能力。
みずからの世界の記憶を別な世界に保存しておき、第3者がそれを再構築することが出来る世界。
「つまりは俺がゲームプレイヤーってことか」
過去の世界に戻ると言うことは、みんなは戦っている最中であろう。
もちろん、その後に起こることなど誰も知る由も無い。
ただ、この和輝だけは、全てを知り、その世界を変えることが出来る。
「どうしますか?」
「ただ、みんなを助けても、あなたはあの時代の住人じゃないから、その後はどうなるかわからないよ」
実際に過去にタイムスリップするわけではないので、タイムパラドックスは発生しない。
だが、ゲームをクリアしたプレーヤーはどうなるのか。
現実のゲームならそれで次のゲームを探すなり、普段の生活に戻る。しかし、その世界に紛れ込んだプレーヤーは?
彼の元の世界は消滅するのだから戻る場所は無い。
「消滅しようが次元の狭間に飛ばされようが、俺は気にしないぜ。あの最悪のバッドエンドを回避できるなら」
だが、和輝の意思は固い。
光を、そしてひびきの高校の親友たちを助けたい。その想いだけが彼を動かしている。
「私も行く」
今まで黙って食事をしていたヒカリが、唐突に和輝に抱きつく。
「だって、ひょっとしたらカズキは1人になるかもしれないんでしょ?でも、私がいれば2人だよ」
「けど、死ぬかもしれないんだぞ」
ヒカリは黙って和輝を見上げる。
昨日、出会ったときと同じ、意志の強い瞳。
「ったく、ホント。あいつそっくりだな。わかった、一緒に行こう。いいだろ?」
「えぇ。かまいません」
「なら、はじめます」
4人の周りに、地下だと言うのに風が吹き荒れる。
「必ず、助けてやるからな」
作者 「第2部開始〜」
輝美 「わぁいわぁい。グッジョブぅぅ」
作者 「君、和輝に似てるな」
琴子 「誰なのこの子は?」
輝美 「輝美はね、輝美なの。ヒカリ役だよ」
和輝 「最近売れっ子の子役の役者さんだよな」
楓子 「むぅ。私より目立ってるぅ」
花桜梨 「せっかくの出番なのに」
光 「じーーー」
輝美 「じーーー」
華澄 「確かに、光ちゃんの小さい頃に似てるわね」
和輝 「だろ?」
華澄 「でも、目の辺りとか、エッチな性格とか。和輝くんに似てるはどうして?」
和輝 「へ?」
琴子 「まさか。あなた!光に!!」
光 「そんなわけないじゃない!私まだ18だよ。12の子がいるわけないじゃない」
輝美 「あ、私、本当は今年で10歳だよ。役では12歳だけど」
琴子 「ということは、今年で光は19歳。その差は9歳ね」
和輝 「そういやぁ、なんかそんな小説あったな。現役大学生のお父さんの話。母親も同じ年齢だったかな?」
琴子 「可能なのかしら」
光 「だ!か!ら!違うの!!私は子供なんて産んでません」
華澄 「輝美ちゃん。ママとパパのお名前は?」
輝美 「光と和輝」
琴子 「ほらみなさい」
光 「えぇぇぇぇ。そんなはずはないのにぃ」
輝美 「くすくすくす」
楓子 「ここでも出番少ない」
花桜梨 「帰ろうかな」
チャンチャン
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