「直樹!また私のコーヒー牛乳飲んだわね!」
「やっぱ風呂上りにはこれだよな」
「それは、私がおこずかいで買ったものなのよ!!」
アイがバスタオル一枚巻いただけ姿で怒鳴ってる。
まったく、こんなんだから恋人の一人もできないんだ。
「それにしても」
「な、なによ」
俺は立ち上がりアイに詰め寄る。
「色気がないな!もっと普通の牛乳飲め。牛乳」
バスタオルを一気に剥ぎ取る。
そこには、女性を象徴する二つのふくらみがあるのだが、いかんせん小さすぎる。
少しでも大き目の服を着てしまえば、男の子と言われてもおかしくないくらいだ。
「直樹!!!」
「あははは。そんなことがあったのか」
「笑い事じゃないよ。パパ」
うぅぅ。なんで私はこんなに胸がないんだろう。
今度、ママに言って胸が大きくなる機械でも作ってもらおうかな。
「なら、俺が大きくしやろうか?」
「え?」
パパの手がものすごくいやらしく動く。
「和輝!!」
「冗談だよ冗談」
「直樹ももう少し、女の子を優しく扱うのだ」
「はぁい」
もぅ。パパもママも優しすぎるんだから。
もっとも〜っと、直樹をしかればいいのに。
「中学生なんだからあまり気にしなくていいんじゃないか?」
「中学生だから気にしてるんだけどな」
やだなぁ、今年の健康診断。
きっとまた、一番小さいんだ。
「さ、そろそろ寝るのだ」
「わかった。いこ、直樹」
「はぁい。和輝さん、メイさん、おやすみ〜」
和斗はさっさと、2階に上がってしまう。
ホント可愛くないなぁ
「じゃあ、パパ。ママ。おやすみなさい」
「ふぅ。と言っても、さすがにアイは小さすぎるかもしれないのだ」
「遺伝だろ」
「メイはもっとあるのだ!!」
メイが剥きになって俺に言う。
ん〜。。。似たり寄ったり。やっぱ遺伝だろ。
「けど、それより直樹が思ってた以上になじんでくれてよかったよ」
直樹は俺の子ではない。
直樹は伊集院直人とレイ夫妻の子供。つまり、俺の甥っ子で、アイの従兄弟と言うことだ。
直人たちが今年一年間、仕事で月と地球を行ったり来たりしなくてはならないからその間、家で預かることになった。
「そうなのだ。けど、毎年のことだから慣れてるだけではないのか?」
「昔はもっとアイのこと慕ってただろ」
仕事で留守にしがちの直人たちに代わって、昔から直樹は何度も家で預かってた。
小さい頃は、よくアイの後ろをついてまわっていたのだが。
「今でもあまり変わらないのだ。小さい子は好きな相手をいじめると言うのだ」
「なるほどね。愛情の裏返しか。って、それはそれでいいのかな?」
従兄弟同士だから結婚が出来なくもないけど。
ま、2人ともまだ中学1年。
ちょうど思春期のこの時期に、親兄弟以外の同年代の異性が一つ屋根の下だし、意識でもし始めたかな。
「俺も、好きな女の子をいじめちゃおうかな」
俺はメイを抱き寄せる。
「ん。それは小さい子と言ったはずなのだ」
「ベットの中では年齢は関係ないよ」
大人のキス。昔とは違う熱く濃厚なヤツ。
メイは身をよじるが、嫌がってる風ではない。
「今日は寝かせないから」
「ばかぁ」
ドアをノックする音が聞こえる。
「はぁい」
「俺だけど」
「直樹?いいよ入って来ても」
私は、髪をとかしていたブラシをおき、ドアの方を向く。
ドアが開き、直樹が立っている。
「どうしたの?」
「明日なんだけど、なんの日かわかるか?」
「明日?8月3日だよね。私や直樹の誕生日じゃないし、パパとママのでもないし。あ!結婚記念日?」
直樹がにんまりと笑う。
私だって忘れてたのによく覚えてたなぁ。
あ、そう言えば、直樹の両親も同じ日だっけ。
「俺の父さんと母さんはどうでもいいけど、和輝さんたちには色々とお世話になってるし」
「そっか。ん〜」
私は座っている椅子をくるくると回転させる。
考える時の癖なんだけど、あまりやると目を回しちゃうから気をつけないと。
なにかプレゼントしないとね。
「直樹はなにか考えあるの?」
「料理でも作ってあげようかなって」
「ん〜。いいかも。あれ?でも直樹、料理できたっけ?」
確か家庭科の成績、かなり低くなかったっけ?
あ、そういえば。この前、包丁で指切ってたし。
「ダメ。だからアイのところに来たんじゃないか」
「なるほど。じゃあさ、2人で料理してる間は、パパとママにはデートしててもらおうよ」
直樹が首を縦に振る。
どうやら同じ考えだったようだ。
「じゃあ、明日。おやすみ」
「うん。おやすみ。風邪ひかないようにね」
よ〜し。明日ははりきって料理しないと。
まずは、朝起きたら、パパとママを追い出して。買い物行って。あ、その間に直樹に飾り付けをお願いしよう。
おやすみなさい。パパ。ママ。直樹。
「いってらっしゃ〜い」
「ふわぁぁ。ん。行ってくる」
「6時には帰るから、戸締りをきちんとするのだぞ」
和輝さんとメイさんが出掛けた。
2人とも眠たそうだったけど、どうしたのかな?
「さぁ、私は買い物に行ってくるから、リビングの片付けと飾り付けをお願いね」
「わぁった」
そう言うと、アイも出掛けていく。
さて、まずはリビングの片づけか。
「と言っても、別に何もないしな」
ここは伊集院家の別荘だから、物がいっぱいあるわけでもない。
とりあえず、俺やアイが持ってきたものをそれぞれの部屋にしまうか。
「俺のは適当に、ベッドの上でもいいけど。アイのはぐちゃぐちゃにおいておくと怒るからな」
自分で片付けておけと思うのだが、どうもアイは片付けるのをあまりしない。
母さんの話だと、メイさんもそうだったらしいから、遺伝かな?
アイの本やCDをアイの部屋へ持っていく。
「お?これは」
アイのベッドの上にあるモノを取り上げる。
女性用の下着。子供用ではなく、ちょっと大人っぽいヤツ。
ふむぅ。アイもこんなの身に付けてるのか。
ちょっと、手にとって引っ張ってみたり。
「なにしてる〜〜!!」
俺の後頭部に鈍い痛みが走る。
ぐぐぐ。
振り返ると、そこにはアイが立っていた。
「買い物行ったんじゃなかったのか」
「はぁはぁ。ベッドの上に下着をだしたままだったの思い出したから帰ってきたのよ」
アイは、下着をカバンにしまうと今度こそ買い物に出掛ける。
思いっきり釘をさされたが。
さて、今度は飾り付けか。
けど、折り紙とかはないし。あ、そうだそうだ。
「こいつを使うか」
俺は物置にしまってあったクリスマスツリーを出してくる。
そこから、色とりどりの豆電球を取り外す。
こいつで飾り付けるか。
「違う。そのたまねぎはみじん切り」
「どうやるんだよ」
「こう」
アイが俺の手を握る。
アイの手って、こんなにも小さかったっけ?
それに、顔にかかる髪の毛。いい匂いだ。
「わかった?」
「お、おう」
俺はぎこちない手つきでたまねぎを切っていく。
なんだろ。なんか、アイのことが。
っとと、そんなことを考えていると指を切ってしまった。
「もう、なんで料理はこうだめなの?」
「知るか」
俺は指にバンソウコウを巻く。
こんあこともあろうかと、エプロンのポケットに1箱入れておいたのだ。
って、あんまいばれることじゃないな。
「じゃあ、今度はフライパンでこのたまねぎを炒めて。弱火でじっくりだよ」
「わかってるって」
っととと。
「あっ!?」
思いっきりサラダ油を床にぶちまけてしまった。
あ〜あ。早く拭かないと。
「アイ、動かないで!」
「え?」
アイが転んでしまった。
冷蔵庫から卵をとりに行ってたからこっちを見てなかったみたいだ。
「いたたた。もう、油こぼしたわね。うぅあ、卵でべちゃべちゃ」
その上、転んだ衝撃で卵が飛んでしまい、それが彼女の頭の上に落っこちてきた。
やばい、アイの顔にかかった卵白が、ヌルヌルと糸を引いてて、いけない想像をしてしまいそうだ。
「ふぅ。シャワー浴びてくる。その間にここ、片付けておいてよ」
「わかった」
「あ、直樹も濡れてるじゃない。卵飛んじゃった?」
確かに俺の顔や髪にもついてるけど、この程度ならタオルで拭けばとれるだろう。
「一緒にはいる?」
「へ!?」
「冗談だよ冗談。んじゃ、片付けよろしくね」
「はぁ。何言ってんだろ。私」
さっきから、何かおかしい。
シャワーが適度な熱さになり、頭からかける。
「あいつが悪いのよあいつが。もう。」
シャワーを浴び、石鹸で身体を洗う。
ん〜、気持ちいいな。
気分を切り替えて料理作らないと。パパとママが帰ってきちゃう。
「うん。頑張らないと」
あ、着替え。持ってき忘れちゃった。
2階に行くには、キッチンを通るわけで、直樹がいるよね。
って、何を意識してるのよ。昨日だって普通にバスタオル一枚で・・・
鏡の中の私の顔が赤くなる。
「見られちゃってたんだっけ」
うぅ。今まではこんな事なかったのに。
別に裸なんて直樹には見られても何ともなかったのに。
『アイ』
!?
直樹の声?脱衣所からだよね。まさか、覗き?
って、それなら呼ぶわけないか。
「な、なに?」
『お前のカバンここに置いておくから。着替え、持ってきてなかっただろ』
「あ。ありがと」
持ってきてくれたんだ。
ん〜。やっぱり、こういう時の直樹は優しいな。
早く着替えて、直樹を手伝わないと。
テーブルの上にはハンバーグやオムレツなど、いろんな料理が並んでいる。
あとは、和輝さんたちが帰ってくるのを待つだけか。
「おつかれ」
アイがジュースを差し出してくれる。
「おつかれ。サンキュ」
ん、ん、ん。一労働の後のジュースは美味い。
大人ならビールなんだろうけど。アレはまずいから却下。
「ん?どうした?」
アイがこっちをじっとみてる。
俺の顔に何かついてるか?
「男の子なんだなって思って」
へ?
「なんかさ、今までは弟みたいに感じてたんだけど、やっぱちゃんと見ると男の子なんだなって」
うっ。なんか、アイが可愛い。
夕日の光が部屋に射しこみ、顔がほんのり赤く見える。
「アイ」
「ん?」
「キス・・・したい」
おわ。何を言ってるんだ俺は!?
けど、こんな可愛い子、他には見たこと無いし。
「いいの?私で。胸無いよ」
「関係ないよ。アイが可愛いと思ったから言ったんだ」
アイがはにかむ。
さっきよりも顔が紅くなる。
「そっか」
目をつぶった。
俺は、アイの肩を抱きよせそのまま顔を近づける。
俺も目をつぶる。
「ん」
アイの唇は柔らかく、そして不思議な感じがした。
小さい頃した、母さんとのキスとは全然違う。
アイのことが愛しく感じてしまう。
「んふふ。なんか、変な感じだね。けど、嫌じゃないよ」
「俺も」
俺はアイを抱きしめる。
こんなに小さかったかな。昔はもっと大きく感じていたのに。
「あ!?パパ」
「へ?」
リビングのドアを軽く開けて、和輝さんが廊下から覗いていた。
俺はあわててアイを離す。
「あ、えっと」
「いいよいいよ。そっか、2人がな」
「まったく。覗くとは悪趣味なのだ」
いつから見られてたんだろう。
まだ、5時なのに。帰ってくるのが早過ぎだよ。
「さて、それじゃあ、2人のファーストキスを祝してパーティでもしようか」
「パパ!それも見てたの!?」
はぁ、これはしばらくからかわれつづけるな。