華澄があの戦いで倒れて24時間が過ぎた。
 熱は一向にひかず、息も荒い。
「はぁ。はぁ」
「香澄さん」
 光が華澄の手を握る。
 あの時からずっとこうして側にいるのだ。
「光。あなたも一度休みなさい。でないとあなたまで倒れてしまうわ」
 琴子が入ってくる。
 交代で華澄を看病すると決めたのだが、一向に光は手を離さない。
「うん。けど」
「わがままを言ってもダメよ。私は先生やあの男みたく優しくは無いわよ」
「わかった」
 光がゆっくりと手を離し立ち上がる。
 代わりに琴子が椅子に座り、冷やしたタオルを華澄の額に乗せる。
「あと、お願いね」
 光が部屋から出て行く。
「ふぅ。あの調子じゃ、横になっても寝ないわね」

 琴子の予想通り、光はベッドに入っても全く眠ることが出来なかった。
「私たち、このままみんなを倒さなきゃならないのかな。赤井さんや一文字さんたちを」
 倒すとはもちろん、死を意味する。
 あまり面識は無いとはいえ、同じ年の女の子。簡単には割り切れない。
 和輝を助け出すということは、彼女たちを殺さなくてはならないのだ。
「無理だよ。あたしには。和輝君、どうすればいいの」
 華澄の死を間近に感じ取り、その思いが胸を締め付ける。
 自然と涙が溢れる。
 18歳の少女にはこの選択は酷というものだろう。
 しばらくそんなことを考えていると、廊下が少し騒がしい。
「光!起きてる?」
 ドアをノックする音。いや、ノックと言うよりももっと乱暴だ。
 聞こえる声は琴子の声。彼女が珍しく声を張り上げている。
「あ、うん。起きてるよ。どうしたの?」
 ドアを開き廊下にでる。
 そこにはめったに見せることの無い笑みを浮かべた琴子が立っている。
「先生が目を覚ましたのよ。熱も下がり始めてるし。きっともう大丈夫よ」
 光は走り出した。
 華澄が寝かされている部屋に向かって。
「香澄さん!」
「あ、光ちゃん」
 華澄は力なく応える。
 まだ体力は回復して無いようだ。
「よかった」
 光の目に涙が。しかし、その涙は昨日の暗い涙とは違う。
「ありがとう。水無月さんに聞いたわ。ずっと一緒にいてくれたんでしょ?」
「私にはそれくらいしか出来ないから」
 光が華澄の手を握る。
 華澄はそれに応えるように握り返し、光に微笑みかける。
 昔のままのあの優しい微笑み。
「先生、起きたのか!?」
「大丈夫ですか?」
 メイと美帆もその場にやってくる。
 その顔には笑みが。華澄の目覚めを心から喜んでいる。
「えぇ。心配かけてごめんなさい」
「でも、よかったのだ。蛇の毒に勝つなんて先生はすごいのだ」
「そうですね。けど、それもヒビレンジャーの力かもしれませんよ」
 光はブレスレットを見る。
 確かに、このブレスレットを腕に巻いているだけで、変身しなくても身体能力が上がっている。
 それを考えると、ある程度の解毒能力があってもおかしくは無い。
「本当に不思議なブレスレットなのだ」
 つられ、メイや美帆もブレスレットに目を落とす。
 これだけ起きていても、それほど疲れていないのもこのブレスレットのおかげなのかもしれない。
「この戦いが終わったら、このブレスレットを研究してみるのだ。ひょっとしたら科学に革新をもたらすことが出来るのだ」
「そういう話は後にして。今は、先生に栄養とって休んでもらわないと」
 琴子がお盆を運んでくる。
 その上には小さな土鍋がのっており、中には美味しそうな粥が湯気を立てている。
「台所を使わせてもらったわよ」
「うわぁぁ。さすが琴子」
「先生。自分で食べれます?」
「えぇ、それくらいなら大丈夫よ」

「アカネ。次の手駒はどうなっている?」
「もうすぐ調整が完了するよ」
 魔王の足元に全裸で横たわる4人の少女。
「そうか、マホとミユキの方はどうだ?」
「申し訳ありません」
「なかなか見つからないの〜」
 2人は、懇願するように魔王の足に絡みつく。
「なかなか強い結界のようだな。では、今しばらく時間をくれてやろう」
「アタシの方はいい適格者を見つけたぜ。カズキ様の影としての」
「ほぅ。なるほど、たしかにこの2人ならいい働きをしてくれるだろう」
 ホムラの腕をとり立たせる。
「褒美をくれてやらないとな」
 その手が、ゆっくりとホムラの火照った身体をなぞる。

 5人はメイの私室でコンピュータのモニターの前に並んでいた。
「これを見て欲しいのだ」
 メイがキーボードを操作すると、そこには敵として出てきた4人の少女が映し出される。
 先日の屋敷での戦いの時の映像だ。
「これはメイの家のセキュリティカメラの映像なのだ」
「この前の戦いですね。それで、この映像がどうしたのですか?」
 再度キーボードを操作する。
 今度は、4人の顔。ちょうど耳元がアップで映し出される。
「あれ。これってピアス?」
 4人の左耳には、真っ赤な宝石だけのシンプルなピアスがつけられている。
「修学旅行とかの以前の写真を見てみたけど、4人はピアスなんてしてなかったのだ」
「つまり、敵になってからピアスをつけたってことかしら」
「もしくは、つけられたって可能性もあるわよ」
 真っ赤なピアス。
 あまりにも紅く、少し不自然な感じがする。
「それって、ピアスをはずすことが出来たら、みんな元に戻るのかな?」
「どうでしょう。それならば良いのですが」
 今はまだ実証が出来ない。
 しかし、光の中では友を倒さなくてもよいであろう可能性に、心が少し軽くなる。
「断定は出来ないけど、もしそうならこれは大発見よ。なんとしてでも、次に彼女たちが現れた時には」
 華澄の言葉に4人はうなづく。
 気絶もしくは無力化し、ピアスを抜き取る。
 それがどういう結果になるかはわからないが、今はそれを信じるしかなかった。
「あと、もう一つみんなに知っておいて欲しいことがあるの」
 琴子とメイが神妙な面持ちになる。
「実は、あの魔王たちの手によって多くの犠牲者が出ているわ」
「そんな。だって、前の戦いの時、死んだ人は生き返ったじゃない」
 モニターの画面に別な情報が表示される。
 そこには数十人にも及ぶ名前。
「あれは多分、ヒビレンジャーの力のようなのだ。だから、メイたちがいない場所で死んだ人は」
「ま、まさか。この名前は」
「既にわかっている犠牲者よ」
 名前の中には伊集院の姓を持つものも数人、表示されている。
「そんな!?」
 急に美帆が口を手でふさぐ。
 その目の先。名前の後半には、白雪の姓をもつ2人の男女の名前。
「お父さん、お母さん」
 その場に泣き崩れる。
 メイも今は気丈に振舞って入るが、きっと最初は同じように泣いたのであろう。
 その目は充血し、かすかに頬に泣いた跡が残っている。
「実際にはこれ以上の犠牲者が出ているはずよ」
 琴子が光から目をそらしうつむく。
「まさか」
 多少、躊躇したが琴子がゆっくりと口を開く。
「私と光。それに華澄先生の家に、何度か電話をしましたが。誰もでませんでした」
 光と華澄の顔が青くなっていく。
 琴子も顔を伏せたまま、あげようとしない。
 沈黙が部屋の中を支配する。
『この程度で精神を崩すとは。所詮は小娘か』
 突然、部屋のスピーカーから男性の声が発せられる。
「和輝君!?」
 声の主は全員聞いたことがある。
 間違いなく和輝。いや、魔王の声だ。
『その程度では、我々メモラーが敗れる事はなさそうだな』
 突如スピーカーが黒い煙をあげ、ゆっくりと燃え始める。
『それならそれで、俺を楽しませてくれよ』
 炎は近くのベッドやタンスなどに燃え移る。
 その勢いは増し、もうすぐ部屋が炎で包まれようとしていた。
「早く逃げて!!」
 華澄の声で4人は我に帰り、部屋の外に出る。
 不思議なことにメイの部屋以外には火は広がっていない。
 5人が見ている前で部屋がゆっくりと黒く姿を変えていく。
「部屋だけが燃えちゃったね」
「気にしなくていいのだ。さっきのデータは他の部屋にバックアップとってあるのだ」
「え、でも思い出のものとかあったんじゃ」
「いいのだ。もう」
 メイが1人で廊下を歩いていく。
 美帆はまだ泣いたまま。華澄も光も肩を落としている。
 この場で唯一、琴子だけがその場で平静を保っていた。

「水無月さん」
「先生」
 琴子が後ろを振向くとそこには華澄が立っていた。
「眠れないの?」
「はい。それで月が見たくて」
 場所は中庭。
 そらには綺麗な満月が見てとれる。
「いいのよ。無理しなくて」
 華澄が琴子のとなりに腰をおろす。
 琴子の長い髪をゆっくりと撫ぜおろす。
「あんなことがあったんですもの、泣いたって誰もせめないわ」
 閉じられたその目から涙がこぼれ落ちる。
 いつも気丈に振舞うメイと琴子。
 2人とも人のいないところで、こうして涙を流す。
「すみません。先生」
「ううん。私、一番の年長なのに倒れちゃって。みんなに迷惑かけちゃったし。こんな時くらい、頼って」
 琴子を抱き寄せる。
 その肩が小刻みに震えている。
 恐怖と悲壮が今、琴子を襲ってきたのだ。
「私たちみたいな悲しみをこれ以上作らないためにも、絶対に和輝君を取り戻さないと」
 琴子が胸の中で小さくうなづく。
 ドクン!
 華澄の目に映る月が一瞬、真っ赤に染まる。
 まるで、鮮血のように。
「先生?」
「え?あ、あぁ。ごめんなさい。大丈夫よ」
 いつの間にか琴子が顔を上げている。
 今は、月はいつものように金色に輝いている。
 不吉な前兆。そして不安。
 それだけが今の彼女の心を支配していた。

 翌日から5人は行動に出た。
 魔王の居場所がわからない以上は、こちらから攻め入ることはできない。
「なら、街の人だけは助けようよ。これ以上、犠牲者をださないように」
 光の提案で、みんなで街に出る。
 街はいつもどおり活気に溢れている。
「あんなに犠牲者が出たのになぜなのだ?」
 街で聞いてみてわかった。答えはいたってシンプルなものだ。
 みんな忘れているのだ。死んだ人間を。
「そんなの悲しいです。死んでしまった人は、もう誰の心にも残っていないなんて」



琴子  「暗い」
メイ  「暗すぎなのだ」
美帆  「何を考えているのでしょうか?私ならもっと明るい話に」
作者  「すまん。どうもどこかでネジが一本はずれたようだ」
和輝  「最初はギャグにする予定だったんだろ?」
茜   「暗いのも嫌だけど、なんでボクたち裸なの」
美幸  「私、和輝君に全部みられちゃったぁ〜」
ほむら 「どうでもいいけど、アタシなんてもう、ギリギリじゃねぇのか?」
真帆  「せめて、下着姿とかなかったのかしら」
作者  「読者サービス?」
琴子  「光。私、この作品に出るの嫌になってきたわ」
光   「同感。勝手に暴れちゃおうかな」
作者  「勘弁してくれ。ここまできたらこの路線で行かないと」
華澄  「だったら、もう少し私たちにも配慮を」
作者  「イヤ。ほら、俺ってSだし」
光   「うぅ、いじめられそう」
メイ  「メモラーって名前は安易なのだ」
茜   「みんなでときメモやってたらギャグだよね」
作者  「元々はギャグの予定だったから、名前は結構適当に付けてしまったんだよね。失敗したなぁ」
琴子  「そういうのは、本末転倒っていうのよ」
   チャンチャン
 
 

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