『てめぇら!エビスを放しやがれ!!』
『ゴエモンさん!私はかまわずに、インパクトキャノンを!』
 巨大ロボットの眼前に立つ、岩の怪物。
 その怪物の頭の部分には空洞があり、鉄格子によって閉じられている。
 その中には可愛らしい少女が、捕らわれていた。
『エビス。俺にはお前が必要なんだ。だから必ず助けてやる』
『ゴエモンさん』

「ん〜。あぁ、面白かったね」
「そうだな。最近のアニメって結構すごいんだな」
 映画館から一組のカップルが出てくる。
 牧和輝と陽ノ下光。
 まだ、友達以上恋人未満兼幼馴染みといった関係だが、何度かこうしてデートを繰り返していた。
「あ、ネコだ」
「首輪してないな、ノラネコか?」
 光が黒い子猫を抱き上げる。
 暴れもせず、なかなか人懐っこい性格のようだ。
「あはは。くすぐったいよ」
 黒猫が光の頬を舐める。
「おなかすいてるのかな?」
「そこのコンビニで牛乳買ってくるよ」
 数分してコンビニから出てくる和輝。
 手には牛乳と紙皿を持っている。
 牛乳を紙皿にあけ、黒猫をその前に座らせる。
「わぁ。凄い勢い。よっぽどおなかすいてたんだね」
「みたいだな」
 あっという間に紙皿が空っぽだ。
「ん〜、和輝君の部屋って確かペット大丈夫だよね?」
「え、あぁ、大丈夫だけど。マジか?」
 光がコクリとうなずく。
「だって、お母さんはアレルギーだから、家じゃ飼えないんだもん」
 腕を組んで悩む。
 黒猫は意味がわかっているのか、ジッと和輝を見上げている。
「ダメ?」
 光の目が潤む。
 昔から何度この手でやられてきたか。
「はぁ。わかったよ」
「わぁぁい」
 結局、負けてしまった。
 和輝は新しい同居猫を抱き上げる。
「名前、何にしようか」
「そうだなぁ。ベルってどうだ?ひび高の伝説の鐘からとってさ」
「うん。そうだね。ベル、これからよろしくね」

 魔王の膝の上では黒猫が丸くなって寝ている。
「ベルか。いまいましい名だ」

「懐かしいな。ベルを和輝君の家に連れて帰ったときの写真かぁ」
 光は一度家に戻ってきていた。
 自分の親と連絡が取れなくなってからは帰って来たくは無かった。
 だから、ずっとメイの屋敷で生活を続けていたのだが。
 なんとか気持ちにも整理がつき、色々と物を持っていくために一度整理に戻ったのだ。
「あ、こっちは体育祭の時の写真。こっちは文化祭の時のかぁ」
 1時間前にアルバムをひっぱりだして、ずっと思い出に浸っている。
 そうして、最期の一枚。
 和輝がベルを抱きかかえ笑っている写真。
「和輝君」
 また涙が溢れてくる。
 最近は少しずつ、泣く日は少なくなった。けど、こうして彼を思い出すと涙が出てしまう。
「会いたいよ」
 写真を抱きしめ、その瞳からは大粒の涙が。
 突然、部屋の中に黒い影が広がる。
「え!?な、なに?」
 影から現れたのは一人の男性。
「和輝君?じゃない、あなたは魔王ね!」
「ん、くぅ」
 苦しむ魔王の身体から、闇のかたまりが抜け出し、空中で消えてなくなる。
「ひ、光」
「かずき、くん?和輝君なの!?」
 光が魔王の装束をまとった和輝を抱き起こす。
「くっ!はぁ、はぁ、はぁ」
 息は荒いが苦しみは消えたようだ。
 徐々にその息も落ち着きを戻す。
「光。会いたかった」
「和輝君。私もよ」
 和輝は光を抱きしめる。
 光も和輝を抱きしめ、その唇に口付けをする。
「ん」
「大丈夫?」
 和輝が起き上がるのを光が支える。
「あぁ、ごめんな」
「ううん。いいよ。でも、どうして?」
「月食と呪霊日。数百年に一度だけ、もっとも魔の力が弱まる日。だから、今日だけは魔王の力が」
 呪霊日。
 13年に1度だけ、全ての魔力、霊力、呪力、神力が弱まると言われている日。
 それが月食の日と交わるのは、実に約300年に1度だけだ。
「じゃあ、今日だけなんだ」
「ごめんな」
「ううん。和輝君は絶対に私が助けてあげるから」
 もう一度、和輝に抱きつく。
 久しぶりの最愛の人の体温。鼓動。感触。
「ねぇ、魔王の時の記憶はあるの?」
「あぁ。うっすらとだけどな」
「じゃあ、赤井さんとかの事も?」
 和輝は初めて、魔王の手下に自分の友達が使われていることを知った。
 その絶望感は大きいが、しかし、彼にはどうすることも出来ない。
「俺って、無力なんだな」
 床に拳を打ち付ける。
「和輝君。大丈夫だよ、みんな私たちが助け出すから」
「光。ごめんな」
 普段は光よりも大人に見える和輝。
 しかし、今のその顔は涙をこらえ、子供のように我慢をしている。
 自分の無力さ、不甲斐なさ。そう言ったものが和輝の心を覆ってしまう。
「ううん。そんなに自分を責めないで」
 光が口付けをする。
 舌を絡め、お互いにお互いを感じあう。
「私には和輝君が必要なの。だから必ず助けてあげる」
 見詰め合う2人。
「和輝君。お願い」
 和輝は光を抱き上げ、ベットへと運ぶ。
 もう一度、濃厚なキス。
 2人の顔が上気する。
「光」
「うん」

 部屋の時計は23時半を回っている。
 光は、和輝の腕枕で寝ている。
「光。もうすぐ俺は魔王に戻ってしまう。これ以上いると迷惑がかかるから」
 和輝はやさしく口付けをする。
 そして、光が起きないようにベットから抜け出る。
 服を身につけ、マントを羽織る。
「ごめんな」
 部屋を出て玄関のドアに手をかける。
 突如、全ての記憶が頭の中に入り込んでくる。
 光の両親を自らの手で殺めてしまった記憶。
「そんな。俺は、俺は」
 ドアを乱暴に開き、深夜の住宅街を駆け回る。
 がむしゃらに、何もわからないくらいに。
「はぁ、はぁ」
 河川敷公園。
 川に自分の顔を映す。
 自分の顔。しかし、あと数分でこの顔は自分のものではなくなる。
 とたんに、恐怖感が彼を襲う。
「光。ごめんな」
 何度、謝っても足りはしない。
 それだけのことをしてしまったのだから。
 徐々に、爪が伸びその色が黒くなる。
「魔王になるのか」
「なるのではない、戻るのだよ」
 自分の口を押さえる。
 声が勝手に出てしまう。
「さぁ、我の身体。返してもらおうか!」
「これは俺の身体だ!!」
 叫ぶが、既に身体の自由は効かない。
 かろうじて指を一本動かせる程度。
「どちらでもよい。時が満ちれば1人になるのだからな」

「和輝君」
 和輝が出て行ってすぐ、目を開く光。
 眠ってはいなかった。
「いっちゃったんだね」
 身体を起こす。
 シーツが滑り落ち、双丘があらわになる。
「私。迷わないよ。和輝君を助け出すためなら。もう」
 和輝に愛を注がれた場所に手を触れる。
「んっ」
 顔が上気し、息が荒くなる。
 指を抜き見てみると、そこには自分の血液と混ざり合う和輝の愛のかけらが。
「今度は私が会いに行くよ。そして、連れ戻してみせる」
 初めて使われたそこを刺激し、朝を待った。

 魔王の魔力枯渇により、魔王がその玉座から離れてしまった。
 それどころか、幹部連中もそこにはおらず、今は完全にもぬけの殻。
 その事実はほぼ全ての魔物に知れ渡ってしまった。
 そして、その玉座を狙う魔物で魔王宮は一種の混乱状態に陥っていた。
《ぐぎゃぁぁ》
『オマエタチヲコロシテオレガオウニナル』
 様々な魔物が入り乱れ、殺しあう。
 その中の一匹が群から抜け出し、玉座の元にたどり着く。
 その身は小さく、ネズミのような魔物だ。その魔物が群に向かい叫びを上げる。
『オレガツギノオウダ』
「誰が王だって?」
 魔物が振向くとそこには魔王の姿が。
 普段とは変わらない姿でそこに座っている。
「おまえたち。全員死刑」
 魔王が指をならすと、魔物たちはすさまじい力で空間の一点に向かって飛んでいく。
 肉や骨がつぶれる音、そして魔物の叫び声が王の間に轟く。
 いつのまにか魔王の左手にはワイングラスが握られていた。
 肉塊がゆっくりと、魔王の上に移動してくる。
 そこでさらに圧縮された肉塊から、真っ赤な鮮血が滴り、グラスに注がれる。
「下級魔にしては、いい色だ」
 それを口に運び、のどを鳴らす。
「しかし、味はこの程度か」
 グラスを投げ捨てる。それは、地面で四散し、そのかけらがきらきらと蝋燭の灯りに反射する。
 中に入っていた液体は、ゆっくりと地面に染み込み、消える。
「陽ノ下光か。あやつの血はさぞかし美味かろう」
 しかし、あることを思い出す。
「オトメでなくなってしまったのは、惜しいことだがな」
「処女の生き血は美味しいからね。私も飲みたかったわ。あの娘の血を」
 玉座の影から道化師の面だけが姿をあらわす。
「マホか」
「さがしている少女。見つけてきたよ」
 面がゆっくりと横へスライドし、少女の顔が現れる。
 そして、徐々にその身体も魔王の目に映る。
「ただ、入り口に結界があって近寄れなかった」
「そうか。だろうとは思っていたが。しかし、見つけただけで十分だ」
 徐々に現れる体。
 その身体は何物にも包まれることなく、生まれたままの姿。
「ご褒美、くれる?」
「よかろう、こちらへ来い」




琴子  「言葉が出ないわ」
メイ  「どうりで、今日はスタッフが少ないと思ったのだ」
光   「あぁぁ。なんで2人ともいるのよ!」
和輝  「う、見られたのか」
琴子  「もちろんよ」
真帆  「くぅ。恥ずかしいよぉ。ご、ご、ご褒美って」
光   「私だって普段はあんなこと、しないし」
メイ  「2人とも顔が真っ赤なのだ」
琴子  「見ているこちらも赤面しそうだけどね」
作者  「ここしばらく、光が泣いてばかりだったからね」
和輝  「にしても、これは。俺はてっきりデート程度かと」
作者  「その程度ですむわけ無いだろ」
真帆  「このこと、絶対に他の人には内緒だよ。特にお姉ちゃんには」
作者  「と言っても、どうせ見られるのは時間の問題だと思うのだが」
真帆  「それまでには対策を考える」
メイ  「メイにこんな恥ずかしいシーンが無くてよかったのだ」
作者  「さて、どうかな」
メイ  「え?」
   チャンチャン
 
 

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