「くぅ」
 吹き飛ばされ、木に叩き付けられる琴子。
 その木から、急に枝が伸び琴子を幹に縛り付ける。
「琴子!」
「大丈夫よ」
 琴子の額の青い石が光ると、枝が元の状態に戻る。
「へぇ、私の力を相殺するなんてぇ。凄いじゃない」
 ミユキが間延びした声で言う。
 ただし、言葉とは裏腹に、全然凄いとは思っていないようだが。
「強いのだ。今までとは全然違うのだ」
「これが、美幸ちゃんの力」
 メイと美帆が一歩下がる。
「弱気になってはダメよ」
 華澄は銃を構え、光線を撃ちだす。
 しかし、その光線は鉄人形に阻まれてしまう。
「ファイヤーボム!」
 光の叫びと同時に鉄人形が爆発し溶け出す。
「も〜。すぐやられちゃうなぁ〜」
 ミユキが手を地面につけると、そこから土人形と木人形が生まれる。
 どちらも先ほどの鉄人形より巨大だ。
「はぁ、はぁ。これで7体目だよ」
「ここに火や水がないのが幸いね。2人は力を温存できる」
「そうね。いずれ彼女の力だって尽きるわ。それまで持ちこたえれば」
 2体の後ろにもう1体、今度は鉄人形が現れる。
 その手には巨大な剣と盾。明らかに今までとは違う。
「そんな」
「ミユキは〜、そんなにヨワヨワじゃないよ〜」
 鉄人形から水が染み出し、それが形を作ろうと動き出す。
 木人形が自らの手を高速でこすり合わせると、そこから火が生まれる。
「金生水と木生火」
 琴子がつぶやく。
 5人の見ている前で、水は大量にあふれ出て、火も巨大化し炎となる。そしてそれが実体の無い巨人となった。
「もう無理なのだ」
「これじゃあ、助かりません」
 巨大な人形たちに周りを囲まれてしまう。
「さぁ〜。みんな、私たちの糧になってねぇ」

 真っ黒い犬が光を睨む。
「魔物?」
「そうでしょうね。この場合」
 犬のすぐ側には、ランドセルを背負った子供たちが3人倒れている。
 かすかに胸が動いているのを見る限りではまだ息はある。
 犬。いや魔物が牙を剥き、光に飛び掛らんとする姿勢をとる。
「琴子」
「えぇ」
『転身!』
 2人の身体が光に包まれ、ヒビレンジャーが姿をあらわす。
 魔物はその四肢の筋肉が皮膚をつきやぶり、爪や牙は鋭く長くなる。
「いくわよ」
 まずは琴子が飛び掛る。
 サーベルを手にし、上段から斬りかかる。
 魔物は横に飛びそれを避ける。
「あたれぇぇ!」
 光が放つ銃の光線が魔物の眉間を貫いた。
 魔物はふらふらと動くが、すぐに倒れてしまい絶命する。
「結構あっけなかったわね」
「うん」
 光の心にはまだ不安が残る。
 彼女の勘はまだ戦いが終わっていないことを警告する。
「大丈夫?」
 琴子が変身を解き、子供たちを揺さぶる。
「あっ、琴子!」
 3人の子供のうちの1人が、大きなカッターを手にし琴子に襲い掛かる。
 琴子はそれをさけると、首筋に手刀を叩き込んだ。
「つぅ」
 先ほど揺さぶって起こそうとした子供の手にもカッターが握られていて、その刃が琴子の太ももを貫いている。
 激痛が走るが、ブレスレットのおかげで痛覚が一瞬にして麻痺する。
「大丈夫?」
 琴子が子供たちから離れ、光の元へ戻る。
 カッターを抜くと血が溢れ出るが、これもすぐに止まってしまう。
「まったく、この腕輪。本当に凄いわね」
 3人の子供たちが立ち上がり光たちを見る。
 その目は視点があっておらず、身体の動きも、力の入り方が滅茶苦茶でどこかおかしい。
『ヒビレンジャー』
 子供のうちの1人から老婆のような声が発せられる。
 口は開いたままで、全く動かしていない。
『この先にある山の中腹でおまえたちを待つ。もし来なければ、この3人の子供たちの命は無いぞ』
 それだけ言うと、3人の子供はその場から煙のように消えてしまう。
 場に残る2人。
「とりあえず、3人を呼びましょう」

「この山。不思議な感じがするのだ」
「えぇ、妖精さんが全然いません。こんな場所、早く出たいです」
 5人は山登りを続ける。
 山登りと言っても、山道はしっかりしているし緩やかだ。
 こんな状況でなければピクニック気分だっただろう。
「以前来た時とは雰囲気が違うのは間違いないわね」
 華澄が辺りを確認しながら言う。
 道の脇は森になっているのだが、その中はとてつもなく暗い。
 奥が見えず、今にも何かが襲い掛かってきそうな雰囲気だ。
「ここらへんがちょうど中腹のはずよ」
「じゃあそろそろ出てくるのかな」
「鬼が出るか蛇が出るかってところね」
 5人とも周りを警戒する。
 風が無い状態にもかかわらず木々がざわめく。
 森の鳥が急に飛び立ち、動物たちの声が山中を駆け巡る。
「来るみたいだね」
 5人は顔を見合わせうなずく。
『転身!!』
 5人がヒビレンジャーへと変わる。
「来た!」
 光の目の先。
 道の先から、巨大な木人形が向かってくる。
「ゴーレムですね」
「ということは、寿さんね」
 ゆっくりとだが、一歩一歩近づいてくる。
 ミユキの姿は何処にも見えない。
「白雪先輩。先制攻撃なのだ!」
 美帆の額の石が白色に変化し光る。
「鋼の鞭!」
 木人形を鋼で出来た鞭ががんじがらめにする。
 美帆がそれをひっぱるようなしぐさをすると、一気に鞭が動き、木人形がバラバラに切断される。
「寿さん。彼女には属性は無さそうね。最初に土、その後は水。そして今回の木。何でも使えるのかしら」
 そうなるとやっかいだ。
 常に誰かは力を使わなくてはならない。
「こんにちわ〜。今日は〜ここで〜死んでもらいま〜す」
 今日はいつもの魔女の服装だけではなく、箒に腰掛け宙に浮いている。
 ここまでされると、何処からどう見ても魔女にしか見えない。
「えい」
 ミユキが華澄に指をむけると、先ほどバラバラになった木人形のかけらの一つが勢いよく飛んでいく。
 拳ほどの大きさのそれは、華澄のボディーに直撃しその身体をが吹き飛ばす。
「香澄さん!」
「大丈夫よ。さぁ、いくわよ」
 華澄が立ち上がり銃を構える。
「んふふ。こっちだって、まだまだいくよ〜」
 ミユキの前に、土人形と鉄人形が作成される。
「さぁ、行くよ!覚悟してね!!」

「おぉ」
 5人はそれぞれの力を活用し、5体の人形を撃破した。
「やるねぇ〜。パチパチパチ」
 ミユキが馬鹿にしたかのように、手のひらを大きく開き拍手する。
「はぁはぁ。次はあなたよ」
 琴子がサーベルを突きつける。
 サーベルの先端部の光が、閃光となりミユキに向かって飛んでいく。
 しかし、それは見えない透明の壁により阻まれてしまった。
「ざ〜んねん。だめだよ。そんなんじゃ」
「はぁ。はぁ」
 5人の息が上がっている。
 先ほど新たに現れた、水と火の人形は強かった。
 今まで、力を温存していた華澄とメイもそこで力をかなり使ってしまっている。
「ねぇ」
 光が琴子に語りかける。
「さっき、あの木のゴーレムから火が生まれた時、何か言ってたよね。あれって?」
「木生火。五行の理よ。木が火を生み出すって言うね」
「それ、私たちでも出来るかな」
「そうね。やってみる価値はあるわね」
 琴子が地面に手をつけ集中する。
 森の木々がざわめく。
「あれぇ。まだ抵抗するの?」
 木々のざわめきが激しくなる。
 そして、それがある一点に達した時、辺りの木が一斉に燃え始める。
 木生火。木は燃えて火を作る。
「寿さん。あなたもわかってると思うけど、何もないところから火は作るのは大変なのよ」
 光がミユキの方に一歩踏み出す。
「けど、元からある火を使うとそれはものすごく楽になるの」
 光が手をあげると、その手にまとわりつくように火が集まってくる。
 やがて、森を燃やしていた火が全て集まり、一つの火球となる。
「この森全ての火力。受けてみる?」
「くぅ」
 ミユキの顔に初めて笑顔以外の表情が見られる。
 水蒸気で水の人形を作ろうと試みるが、あまりの熱気にうまくいかない。
「五行では確かに水が火に勝つけど、巨大な火は水を蒸発させることだって出来るんだから」
 火球はさらに小さく圧縮し、野球ボールほどの大きさになる。
 中は炎が渦巻き、さながら小型の太陽と同じような状態だ。
「いくよ。サンフレア」
 火球は光の手を離れ、ミユキの足元に落ちる。
 そこで一気に炎が爆発し、巨大な火柱があがる。
 まさに空を焦す炎。聖書の神の雷と言ったところだろうか。
「きゃぁぁぁぁ」
 ミユキを覆っている障壁が徐々に消えていく。
 この火柱の中に生身ではいってしまったら、数秒と経たずに消滅してしまうだろう。
 そして、ミユキの障壁が全て消え去る。
「はっ!」
 光の声に呼応し、火柱は一瞬にして消え去る。
「くぅ」
「バカ!どうしてそんなことしたのよ。あれだけの炎を消し去るなんて無茶よ」
 光が琴子にもたれかかる。
 かなり息が荒い。
 力を消すというのは、力を作り出すと同じだけの光の力を消耗する。
「だって、あのままじゃ寿さん、死んじゃうでしょ」
 ミユキは元いた位置に倒れている。
 気絶しているのか、全く動かない。
「ピアス。はずしてみて、それからじゃないと」
「そうね。光ちゃん、後は私がやるわ」
 華澄がミユキに近寄る。
 その身を抱きかかえると、かろうじて息があると言った程度だ。
 呼吸は乱れ、身体のいたるところにやけどがある。
「先生。この傷じゃあ」
「かもしれないわね」
「もし、元に戻っても傷が治らなければ苦しむだけなのだ」
 しかし、ヒビレンジャーが勝利を収めるとまわりの建物や生命体が復活する。
 それを信じれば、ミユキの傷も治るはずだ。
「はずすわよ」
 華澄がミユキのピアスをはずす。
 ひびの入っていたピアスは砕けてしまう。
「あ。あぁ。あくぅうぁぁ」
 ミユキの口から苦しみの声がもれる。
「美幸ちゃん!」
「あぅぁぁぅくあぁぁ。ひ、ひか、り」
「え?」
 光のからだが闇に包まれる。
「光!?」
 手を掴んでいたはずの琴子の手に光の手の感触が消える。
 闇の中に手をいれるが、まったく手ごたえは無い。
「ぅあぁぁぁ」
 闇が徐々におさまり、そこには何も残らなかった。
 そして、今度はミユキの身体が足や手の先端から徐々に塵に変わり始める。
「どういうことなのだ!?」
「美幸ちゃん!美幸ちゃん!」
「光ちゃんを何処へ!!」
 ミユキは何も言わないまま、その身体を全てが塵に変わり風に乗って飛んでいってしまう。
 黙ってしまう4人。
「ち、遅かったか」
「まったく、勝手な行動をとるからこうなるんだよ」
 ホムラとアカネの声が4人の頭に響く。
「みんな勘違いしてるから教えておいてあげる。ボクたちのピアス、これは命綱なんだ」
「そ、だからこいつが壊れると今みたいに死に至るわけだ」
「そうそう。あの子が何処に行ったのかはボクたちにもわからないよ。ミユキが適当に異次元に飛ばしちゃったからね」
 それだけを言うと、頭の中から声が消える。
 変身が解けると、燃えてしまった森は元の青々とした森に戻る。
 しかし、光と美幸の姿はどこにもない。
「私たちは間違っていたの」
「光ぃ!!」




美幸  「あぁあ。死んじゃった」
琴子  「最初に犠牲者ね」
美帆  「でも、影なんですよね?」
作者  「予定ではね。けど、どうしようかな。ちょっと別な構成も頭にあって」
美幸  「どうでもいいけど、暇になるよ〜」
作者  「座談会には出てもいいぞ」
美幸  「わぁい」
光   「私はどうなるの?」
茜   「光ちゃんも戦線離脱?やった、これで和輝君はボクのもの」
光   「えぇぇぇ」
作者  「んなわけないだろ」
和輝  「そうそう。俺は誰のものでもないんだし」
光   「え?」
作者  「し〜らないっと。次回から少しずつ過去の話や核心に迫っていくから、楽しみにしてて」
美帆  「3分の1が終了しましたしね」
作者  「そ、急展開になるからみんな、頑張ってくれよ」
  チャンチャン
 
 

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