春風がそよぐ日。
 牧和輝は幼馴染みである陽ノ下光を中庭の伝説の鐘の下へ連れてきた。
「和輝君」
「光。俺は今日の高校卒業と同時に、もう一つ卒業したいんだ」
 光は何も言わない。
 ゆっくりと口を開く和輝の言葉を待っている。
「幼馴染みと言う関係を。お前が好きだ。俺の彼女になってくれ」
 顔を赤らめうなずく光。
「光」
「和輝君」
 その時、鳴らないはずの伝説の鐘が高らかに鳴り響いた。
 祝福の鐘の音。
 伝説の祝福を受けたカップルがここに誕生した瞬間だった。
 しかし・・・
 先ほどまでは雲一つない快晴だったはずなのに、いつの間にか暗雲がその空を埋め尽くしている。
 そして、轟音と共に伝説の鐘に落雷が直撃する。
 伝説の鐘は、一瞬にして瓦礫と化し、地に落ちる。
「なに?か、和輝君」
 光は想い人に抱きつく。
 雷が苦手ではあるが、純粋にこの状況が怖かった。なにか、恐ろしいことが起こる前触れのようで。
「くっくっく」
「え?」
 光が、含み笑う和輝の顔を見上げる。
 和輝は空を見上げ、笑みを浮かべている。
「くははは。ふぁはははは。ついに!ついに復活したぞ!!」
 高笑いが聞こえる。
 光の目の前。先ほど告白してくれた相手が今はこの雷の中、高笑いをあげている。
「和輝君?」
「我が名は魔王サクシャ。いや、今は魔王カズキと名乗った方がよいか」
 魔王と名乗った和輝は校舎の屋上まで飛び上がる。
「光と名乗る女よ。あの、我を封じたものと同じ名を持つ女よ。まずは、貴様を血祭りに上げてくれる」
 和輝が手を掲げると、それに呼応するように落雷が光の周囲の木々を燃やす。
 それこそ、雨のように無数の落雷が。
 そして落雷は徐々に光の近くに落ちてくる。
「チェックメイトだ」
「待てい!!」
 何処からともなく声がする。
 それと同時に雷の乱打が止む。
「何ヤツ!」
「ワシの名は爆裂山!!校長とは仮の姿。本当の姿は、ヒビレンジャー。ヒビキノブラウンじゃ!!」
「カズミか。100年ぶりか。その老いぼれた身体で何処まで出来るか試してやろう!!」
「もう一度、地の底で眠るがいい!!転身!!!」
 爆裂山が腕を掲げると、その腕に付けられた黒いブレスレットが光を放つ。
 そして、その光の中から現れたのは、全身、茶色いスーツに身を包む少々体格のいい人物。
 その状況や体格から爆裂山であることは間違いないだろう。
「ゆくぞ!」
 爆裂山が遥か上空の宙に舞う。
 人間の限界を大きく越えた脚力だ。
「ふん」
 和輝が腕を前方で大きく回すと、そこに、幾つもの火球が生まれた。
 その火球が意識をもっているかのように、爆裂山に襲い掛かる。
「校長先生!!」
 光が叫び声を上げる。
 火球をものともせず、爆裂山が和輝目掛けて蹴りを放つ。
「こしゃくな」
 和輝が手を掲げると、爆裂山と和輝の間に、見えない壁が生まれる。
「ぬぅぅぅ」
 爆裂山がその壁に衝突し、見えない力で弾き飛ばされる。
「どうやら、年には勝てないようだな。これで終いだ」
 瞬時に爆裂山の後ろに回りこむ和輝。その手には一振りの剣が握られている。
 その剣は爆裂山の左胸につきささっており、鮮血が流れ出ている。
「光。次は貴様の番だ」
 爆裂山を片腕で振り回し、光のすぐ横に投げ捨てる。
「う。うそ。そ、そんな」
 そこには横たわる爆裂山。
 外れた仮面の下の顔は、血で真っ赤に染まっていた。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
 光の叫びに呼応するように、破壊された伝説の鐘から閃光が発せられる。
 その閃光は暗雲を貫き、太陽が姿をみせる。
「く、その力は。まだ、不完全な俺には仕留めるのは無理か」
「あ。和輝君」
 和輝がマントを翻すと、その身が空に消える。
「くぅぅ」
「動いちゃダメです!」
 必死の形相で身を起こそうとする爆裂山を光が制止する。
「陽ノ下君。これを」
 体中から血を流し、自らがつけていたブレスレットをはずす。
「校長先生!」
「私はもうだめだ。100年と言う歳月は長すぎたようじゃ」
 爆裂山の口から大量の血が吹き出る。
 その手にあるブレスレットを光に突き出す。
「これは」
「ヒビレンジャーへ変身する為のものじゃ。これでヤツを」
 光がブレスレットを受け取る。
 ブレスレットが光に反応するように、まばゆい光が発せられる。
 そして、光が収まった後には、真紅のボディースーツに身を包んだ光が立っていた。
「おぉ。やはり、君は。ひかりよ、お前の望みは叶えられたぞ」
 そう言うと、爆裂山の身体から力が抜ける。
 そして、その身体は、細かく塵と変わり、風に乗りその場から跡形も無く消えてしまった。

「和輝君」
 光は自分の部屋に帰ってきていた。電気もつけず、制服のままでベッドの上に座る。
 そして、今日起きた出来事を思い出す。
「どう、して」
 大粒の涙がこぼれ、握られた黒いブレスレットを濡らしていく。
 告白してくれた和輝。
 魔王と名乗り、校長を殺した和輝。
 2人の和輝が頭の中でぐるぐると回りつづける。
「私、どうすればいいの?誰か、おしえて」
 突如ブレスレットが光を放った。
 その光の中に、美しい女性の姿が映し出される。
 女性は巫女装束に身を包み、宙に浮く不思議な髪飾りを身に付けていた。
『仲間を見つけなさい』
「え?」
『貴方には仲間が必要です。あの100年前のように』
 女性は姿と同じく、美しい声で語りかける。
『魔王を封印すれば、きっと貴方の想い人は戻ってきます。だから、心を強く』
 それだけを言うと、女性の姿は消え、光が徐々に収まってく。
「和輝君を元に戻せるの?」
 光の心の中に希望という灯りがあふれだす。
 その瞳は、先ほどまでとは変わり強い意志を持った瞳になっていた。
「待っていて。仲間を見つけて必ず、助けるから」

 蝋燭の火が揺れる。
 その明かりの下、全裸の少女が2人、横たわっている。
「ホムラ。そしてミユキよ。目覚めよ」
 明かりの影になる位置にいる男が呼びかける。
 2人の少女が身体を起こす。
 その顔は、ひびきの高校で生徒会長を勤めていた少女。もう1人は何事にもに笑顔を絶やさぬ少女。
「すげぇいい気分だ。ありがとよ」
「私たちは、カズキ様のものだよぉ」
 少女たちの顔は恍惚に満ち足りた笑み。
「ホムラよ。我が片腕としてこの魔王宮の番人を、そしてヤツラを抹殺する一番槍を命じる」
「アタシにふさわしい役だな」
「ミユキよ。この世界を闇に変える準備を整えよ」
「承知いたしました〜」
 蝋燭の明かりが男を照らす。
 男の名はカズキ。魔王カズキと名乗る男。

「光」
「陽ノ下さん」
「先輩」
「光ちゃん」
 光が目を覚ますと、目の前に3人の少女と1人の女性が立っていた。
 真っ白で何もない空間。
 不思議な場所だ。
「あれ?」
「あれじゃないのだ。しゃっきりするのだ」
 この場でもっとも幼い姿をした少女。伊集院メイが光を叱る。
「ここはどこ?」
「さぁ。すくなくとも現実じゃないわよね。あの世かしら」
「妖精さんの国ではなさそうですね」
 光の親友の水無月琴子とクラスメートの白雪美帆がそれぞれの感想を言い合う。
「場所なんてどこでもいいわ。どうして私たちがここにいるかよ」
 ここにいる唯一の女性、教師である麻生華澄が大人らしい意見を伝える。
 突如5人の頭の中に声が響く。
 綺麗な声。さっきブレスレットから現れた女性とは別な美しい声だ。
『ここはベルスペース。貴方たちの世界とは別な世界』
「鐘空間?変な名前ね。それにどうして別な世界なのに英語なのよ」
 極端に横文字が嫌いな琴子が言い放つ。
『100年前に同じように来た人たち。その中の一人がつけた名前です』
 琴子の毒舌にもやんわりと答える声。
「この世界のことはどうでもいいです。今の状況などを説明してもらえませんか?」
 華澄が教師らしいところを見せる。
 ただ、どうでもいいわけではないと思うのだが。
『ご説明します。ある世界に2つの生命体が存在していました』
 声が語り始めると同時に、5人の頭の中にはそのイメージが浮かぶ。
 星もなにも無く、不思議な光で世界全体が灰色に輝いている世界のイメージ。
 そこの中心には、唯一の青白い光と赤黒い光の固まりが浮かんでいる。
『この赤き生命体は、ある時を境に破壊と殺戮を願望するようになってしまいました』
 2つの生命体はゆっくりと、回転し調和を保っていたが、赤黒い生命体がその動きを不規則に変化させ調和を崩し始めた。
 そして、まるでゴム鞠のように空間中を駆け巡る。
『ついには何もないこの世界から飛び出し、他の世界を破壊し始めたのです』
 赤黒い生命体は、異世界の生命に乗り移りその世界の破壊をはじめる。
 殺戮と破壊。それは、まさに虫ケラを踏み潰すかのごとくの所業に見える。
『いくつかの世界を滅ぼしたのち、彼はあなた方の住まう世界に進入したのです』
 今度は見たことのある世界。見たことのある星。
 時代は古いが、間違いなくこの地球。
『しかし、彼はこの世界に封印されてしまいました』
 最初に見た生命体の片割れ。青白い光の恩恵を受けた5人の男女が、赤黒い生命体を地の底に沈めてしまった。
『そう、これでこの世界は。いえ、全ての世界が救われたはずだったのです』
「はずとはどういうことなのだ?」
『彼は復活しました。あなた方の世界の住人の身体を奪い』
 光は驚愕した。
 思い当たるふしがある。
 最愛の人の変わり果てた姿。そう、たった1日前の記憶。
「まさか・・・和輝君?」
 光のつぶやきに4人は一斉に彼女を振り返る。
『はい。昨日あなたの身に降りかかった出来事です』
 今度は頭の中に、昨日、光の身が体験した真実が流れる。
「そんな。先輩が?」
「あの男が」
「和輝さんが」
「和輝くんが」
 4人は同時につぶやく。
「あなた。さっきのイメージにあった青白い光。昔、一度封印する力を与えた存在ね」
『はい。みなさん、自分の右腕を見てください』
 5人が右腕を見る。
 そこには白く綺麗なブレスレットが装着されている。
『その力で。どうか、もう一度封印を』

「夢?」
 光はベッドから起き上がる。
 カーテンの隙間から入ってくる光が、今が朝だということを示していた。
 視線を落とすと、右腕には白いブレスレットが。
「昨日は黒だったよね。ってことは、夢じゃないんだ」
 机の上の携帯電話が震える。
 ディスプレイには琴子の文字。
「もしもし」
『あ、光。夢じゃないのね』
「うん」
『そう。なら、どこかで一度会いましょう。そうね、喫茶店メタルユーキに11時。他の人には連絡しておくわ』
 携帯電話を置く。
 もう一度ブレスレットを見る。
「仲間は見つかったよ。これで、和輝君を助けることが出来る」
 光は決心のついたような瞳で鏡を見る。

 喫茶店メタルユーキ。
 ひびきの高校の近くにあり、その学生の多くがここに休みに来る。
 軽快な音楽としゃれた感じの店内。そしてなによりもここのコーヒーの味が客をひきよせる。
「ごめんなさい。職員会議が長引いちゃって」
 最後の1人、麻生華澄が店に入ってくる。
 これで、あの空間でであった5人がそろった。
「それじゃあ、話をはじめましょう。すでにわかってることは」
「和輝君を取り戻すために私たちが選ばれた。それだけでいいよ」
「そうね」
 琴子は親友の瞳が、いつになく強く輝いているのに気付いた。
 そう、難しく考えても5人にはまだ情報が少ない。
 昨日の内容は直接頭に響いたこともあり、今更確認する必要は無いほど鮮明に覚えている。
「けど、どんなことをすればよいのだ?」
「そうですね。占いでも、彼の場所はわかりませんでした」
 悩んでしまう。結局は相手の出方を待たなくてはならないのだ。
 突如、外に植えてあった街路樹が爆発、四散する。
「なに?」
 華澄が立ち上がり外の様子を見るために走り出す。
 4人もそれにならい外に飛び出す。
「これは」
 見渡す限りの街路樹が全て爆発し、黒煙を上げている。
「んはははは!!」
 女の高笑いが響き渡る。
 喫茶店の前の建物の屋上に少女が腕を組み立っていた。
「あ!バカ猿!!」
「赤井さん。なんて格好なの!」
 少女は腹部が大きく開いたエナメル質の素材でできたボンテージ姿。
 その右手にはご丁寧に鞭まで握られている。
「ふははは。私の名はホムラ。炎の番人ホムラだ。赤井ほむらではない!」
 ホムラはその手にもつ鞭を一振りする。
 すると、当たってもいない地面に大きな裂け目が出来る。
「お前ら!カズキ様のご命令だ。みんなここで死んでもらう」
「和輝君の!?」
 ホムラが左手を光たちの方に向ける。
「さて。こいつでどうだ!」
 突如、すさまじい衝撃が光たちを襲う。
「あぁぁっ」
「きゃぁ」
 喫茶店のガラスに叩きつけられ、そこにひびが入る。
「力ってどうすれば使えるのだ」
 光の脳裏に、昨日の校長が浮かぶ。
「みんな、私と同じようにして。転身!!」
 右腕を高く掲げ、叫ぶ。
『転身!!』
 4人も同じように叫ぶ。
 5人のブレスレットが光を放ち、それぞれの身体を包みこむ。
 光が収集し、ブーツ・グローブ・ボディースーツを形作る。
 最期に仮面が形成され、光が消える。
 そして、5人の声とポーズがそろい、後方に赤・青・桃・黄・緑の爆煙があがる。
『ときめき戦隊ヒビレンジャー!!』




光   「え?」
琴子  「ウソでしょ」
メイ  「なんでこんな格好しなきゃいけないのだ」
美帆  「妖精さ〜ん。どこですか〜。早くここから助けてくださ〜い」
華澄  「作者さん。地獄に落とすわよ」
作者  「ちゃんと予告してただろ」
光   「だって、まさか本当にやるなんて」
和輝  「俺ってあんま出番なさそうだな」
ほむら 「なんでアタシがボンテージファッションなんだよ」
和輝  「なんとなく似合ってて意外なんだけど・・・」
ほむら 「てい!」
メイ  「あ、先輩が倒れた」
琴子  「ふぅ。ギャラは貰うわよ」
作者  「ギャラ?」
琴子  「そう。伊集院さんのみたく、ちゃんと私の話も書いてもらいますからね」
光   「あ、私も」
作者  「げ。そ、それは」
華澄  「嫌とは言わせませんよ」
作者  「はい」
メイ  「というか、これはシリアスなのかギャグなのか?」
ほむら 「タイトルだけならギャグなんだけどな」
美帆  「でも、シリアスチックですよね〜」
作者  「多分シリアス。もし、エッチシーン書く場合のシリアスになるので。そのつもりで」
光   「このタイトルでシリアスと言われても」
メイ  「もう言っても遅いのだ」
   チャンチャン
 
 

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