「その程度じゃ、ボクの相手はつとまらないよ」
どこからともなく、女の声がする。
それと同時に樹木がメイに向かってその根や枝を伸ばす。
「メイ様!」
「咲之進」
メイと咲之進が樹木から逃げていく。
「メイ様。お下がりください」
咲之進がメイを自らの背にかばい、迫り来る樹木に向かって銃を発砲する。
伊集院家の屋敷内で悲鳴や銃声が飛び交う。
「く、これはきりがありませんね」
木は銃などものともせずに2人に向かって伸びてくる。
「メイがやるのだ!」
メイがブレスレットを身につけ、前に出る。
「いけませんメイ様。これは遊びではないのですよ」
「大丈夫なのだ。離すのだ!!」
咲之進が壁を叩くと、その壁が開き奥に部屋が現れる。
そして、メイをそこへ押し入れる。
「ここからお逃げください」
隠し部屋。ここから地下へ抜ければ安全な場所に出ることがきる。
屋敷には数多くのこうした隠し部屋があるが、それは一部の内部の者しか知らされていない。
部外者は絶対に発見できないであろう。
「咲之進。メイも戦うのだ!お父様やお母様のように!!」
「メイ様。必ず生き延びてください」
隠し部屋の扉が閉じられる。
「咲之進!咲之進!!」
部屋の扉は一度閉まると、破壊しない限り二度と開くことは無い。
「伊集院の屋敷の制圧は完了したよ」
少年のような外見の少女が魔王の前に膝をつく。
「ご苦労だったな」
「ただ、ターゲットには逃げられちゃったけど」
「かまわんよ。楽しみが減るからな」
膝に乗せた黒猫の背を撫ぜる。
「もう1人のアイツは?」
「遊び好きだからな。困った奴だ」
魔王の顔には台詞とはうらはらに笑みが浮かぶ。
「ボクも行ってもいい?」
「もちろんだ。行って、一緒に遊んでくるといい」
白雪美帆が眠い目をこすりながら、自室から出てくる。
「ふわぁ。おはようございます。あれ?」
普段であれば台所で母親が朝ご飯をつくり、父親が食卓で新聞を読んでいる時間のはず。
「おかしいですね」
食卓には朝食は用意されている。
どこかへ出掛けたのだろうか。
「おはよう。姉さん」
「真帆ちゃん、おはよう」
双子の妹の真帆がやってくる。
声、外見ともにほぼ区別がつかない一卵性の双子だ。
ただし、妹の方が胸がでかい。
「お母さんとお父さんしりませんか?」
「今朝、どこかに出掛けていったよ」
「そうですか」
2人でトーストをかじる。
2人は食事の食べ方や食べる順番。トーストにつけるジャムの好みまで一緒だ。
「今日はトマトジュース飲むの?いつもは牛乳なのに」
美帆のコップには牛乳が入っているが、真帆のコップには赤黒いトマトジュース。
空気にふれていたせいか、ちょっと黒すぎるような色だ。
「たまには趣向を変えてね」
真帆がコップの中身を一気に飲み干す。
「じゃあ、私も遊びに行ってくるから」
そう言うとお皿を流し台におき、玄関の方へ行く。
「いってらっしゃい。気を付けてね」
「うん。姉さんもね」
真帆がジャケットを羽織り外へ出て行く。
両親が出掛けていて、真帆が珍しくトマトジュースを飲んでいたこと以外はいたって普通の白雪家の朝。
「あ、あそこだ」
メタルユーキに来た、光と琴子は先に来ていた華澄を見つける。
「どうしたんですか?」
「あら?伊集院さんじゃない」
華澄の隣にはメイが、真っ赤な目をして座っている。
明らかに泣きはらした後の目だ。
「メイちゃん」
華澄がメイの頭を優しく撫ぜる。
光と琴子が2人の向かいの席に座る。
「どうも、伊集院のお屋敷が誰かに襲われたらしいの」
「誰か?どこかの組織とかじゃなくてですか?」
伊集院の屋敷と言えば、その広さは東京ドーム数十個分。そのうえ、私設軍まであるのだ。
そこを襲おうなんて考えたら、間違いなく訓練された巨大組織でなければ太刀打ちできない。
「敵は1人だったのだ。けど、植物がメイたちを襲ってきたのだ」
「それって、ひょっとして」
華澄がうなずく。
「魔王。けど、聞こえてきた声は女らしいからその配下みたいね」
伊集院家の資産や軍事力、権力はすさまじいものがある。
そこを制圧すれば、世界の5分の1は握ってしまったと言っても大げさではない。
その上、伊集院と言えばヒビレンジャーのメイも住んでいる。うまく倒すことが出来れば一石二鳥だ。
「光ちゃん。私も戦うわ。和輝君のこともそうだし、これ以上、不幸な人を増やさないために」
「メイも戦うのだ。お父様とお母様が、つかまってしまったのだ。だから」
華澄とメイがその腕にブレスレットを身につける。
あとは、白雪美帆だけだ。
「美帆さんにも来て欲しいな」
「大丈夫よ光ちゃん。ちゃんと連絡したから。遅れるけど必ず行くって」
光の顔が笑顔であふれる。
「じゃあ、5人。そろうんだね」
「敵が来る以上、降りかかる火の粉は振り払わないと」
ちょうどその時、出入り口のドアが開き、美帆がやってくる。
「遅れてしまってすみません」
「ううん。来てくれただけで嬉しいよ」
光が立ち上がり、美帆の手を取る。
「光さん。みなさん。これからよろしくおねがいします」
「うん。こちらこそ」
「ホムラ、ミユキ」
「はっ」
魔王の玉座の影から2人の少女が現れる。
「ミユキは新米の手伝いだ」
「りょ〜かい」
ミユキが現れた時のように、影に消える。
ミユキが完全にいなくなったのを確認し、ホムラの耳元で魔王が囁く。
「ホムラ。お前も手伝いにいって欲しいのだが、それ以外にもお前にはやってもらうことがある」
「ん〜。ものすごい警備だよ」
「当たり前なのだ。屋敷の警備は常に1000人なのだ」
「1000人!?」
華澄が驚きのあまり椅子から落ちそうになってしまった。
今は、伊集院の屋敷のそばのビルの展望レストラン。
双眼鏡で、伊集院の屋敷の偵察を行うためにやってきている。
「そんなに多いと私も作戦を立てれませんねぇ」
「あ!」
双眼鏡を覗いていた光が声をあげる。
「あれって、一文字さんだ」
「一文字って茜さんですか?」
光と琴子はクラスの隣のクラスにいる、一文字茜。
同じクラスの美帆は、あまり話はしないが顔と名前くらいは覚えている。
「まさか、一文字さんが魔王の?」
「けど光はよく知ってたわね。その一文字さんって人の顔」
「和輝君と仲良かったから」
光の顔がふくれっ面になる。
和輝が以前、茜ちゃんは明るくて家庭的で料理がうまい。って言っていたのを思い出す。
「私だって料理うまくなったのに」
「こらこら、物思いにふけってないで偵察よ」
華澄が双眼鏡を取り上げる。
そこには屋敷のほか、池や林、それに花畑など到底、個人の家とは思えないようなつくりだ。
「やっぱり、地下から行くしかないですかねぇ?」
「けど、地下からは扉は開かないのだ」
「変身すれば無理矢理でも開けれます。きっとですけど」
メイが逃げてきた地下道を通れば確かに、伊集院家に忍び込める。
ただし、その出入り口を壊してしまえば、敵にも地下道が見つかる可能性が出てきてしまう。
「それしかないわね。じゃあ、膳は急げ。行くわよ」
琴子の言葉に4人はうなずく。
「ここを通れば、セキュリティルームなのだ。そこを取り返せば少しは楽になるのだ」
地下道はきちんと整備されており、明かりがちゃんと点いている。
ただ、道は何度も交差したり分岐したりしていて、メイの持っているマップ無しでは思うように進めないだろう。
歩いていくと壁にぶち当たった。
「ここの奥ですね」
「なら。みんな行くよ」
『転身!!』
4人の身体ががスーツに包まれる。
しかし、美帆だけは変身を行っていない。
「どうしたの?」
「私はもう少し様子を見てからにします。それでは、どうぞ開けてください」
そう言うと一歩後ろに下がる。
メイが手の平を壁に当てる。
「サンドアッシュ」
額の黄色い石が光りを放つ。
壁が細かい砂粒に代わり、一瞬にして崩れ落ちた。
砂煙の中を何かがメイに向かい飛んでくる。
「待っていたよ」
メイのボディにヒットしたそれはメイを後方に吹き飛ばす。
砂煙から出ている腕。
煙が晴れるとそこには、動きやすいように細部が開いた形の甲冑に身を包む少女が立っている。
「一文字さん!?」
光が叫ぶ。
「ボクの名前は魔幻闘将アカネだよ。一文字なんて名前、もう捨てちゃった」
腕を引き、構えをとる。
半身を引いた中国拳法の構えだ。
「ここは私と光が。先生は伊集院さんを」
「わかったわ」
琴子が一歩前にでて、そのすぐ横に光がつく。
「伊集院さんの話だと彼女は私と同じように木の属性。なら、金剋木で白雪さんの力が」
「そっか、メイちゃんが土だったから金は白雪さんなんだ」
金(属)には植物は生えることはないということから、木の力には金が有効だ。
2人はアカネに隙を与えないようにしながら目だけで後ろを確認する。
しかし、そこには華澄とメイだけ。
「先生。白雪さんは?」
「え?そういえば、私が後ろに向いた時にはすでにいなかったわ」
「どうやら、ボクの弱点はいないみたいだね」
アカネが2人につめよる。
ゆっくりとだが威圧感のある一歩。
「行くよ」
アカネが身をかがめ、2人の足元に蹴りをいれる。
琴子は後ろに飛び、光は前に飛ぶ。
うまく、アカネの横を通り抜け、光はアカネのほうを向く。
「挟み撃ちだよ。これで!」
光はと琴子は腰につけたサーベルを抜く。その刀身は実体のない光の剣だ。
「行くわよ。光、あわせなさい!純直伝、ツバメ返し!!」
琴子と光のサーベルの一閃がアカネに伸びる。
「2対1程度でボクには勝てないよ」
剣筋の弱い光の方をターゲットと定めアカネが拳を放つ。
拳がその顔を捉えようかという時に、二筋の光線がアカネの右足と左肩を貫く。
そして、動きが止まったアカネに光と琴子の剣が食い込んだ。
「4対1よ」
「さっきの借りは返したのだ」
アカネの身体が崩れ落ちる。
しかし、その身体は地面に倒れると同時に人の形をした木に変わってしまった。
『まさか、ボクの人形がやられるなんて思って無かったよ。外の池。そこで待ってるよ』
4人の頭の中にアカネの声が直接聞こえる。
それと同時に、桃色の髪の少女がアカネに捕らえられているのも。
「美帆さん!?」
「く。人質なんて卑怯よ」
『卑怯?集団でボク1人を倒そうとしている君たちに言われたくないよ。それじゃあ、待っているよ』
アカネの声も美帆の姿も頭の中から消える。
「池はこのすぐそばなのだ」
「急ぎましょう」
メイを先頭に4人は美帆を助けるため、駆け出した。
光 「美帆さんつかまっちゃった」
琴子 「まったく、卑劣よね」
茜 「でもさ、さっきボクが言ったけど、戦隊モノってある意味いじめだよね」
メイ 「うむ。多対1だからそうなってしまうのだ」
和輝 「けどよ、多分1対1なら絶対に負けるぞ?正義の味方が」
琴子 「軟弱ね」
光 「まぁまぁ。私たちも同じようなものだし」
ほむら 「あのよ〜。ひょっとしてアタシの出番ってこれだけか?」
美幸 「私も少ないよ〜」
作者 「まだ顔見せ段階なんだから、順番順番」
茜 「そうそう、第1話と第2話で2人はでたからね」
光 「そういえば、学校ってどうなってるの?私や琴子は卒業したけど」
作者 「ん〜。土曜日ってことで」
琴子 「いいかげんなご都合主義ね」
作者 「ごもっとも」
チャンチャン
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