光が姿を消してから、すでに1週間が過ぎていた。
 全くなす術がない。
『異次元に飛ばしちゃったからね』
 アカネの言葉が琴子の頭に何度も繰り返される。
「異次元。以前の私なら、そんな場所ないって思うのだけれど。一体どうすれば光を助け出せるの」
 こうやって頭を抱えていてもしょうがないとはわかっているが、今は何も出来ない。
 ただ、奇跡を信じて待つことだけしか。

「メイさんどうでした?」
「ダメなのだ、見つからないのだ」
 美帆とメイは、メタルユーキの前で出会い店の中に入る。
「あとは、水無月先輩だけなのだ」
「そうですね。見つかっていればいいのですが」
 席につくと、メイが携帯を取り出し電話をかける。
『電源が入っていないか電波の』
 無常にもそのメッセージしか流れてこない。
 メイが溜め息をつき、電話を切る。
 しばらくしてドアが開き、琴子が店に入って来るのが見えた。
「1人。と言うことは」
「えぇ。見つけることができなかったわ」
 うなだれる3人。
「何処に行ってしまったのだ。華澄先生は」
 華澄がいないことに気付いたのは今朝。
 朝食を知らせに美帆が部屋に行った時は既にいなかった。
「散歩とかじゃないですよね」
「いないのがわかってから6時間。そんなにも何処に行くのよ」
 今日は日差しが強く散歩にはあまりむいていない。
 そもそも、靴はベッドの横に置いたままなのだ。どう考えても外に出るのはおかしい。
「光の事態もまだ決着がついてないのに。そのうえ華澄先生まで」
 2人の行方不明者。
 現在のヒビレンジャーは半壊状態だ。
 こんな状況で敵でも現れたら、負けるのは確実だろう。
「光。先生。何処に行ったの?」

 光は宙に浮いていた。
 いや、宙と言うよりも地面が無い。
 暗闇と静寂のみの世界。宇宙空間に似ている場所。
 しかし、決定的に宇宙と違うのは、息は出来るが星は見えない。
「ここ。どこなんだろう」
 一つだけ思い当たる場所。あの魔王の生まれた世界。
 ただ、あの世界は不思議な光で灰色に輝いていたが、この世界には光すら無い。
「でも、そんなわけないよね」
 どれだけこうしていたのかわからない。1日か1ヶ月か。はたまた1時間か。
 彼女の中の時間と言う概念が全く働いていない。
「私。死んじゃうのかな」
 不安はあるのだが恐怖は不思議と無かった。
 いや、最初はあったのかもしれない。
 しかし、徐々に精神や思考といったものが薄らいでいっているようだ。
「あれ?」
 光の目の先に突如、闇が現れる。
 周りよりももっと暗い闇。
「なに。これ?」
 闇は徐々に光のほうに向かって進んでくる。
 いや、全てを飲み込むかのように、闇自身が巨大化しているのだ。
 光は逃げることも出来ずに、その身が闇に飲み込まれてしまった。
「あたたかい」
 闇の中はとても暖かく気持ちのいいものだった。
 光の目がゆっくりと閉じられる。
『眠ってはダメだ』
 頭の中に声が響く。
 男性の声。懐かしくもあり、それでいてはじめて聞くような不思議な感覚の声が。
 光が目を開くと、そこには人の頭ほどの大きさの赤い球体が存在していた。
『ボクの力でここから出してあげる。早く。逃げるんだ』
 光の身体が泡のようなもので包まれる。
「あなたは?」
『ボクはもうだめだよ。完全に捕まってしまったから』
 球体は徐々に闇に飲まれ、その身が小さくなっていく。
「どうして助けてくれるの?見ず知らずの私を」
『キミはこの何も無い世界で、なぜ自分の身体や闇が見えるのかわかるかい?」
 人の目は、物体を反射した光が目に入り込み、それを見ることが出来る。
 この世界には星も太陽もなにも輝くものが無い。
 にもかかわらず、光の目には自分の身体や、この闇。そしてその中の赤い存在を見ることが出来ていた。
『それは、キミ自身が輝いているからだよ。キミならきっとこの闇に打ち勝つ力を手似れることが出来る』
 赤い存在はすでに拳ほどの大きさにまで小さくなっていた。
 もうすぐ、完全に飲まれてしまう。
「私はこの闇を倒してあなたを助けだすわ。だから」
『ありがとう。そのこころが輝きを生み出すんだね。さぁ、他の世界にキミを飛ばすよ』
「名前を教えて」
『ボクの名前はサクシャ』
 光を包んでいた泡がはじけ飛ぶと同時に、その身は巨大な光に包まれた。

 魔王宮の牢獄の一角に爆発音が鳴り響く。
「やっべぇ、やりすぎた」
「けほけほ。お兄ちゃん!だから言ったじゃない」
 爆煙の中から、少年と少女の声が聞こえる。
 声だけを聞くと、まだ若いようにも思える。
「火薬の量、多かったな。やっぱ」
 爆発は壁に巨大な穴を穿っていた。
 しかし、あまりにも巨大なため、今にも壁が崩れそうだ。
「えぇい。過ぎたことは気にしてもしょうがない。あとは頼むぞ」
「うん。了解」
 煙の中から少年が走り出し、少女はそこで通信機で交信を行う。
 少年の青い服の真ん中には大きく『T』の文字。少女のピンク色の服の真ん中には大きく『W』の文字がアップリケされていた。
 牢獄の奥に、少年は急いだ。
「メローラ姫。助けにきました」
 石造りの牢獄の中につかまっているのは、純白のドレスに身を包んだ少女。
 メローラ。それがこの少女の名前だ。
「ありがとうございます。助けに来ていただけると信じていました」
 少年が、鍵を壊すと中からメローラが出てくる。
 こんな場所にいたにも関わらず、彼女のドレスは全く汚れていない。
「メローラ姫。こっちです」
 少年がメローラの手を取り駆け出す。
 爆発で出来た穴の周りには魔物が集まってきている。
 その魔物と2体のロボットが戦っているのが見て取れる。
「あ、お兄ちゃん。遅い!」
 ロボットのうち、ピンク色の方には先ほどの少女が乗っている。
 新体操で使うリボンを、大きくしたもので敵を次々と倒していく。
「悪い悪い。これでも急いだんだけどな」
「申し訳ありません」
 メローラが頭を下げる。
『ライト、メローラ姫。そんなことはどうでもいいからこっちに来るビー』
 もう一方の青い方のロボットから声が発せられる。
 人の声と機会音を合わせた独特な声だ。
「わるわるい。今行く」
 ライトと呼ばれた少年が、青いロボットに向かって駆け出す。
 2体のロボットは楕円形をしており、前部にはコックピットが。後部にはジェットブースターがついている。
 そして、ツインビーたちには車輪や翼は無く、人と同じように手足がある。
 コックピットハッチが開き、ライトが飛び乗る。
「ツインビー、姫も」
『了解だビー』
「ウインビー。脱出路を確保するわよ」
『わかったビー』
 青いロボットはツインビー。ピンク色のロボットはウインビーと言う名前が付けられている。
 ウインビーはツインビーとは異なり、その声は女性の声だ。
 ツインビーがその手にメローラを乗せ、コックピットに運ぶ。
「大丈夫ですか?」
「えぇ」
 メローラがコックピットに乗ったのを確認し、コックピットハッチが閉められた。
「パステル!そっちはどうだ!」
「準備オッケー。いつでもいいよ。お兄ちゃん」
 ウインビーの中の少女が返事をする。
「いっけー!!」
 ツインビーとウインビーのブースターが一気に火を噴き、ものすごいスピードで飛び出す。
 牢獄の穴を抜け、天井を無理矢理破壊して魔王宮から抜け出る。
「ツインビー。次元転換だ」
『了解だビー』
 魔王宮の上空で2体のロボットの姿は薄くなり、そして消える。
「パステル、そっちはどうだ?」
「順調よ。次元路も安定しているし。あ、まって、前方に反応」
 レーダーを見ると確かに反応がある。
「あ。ライトさん。回収を」
 レーダーの指し示す反応のある場所には、光の繭とも言うべき物体が存在していた。
 大きさは人間がすっぽりと入ってしまうほどはあるだろう。
「パステル頼む」
「わかった」
 パステルの乗るウインビーがその手に光の繭を乗せる。
 光の繭はゆっくりと消え、中から少女が現れる。
「この子は?」
「光さんです。まさかこんな場所にいるなんて」
 ウインビーはコックピットハッチを開き、中に光を入れる。
 光は完全に意識を失っており、目を覚ます気配は無い。
「その、お姉さんのことも気になるし、早いところベルスペースに向かおう」
 ツインビーとウインビーは速度を上げ、異空間を抜け出していく。

「ん」
「お目覚めですか?」
 光が目を覚ますと、メローラがすぐ側に立っていた。
 周りを見渡すと、そこは何もない真っ白な空間。
 以前、一度だけ来た事のある空間。
「ベルスペース?」
「えぇ。そうです。気分とか悪くはありませんか?」
 光が身を起こし、メローラの方を見る。
 寝かされていたのは、この空間と同じ色の真っ白なベッド。
「気分は、あまり良くないかな。あなたは?」
「あ、そう言えばこの姿は初めてでしたね。以前お見せしたあの白い生命体。あれが私です」
 まだあまり頭が働いていないのか話の内容が理解できない。
 それから数分。少しずつ頭の中がすっきりしてくると、今度はあまりのことに理解が追いつかない。
「えぇぇ!?あの青白い生命体が?あなた。だって、何処からどう見ても人間と同じだよ?」
「この姿でなければ、あなた方の視覚には映らないので人の前に出る場合はこの姿をとっています」
 自由に姿は変えることが出来るんですよ。と、微笑み、自らの姿を光と同じ姿にする。
「ふふ。そしてこの姿の時はメローラと名乗っています」
 また、純白ドレスの少女の姿に戻る。
 ドレスも全て彼女が作り出しているため、決して汚れることは無いのだ。
「ところで、光さんはどうして、あんな場所に?」
 メローラの質問に今度は、光が答える。
 ミユキに飛ばされ、暗い空間で闇に飲まれるサクシャに出会ったこと。そして、そのサクシャに助けられたことを。
「そうでしたか。多分、光さんは私たちの記憶の欠片へ飛ばされたのです」
「記憶の欠片?過去ってこと?」
「厳密には違いますが、そう思っていただいて結構です。光さん。ひょっとしてサクシャに触れられる機会はありましたか?」
「サクシャに?ってことは魔王だよね。あ」
 光はあの一夜を思い出す。
 和輝が戻ってきたあの一夜を。
「その時に、サクシャの記憶の欠片に触れ、異次元の扉が開いた時にそこへ飛ばされてしまったのです」
 記憶の欠片とは、その生命体、ここではサクシャが過去に起こった事象を記憶しておくための、別な次元のことだ。
 そして、その次元に戻ることで過去で別な行動を起こせるのである。
 簡単に言えば、RPGのセーブデータのようなものだ。
 もちろん、データをロードすれば、今進んでいるデータは消えてしまうわけだが。
「つまり、同じ時間を何度も繰り返すことができるのです。ただ、戻ってしまう場合には、今までいた世界は消えてしまいますが」
 世界をやり直すことは出来る。
 しかし、それは第3者が手を加えた時であって、その世界にいた生命体はすべてその記憶は失われてしまう。
「もう少し、光さんが長く干渉していれば、光さんの元の世界が消えてしまっていたかもしれません」
「ん〜。よくわからないけど、私がそのサクシャの記憶の欠片に戻りたいって思い、それが出来れば、私はそのままの記憶をもってもどれるってこと?」
「えぇ。ただし、その場合はその後にサクシャが関わった世界が全て消え、再構築されていることになりますが」
 光が腕を組んで悩んでしまう。
 なんとなくわかったようでわからない。
「メローラ姫。連れてきました」
 ライトの声と共に、ツインビーとウインビーが突如ベルスペース内に現れる。
 遠くから滑空してきて、光たちの目の前で、自らの足と地面をこすりブレーキをかける。
 ツインビーの履いた靴から黒い煙が上がる。
『ライト。最近、着陸が乱暴だビー』
「仕方ないだろ、重量オーバーなんだから」
 ツインビーのハッチが開き、中から琴子とメイが出てくる。
「光っ!あまり心配かけさせないでよ!」
「琴子。ごめんね」
 ウインビーのハッチが開き、こちらには美帆が乗っている。
「ホント素直じゃないですね」
「なのだ」
 琴子がツインビーから飛び降り、光を抱きしめる。
「けど、無事でよかった。おかえりなさい」
「ただいま。みんな」




ライト 「ちぃーっす」
パステル「こんにちわ。お兄ちゃん、ちゃんと挨拶しないとダメだよ」
メローラ「そうですよね。あ、本日はお招きありがとうございます」(ニコニコ)
作者  「というわけ、ツインビーチームのみなさんです」
みんな 「はじめまして〜」
作者  「お。なんでこんなに。今日、出演予定ない人までいるし」
和輝  「だってさ〜、メローラ姫にパステルちゃんだろ。そりゃ見に来るって」
匠   「そうそう。本物のお姫様にアイドルだもんなぁ」
純   「俺は別に。こいつらに引っ張られて」
光   「あ、私も調べたよ。凄い人気なんだね〜。ツインビーのドラマも見たよ」
ライト 「そいつは光栄だな、こんな離れた日本でも見てくれてるなんて」
パステル「うん。私のCDもね売ってる店とかもあって、ちょっとびっくりしたよ」
真帆  「あの。みなさん、サインください」
匠   「あ、俺も俺も。こんな機会なんてめったに無いし」
メローラ「ライトさんもパステルさんも、大人気ですね」(ニコニコ)
美幸  「何言ってるの〜。メローラ姫も大人気ですよ〜」
美帆  「えぇ。お姫様はアイドルと同じように女の子の憧れですから」
華澄  「私も競演したかったな」
作者  「あれ?華澄さん。その手に持ってるのは?」
華澄  「え!?あ、な、なんでもないですよ」
ライト 「あ〜!それ、ツインビーチームの写真集じゃん。こっちにも売ってたんだ」
匠   「あれでも、それは確か日本では発売されてないよ」
和輝  「ひょっとして、海外から取り寄せたの?華澄さん。結構ミーハーなんだ」
華澄  「うっ」
パステル「でも、ファンが多いことは嬉しいよ。今度はミントやマドカも連れてくるね」
華澄  「あのぉ。出来れば、シーズ君とサリュートちゃんも」
   チャンチャン
 
 

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