ベルスペースでのライトたちの活躍から10日。
 光たちのものとに一通の手紙が届いた。
「果し状?ずいぶん古風ね」
「水無月先輩には言われたくないのだ」
 琴子の今の服装は、薄い青と白を基調とした浴衣。
 祭り時期には増えるとは言え、普段からこの格好と言うのは、ずいぶん古風だ。
「でもね。場所は書いてあるんだけど、時間が書いてないの」
「あらら。慌てん坊さんなんでしょうか?」
 手紙は乱暴な毛筆で書かれており、内容はこうだ。
『河川敷公園に来い!』以上
 なんとも簡潔な内容だ。
 時間も無ければ名前も無い。果し状以前に、手紙として機能しているかどうか。
「無視しちゃえば?」
「そうも行かないよ。多分これ書いたのメモラーだし」
「監視カメラに映ることなく、屋敷に手紙を置いていける奴などそうそういないのだ」
 手紙は今朝早く、玄関のドアに挟まっているのを美帆が見つけた。
 その後、メイが監視カメラを確認してみたが、昨夜から今朝にかけては誰も屋敷には立ち寄っていない。
「時間はかいてありませんが?」
「とりあえず様子を見に行きましょう。暴れていたりしたら大事だわ」
 4人は顔を見合わせうなずくと、屋敷を後にした。

「遅い!」
 男は腕を組み、公園の中心部で仁王立ちで光たちを睨む。
「遅いって言われても」
「というか、アレは何なのだ?」
「俗に聞く、番長とか言うものでしょうか?」
 男は2メートル近い身長で、長ラン、切れ目の入った深めの学生帽。
 番長は番長だろうが、数十年前の遺物と言っていいだろう。
「貴様らがそんなにも時間に疎いとは思わなかったぞ!!」
 男が叫ぶたびに大気が震える。
 まるで、屋外ライブ用のスピーカーの音を間近で聞いているような感じだ。
「あ、あなたメモラーなのよね?」
「うむ」
 男はやはりメモラーのようだ。
 だが、今までといささか毛色の違う彼に対し、4人はどう動いていいのかわからなかった。
「魔幻闘将アカネの兄にして部下。魔幻総番長カオルじゃい!!!」
 あまりの声量に4人の頭がくらくらする。
 この大声は、それだけで武器になるようだ。
「け、けど。兄なのに部下なのか?」
 メイがもっともらしい質問を投げ返す。
「なぬ」
 が、それはどうやら彼の逆鱗に触れたのと同じだったようだ。
 カオルのもとい、総番長の身体の筋肉が膨らみ、着ていた長ランを引き裂く。
 身体全身が黒く硬質化し、肘や肩からは鋭い刃が生えてくる。
「そ、その姿は」
「知ってるの?白雪さん」
 顔も全て硬質化し、唯一、目の部分だけが赤く光る巨大なレンズになっている。
 まるで昆虫の複眼のような状態だ。
「い、いえ。そんなはずはありません。もし、そうなら勝ち目がないですから」
 美帆が視線を落とす。
 その間に、総番長の変身は完了したようだ。
「総番完了ぉぉ!!」
 声は硬質化した口でこもり、はっきりとは聞き取れず、まるで獣の雄叫びだ。
 周りにいた鳥が狂い飛び、川の魚が騒ぎはじめる。
「あ、えっと。じゃあ、みんな。私たちも」
 光の掛け声に3人も我にかえる。
「え、えぇ。そうね」
『転身!』
 華澄が死に、4人になって初めての大きな戦闘。
 ヒビレンジャーは5人そろった時に初めて本当の力を使うことが出来るのだと、メローラは言った。
 4人だけで戦うという不安と恐怖が、光たちの心の中に渦巻く。
「先手必勝なのだ!グランドブラスト!!」
 公園内に地割れが生じ、総番長の足元に巨大な溝が発生する。
「甘い!」
 総番長は腕組みをしたまま、飛び上がる。
 そして、靴のそこが火を噴き、その場にホバーリングを開始する。
「なら、その身体を引きずり落とすまでよ。木喰縛り!」
 公園内の全ての植物の葉や枝が、総番長に向かい伸びていく。
 枝は革の鞭のごとく総番長を捕らえ、雑草の葉は切れることなくその身体をがんじがらめにする。
「ぐぉぉぉぉ!!!」
 総番長が雄叫びを上げる。
 すると、体中から細かい粉のようなものが飛び出し、植物の水分を全て蒸発させてしまう。
「この程度か。ならば、こちらも行くぞ!!」
 総番長が右の手のひらを4人に向ける。
 右肩が膨れ上がり、真っ赤に変色する。
「みんなよけてください!!」
「袖龍砲!!!」
 手のひらから火球が飛び出し、それが龍の形となり4人を襲う。
 美帆の叫びのおかげで、間一髪避けることが出来た。
「こ、これって」
 火龍が突撃した地面は一瞬にして蒸発し、巨大なクレータが出来ていた。
 威力だけなら、光のサンフレアと同等かそれ以上だろう。
「ふははははは」
「そこです!鉄の鞭!!」
 腕を組み、高笑いを続けている総番長に美帆が技を放った。
 鉄の鞭がその身体を縛り上げる。
「うそ」
 総番長の身体を縛り上げた鞭が、瞬時に蒸発する。
「鉄などたやすいものだ」
 純粋な鉄の沸点は2750℃。たやすく作り出せる温度ではない。
 そればかりか、公園のフェンスや道路のアスファルトも溶け始めている。
「く、スーツで気がつかなかったけど、どうやら、この一帯はものすごい温度になってそうね」
「これで終りのようだな。ヒビレンジャー。さぁ、これをかわせるか!」
 両手を4人の方へ向ける。
 今度は両肩が先ほどよりもずっと大きく膨らみ、まるで溶岩のように赤く染まる。
「ぬぅぅぅぅ!」
「みんな、散って!固まっていてはダメよ」
 琴子の声に、4人はそれぞれ散らばって駆け出す。
「袖龍砲!戦術神風!!」
 総番長は前に突き出した手を、上に掲げ火球を発射する。
 龍が上空へ昇っていくのが見て取れる。
「え?」
 思わず上空を見てしまう4人。
 突如、上空からのすさまじい熱気が4人を襲う。
「ぐぅぅ」
「あぁぁぁ」
「あ、熱いのだ」
「う。くぅ」
 一帯の全ての建物は熱で溶け、川は干上がる。
 地面すら、マグマのように赤く煮え立ち4人が徐々に沈んでいく。
 さすがのスーツを持ってしてもその熱さを防ぐことはできない。
「竜神のパレード!」
 女性の声と共に、すぐ目の前が見えないほどの豪雨が数秒間だけ降り注ぐ。
 周りの温度が急激に下がる。
 地面も再び凝固するが、身体の一部が地面に捕らわれてしまう。
「ぬぅ。何奴!」
 公園のすぐ側にある伊集院大橋。
 その大橋に一本だけ融解を免れた巨大な柱が立っている。
 そして、その上には1人の人物が。
「あなたに教える名前はありません!!」
 そう言って、跳躍する。
 声を聞く限りでは女性というよりまだ少女と言った感じだ。
「雪女のダンス」
 総番長の周りに、半透明な女性が複数表れる。
 その姿はまさに、言葉通りの雪女。そして、その雪女たちが総番長へ抱きつく。
「ぬぉぉぉ!!」
 身体の熱を一気に吸われ、身体のいたるところにひびが入る。
「今です!」
 少女が空中で叫ぶ。
「メイちゃん」
「了解なのだ。サンドアッシュ!」
 光たちを捕らえていた地面を粉砕し、身体が自由になる。
「あなたの技。そっくりそのまま返してあげる!」
 両手を総番長に向ける。
 総番長も同じように、手のひらを光に向け力をためる。
「ぬぅぅぅ」
 手のひらに力を集中し、そこに炎が集まるイメージを。
 総番長の方はひびのせいで、上手く力をためること出来ない。
「ドラゴンフレア!」
「袖龍砲!」
 それぞれの手のひらから放たれた火球は、龍となり空中でぶつかり合う。
 消滅するかと思われた龍だが、光の放った龍が総番長の龍を喰らい、さらに巨大化し総番長を襲う。
「ば、ばかなぁぁぁぁ!!」
 総番長を飲み込んだ龍は、そのまま上昇し完全に見えなくなってしまった。
「はぁはぁ。勝てた」
「凄いじゃない。光。やったわね」
 倒れこむ光を琴子が受け止める。
「さすがですね。光さん」
「え?」
 紫色のスーツの少女が仮面をはずす。
「あ、すみれ。ちゃん?」

「はじめまして。野咲すみれです」
 すみれはメローラに対しにっこりと微笑む。
「野咲。それでは、野咲あやめさんは」
「はい。私のグランマのママです」
 野咲あやめとは100年前の戦士の1人。
 そのあやめを曾祖母に持つのが野咲すみれだった。
「そうでしたか。ならそのブレスレットは」
 すみれの腕には黒いブレスレットが捲かれている。
 以前、校長から光が貰ったものと同じものだ。
「ところで、光と野咲さんって面識があったの?」
「え。あ、うん。ちょっとね」
「2年前に、光さんの彼氏さんと一緒にサーカスを見に来てくれたんです」
 すみれはタケヒロサーカスと言うサーカスの花形。
 その空中ブランコの技術は、15という年とは思えないほど熟練されたものだ。
「あやめさんは?」
 メローラの問いにすみれの表情が暗くなる。
「亡くなりました。先日、タケヒロサーカスが魔物に襲われて。その時にこれを」
 ブレスレットの上に涙が零れ落ちる。
 これは、すみれにとってたった一つの曾祖母の形見だ。
「そう。これで100年前の戦士で残っているのはヒカリさんだけなのね」
「ですけど、どこにいるのでしょうか」
「そうなのだ。話を聞こうにも居場所がわからないのだ」
 神楽ヒカリ。
 先代のヒビキノレッドで、今は無き霊験高き神社の巫女。
 その力で魔王を封じ、自らもいずれ来る魔王復活のために結界を張り眠りについたといわれている。
「知っています。神楽ヒカリさんの居場所」
「え!?すみれちゃん。本当に?」
「えぇ。その結果を張ったのがグレートグランマらしく。その場所を教えてあげて欲しいと」
 すみれはポケットから地図を出す。
 ひびきの市の市街地図だ。
「ここです」
 すみれがある一点を指差す。
「ここって。えぇぇぇぇ!?」
『遊園地!?』
 光、琴子、美帆、メイの声が見事にハモる。
 ひびきの市の遊園地はこの付近一帯では、大きい遊園地だ。
 4人とも何度も遊びに行ったことがある。
「けど、何回も遊びに行ったけどそんな場所なかったよ?」
「もちろん入り口はカモフラージュしてあります」
「場所。知っているのね」
「はい」
 5人は顔を見合わせる。
「じゃあ、明日は。遊園地前に集合よ」




すみれ 「やっと出れたぁ」
光   「お疲れさま。これからよろしくね」
作者  「ホントごめんねぇ」
すみれ 「いいですけど。条件が」
作者  「はいはい。小説書けでしょ。わかってますって」
すみれ 「あのぉ。出来れば、ものすご〜く、甘いのがいいなぁ」
作者  「う。その目はやめなさい。ったく。わかったよ」
メイ  「なんか、前回からノリがおかしいのだ」
美帆  「そうですね。明るくなったと言うか」
作者  「次回から、ちょっとまた暗くなるから、インターバルくらいはね」
光   「あ、そういえばあの総番長を見たときの白雪さんの台詞は?」
琴子  「知ってるとかなんとか」
美帆  「あ。あの。前に読んだ漫画にいたんですよ。似たような主人公が」
ほむら 「あぁ。強化外」
作者  「それ以上はダメ!」
茜   「気にするなら、そんなネタ使わなきゃいいのに」
作者  「うっ」
すみれ 「ひょっとして、この最初に渡されたお経にも意味があるの?なんか急遽やめたらしいけど」
美帆  「霊魂ですからね。元ネタは」
美幸  「レンコン?穴が空いててサクサク」
真帆  「違うって」
   チャンチャン  
 

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