メイは1人、屋敷の研究施設にこもっていた。
 メイが日課としていること。
 それは、ブレスレットの解析だ。
「メイには使命があるのだ。泣いている暇などないのだ」
 いま、メイの前の机には4つのブレスレットが並んでいる。
 メイ、華澄、美帆。そして、琴子の。
「アカネを倒すには、メイの土じゃダメかもしれないのだ」
 自らの両親を殺したアカネを、メイは忘れたことはなかった。
 そして、復讐を近い、この研究をはじめた。
 アカネ。木の力を倒すための力を。

「こんばんわ」
 琴子の死から一夜明けた朝。リビングに集まった3人の頭上から声がした。
 天井を見回す3人。
 しかし、声の主の姿はどこにもない。
「見回しても無駄だよ。ボクは魔王宮にいるんだから」
「魔王の手下がなんのようなのだ!」
 メイが天井に向かって叫びをあげる。
「ふふ。魔王宮に案内してあげようと思ってね」
 3人の目の前に影の球が発生する。
「そこに入れば、魔王宮は目の前だよ」
「きっと罠なのだ」
「けど、私たちにはなんの手がかりもなく、魔王宮へいけないのも事実です」
 光が影の前に立つ。
「罠でもいいよ。罠ならそれを打ち破れば、きっと先に進めるから」
 意を決したように、拳を握り一気に影の中へ飛び込む。
「へぇ。度胸あるんだね。残った2人はどうする?」
 メイとすみれが顔を見合わせる。
 そして、うなずき影の中へ飛び込む。
「ふふふ。地獄へ三名様、ご案内ってね」
 影の球は消え、そこには元の静寂が戻る。

 影から出てきた彼女たちの目の前には、洞窟が巨大な口を開いて待っている。
 それ以外はなにもない。
 後ろを振り返れば、地平線まで何もなく、空は真っ黒な空間。
 唯一、月のようなものが地面を照らしているだけだ。
「ここが魔王宮の入り口」
「まさに、蛇が出るか鬼が出るかですね」
「どうせなら、魔王の目の前まで連れて行って欲しかったのだ」
 3人は洞窟のすぐ側まで歩いてくる。
 中は真っ暗で何も見えない。
「ようこそ。ヒビレンジャーさん」
 洞窟の奥から先ほどの声が聞こえてくる。
 そして、段々と近づいてくる足音。
 その声や足音は洞窟の壁や天井に音が反射している。
「アカネ!」
 メイが足音の主を睨む。
 闇から出てきたのは、魔幻闘将アカネ。彼女がここに3人を呼んだのだ。
「貴様は。貴様だけはメイがやるのだ!!転身!」
 メイがヒビキノイエローに変身する。
 そして、直後に銃をアカネに向け連射した。
「おっと。フライングだよ」
 軽口をたたきながら、閃光の全てを避ける。
「やっぱり罠だったんだ」
「それは違うよ。この奥にはちゃんと魔王宮はあるんだから」
 アカネが洞窟の奥を指差す。
「だけど、キミたちはここで死ぬんだけどね」
 アカネの両腕には、奇妙な植物が絡み付いている。
 光たちが気付いた時には、その植物は地を這い、自分たちの足元にまで伸びている。
「先輩。野咲。先にいくのだ。ここはメイがやるのだ!」
 地面から無数の棘が生じ、その棘が地面の植物をことごとく切断する。
 そして、巨大な棘がアカネの周りに生まれ、彼女を包む檻となった。
「早く行くのだ!先輩は。和輝先輩を必ず助けてあげて欲しいのだ」
「いこう、すみれちゃん」
「はい」
『転身!』
 光とすみれもヒビレンジャーのスーツに身を包む。
「死なないでね」
 洞窟の奥へと走っていく2人。
 メイはアカネから目を離さないようにしながら、2人を見送る。
「いいの?1人だけで」
 アカネの腕の植物が、棘の檻に絡みつき一瞬のうちに土が砂のように崩れる。
「問題ないのだ。一対一でケリをつけるのだ!」
「一対一ね」
 メイが地面を叩く。
 すると、地面から巨大な土人形が現れた。
「へぇ。ミユキとおんなじこと出来るんだ。でも、無駄だよ」
 アカネがその拳を土人形に突き刺すと、先ほどの棘のように崩れてしまう。
 アカネの腕に絡みつく植物。
 その正体は凶死木。琴子がジュンに使用した凶死草の亜種。
 先ほどからアカネに絡みつき、伸びていたのはこの木の枝。
「こいつが水分や養分を有機物無機物問わずに、吸ってくれるのさ。可愛いだろ」
 アカネが凶死木を撫ぜると、喜ぶかのように枝を揺らす。
「まだまだなのだ!」
 メイがそう叫び、またも地面を叩く。
 今度はアカネを取り囲むように5体の土人形が現れる。
「1体が5体に増えても同じだよ。わかってるでしょ。木剋土。土じゃ木には勝てないよ」
 アカネの腕から枝が伸び、5体の土人形に撒きつく。
「かかったのだ」
 メイが指を鳴らすと、5体の土人形が一気に爆ぜる。
 土人形と呼んではいるが、その実、最初の1体目とは違い、この5体は金剛石の製造機。
 土の中の炭素を分解し、結合。加熱の行程を飛ばしたため純度は低いが、それでも地球上の最高硬度は伊達ではない。
「くぅっっ」
 土人形から複数の金剛石が、洞窟内に飛び散る。
 もちろん、不意をつかれたアカネの身体にもその多くが突き刺さることとなった。
「はぁ。やった。のだ」
 爆発での煙が収まり、2人の姿が見てとれる。
 アカネのその姿はあまりにも痛々しかった。
 間近での爆発で、左腕が吹き飛び、そこからは真っ赤な鮮血が大量に噴きだしている。
 全方位に及んだ爆発は、術者のメイの身体にも、無数の傷を作っていた。
「メイの勝ちなのだ!」
 メイが痛みに耐えながらも銃を構え、そして撃つ。
 光線はアカネの眉間に突き刺さり、そのまま後ろへ倒れる。
「みんなの仇はうったのだ」
 メイもその場に座り込んでしまう。
 力の使いすぎに、このダメージ。明らかにオーバーワークだ。
「土の力だけで勝てたのだ」
 五行の理を無視した勝利。
 力と力のぶつかり合いではそれが有効だが、今のように力と生身の身体であればそれは違う。
 作戦を立て、相手に力を使う暇を与えなければ、勝つことは難しくないと言うことだ。
「そうだ。先輩たちを追いかけないと。え!?」
 立ち上がろうとしたメイの足首を何かが掴み、それを阻む。
「くっくっく」
 倒れているアカネが笑いだす。
 しかし、その声はアカネのものではない。
「あーっはっはっは!」
 アカネが、まるでゾンビのようにゆっくりと起き上がる。
 しかし、眉間には穴が空き、目もうつろだ。
 ただ、その開かれた口からだけ、力に溢れる笑い声が漏れている。
「その声聞いたことがあるのだ。たしか、あの時」
 メイの脳裏に、賽の河原での出来事が浮かぶ。
 突然現れた魔王の手下。あの時、閻魔にやられ深手を負ったはずの人物の声。
「タクミだったな」
「へぇ。覚えててくれたんだ。光栄だね」
 眉間の穴や失われた左腕の付け根から、植物の枝が生え出てくる。
 映画にだってこれほど悪趣味なモンスターは出てこないだろう。
「どうして、貴様が」
「アカネの身体に寄生していたのさ。いや、憑いていたって方が適切かな。魂だけだからな」
 立ち上がることのできないメイに、アカネ、いやタクミが近づく。
「キミがアカネを殺してくれたおかげで、こうして実体を手に入れることが出来たよ」
 左腕の変わりに生えた枝が、メイの左腕を締める。
 まるでそれを楽しむかのように、弱い力で絞め始め徐々にその力を強める。
「た、魂だけ」
「そう。キミらも見ただろ。あの賽の河原にいた死んだ人たちの魂、いや、精神体を」
 メイの左腕から嫌な音が聞こえ、同時に激痛が襲う。
「くぅぁ」
「この魔王宮は、あの賽の河原みたいに精神体が存在できる場所なのさ」
 植物が今度は右腕を一気に砕く。
 タクミは閻魔との戦いで深手をおい、この魔王宮で確かに死んだ。
 しかし、彼はこの魔王宮で精神体となり存在しつづけ、最も彼に同調していたアカネの死を待った。
「ついに、アカネが死に、俺がこいつの身体を自由に出来るようになったって分けだ!!」
 メイの腹部を枝が貫く。
 まるで、小さな虫をいたぶるかのように。
「キミは簡単には殺さないよ」
 メイの仮面をはずし、あらわになった頬に舌を這わせる。
 メイの顔が嫌悪で歪む。
「これから俺は魔王すらも乗っ取り、俺がこの世界を作るんだ!!」
 タクミの高笑いが洞窟内に響く。
「そして、キミには大切な役目を与えよう。俺にこうして肉体を与えてくれたお礼だ」
 左腕の変わりに生えている枝の一つが、ナイフのように鋭くなり、メイのスーツを縦に切り裂く。
 白く、未成熟な身体が外気に触れる。
 先ほどの鋭くなった枝とは別の枝。それをメイの目の前に突き出す。
「俺の子を作ってもらうぞ」
 その枝の先から、白い液体がこぼれ出る。
 再度、メイの頬を舐めまわすタクミの頬を、何かがかすめ飛ぶ。
「な、なんだこれは」
 タクミの周りに、無数の金剛石が浮かび、飛び回っている。
 蝶。
 金剛石が次々と、金色の光を放つ蝶に変化していく。
「ば、バカな!土の力にそんなのは。なに!?」
 落ちた仮面の額についた石が、白と黄に点滅し、そして金色に輝く。
 白は金の力。しかし、普段からメイの使用する土の力は黄。
 いま、彼女は二つの力を使っているのだ。
「何故だ。何故そんな力が使える!」
 黄金の蝶はタクミにまとわり付く。
 さながら、蜜に群がる蝶のように、タクミ身体は見えなくなる。
「メイの研究の成果なのだ」
 蝶たちが、一羽。また一羽と飛び立っていく。
 数分後。そこには何も残っていない。
 タクミの全てを蝶が奪い去ってしまったから。
「土生金。そして金剋木。水無月先輩なら、きっとこう、言う、のだ」
 メイの変身が解け、そのまま倒れこむ。
 純白だったはずのブレスレットは、今はその力を失い、石のようになってしまっている。
 昨夜、偶然にも発見した力。
 華澄と琴子のブレスレットの2つに力を加えた時にこれが起こった。
 華澄のブレスレットが水になり、琴子のブレスレットが変化を起こした。
 その琴子のブレスレットが発する力はすさまじく、計測器を振り切るほどだった。
 しかし、すぐに力を失い、ブレスレットは砕けた。
「よかった、のだ。ここまで、もって、くれて」
 メイのブレスレットも砕け散る。
 この戦いの前、メイの腕にはあらかじめ美帆のブレスレットも装着されていた。
 そして、タクミとの戦い。
 あの時に自らのブレスレットを土に変化させ、美帆のブレスレットの力を強化したのだ。
「けど、この力、痛すぎる、のだ」
 それにより発したあれだけの力。
 しかし、それはメイの身体にも高い負荷をかけてしまっていた。
 徐々に塵と変わるメイの体。
「もう一度、和輝先輩に会いたかった、のだ」
 洞窟の中に吹くはずのない一陣の風が、メイの身体を飛ばし、消し去る。




メイ  「うぅぅ。恥ずかしいのだ」
茜   「ボクだってそうだよ。なんだよ、あの展開。声は坂城くんがあてたけど、演技はボクなんだぞ」
匠   「これ、大丈夫なのか?」
作者  「ん〜。大丈夫、じゃないかなぁ」
光   「それにしても、本当にこういうのが好きですね」
メイ  「そうなのだ。この前の白雪先輩といい、他の幹部の話といい」
琴子  「裸だらけね」
和輝  「グッジョブ」
光   「和輝君!!」
すみれ 「でも、水無月さんは裸になりませんでしたよね」
琴子  「え?」
メイ  「そうなのだ。不公平なのだ」
琴子  「それをいうなら、あなたや光だって」
すみれ 「私たちはまだ出番あるからどうなるかわからないし」
光   「出来れば私も裸になりたくないんだけど」
匠   「ベッドシーンしてるんだから、光ちゃんももうNGだろ」
光   「あ」
作者  「んふふふ。まだ第2部があることもお忘れなく」
琴子  「やっぱりこの作者、埋めましょう」
   チャンチャン
 
 

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