「ん〜。このケーキ美味しい」
私は至福の時間を味わっていた。
なんで、このケーキはこんなにも美味しいんだろ。
「光。今日は牧君と一緒じゃないのね」
「あ、琴子。きてくれたんだ」
水無月琴子は私の親友。
いつも一緒にいてくれて、私に何かあった時は、慰めてくれたりもする。
親友っていうより、頼りになるお姉さんって感じかな?
「和輝君。まだ来てないんだよ」
「そう。ま、静かでいいけど」
「琴子!」
もぅ。いつもこうやって和輝君のことを毛嫌いするんだから。
なんで、そんなに和輝君のこと嫌いなのかな?
いい人なのになぁ。
「ここ、私の好きな食べ物が少ないわ」
「クリスマスパーティだからね。けど、向こうに和菓子もあったよ」
「甘いものばかりはちょっと」
琴子ってば、本当に日本人というか、大和撫子って感じというか。
横文字は嫌いだし、好きなのは和食だし。
「しっかりして、メイちゃん」
「ふにゃぁぁ」
あれ?あの声は和輝君だ。
和輝君に支えられてるのはメイちゃんだけど。どうしたんだろう、顔が真っ赤だ。
「大方、間違ってお酒でも飲んじゃったんじゃないの?」
「かもしれないね」
足取りがおぼつかない。
支えているというよりは、半分抱きかかえている感じかな。
あ!和輝君の手が、メイちゃんの胸にあたってる。
「和輝さま。メイ様をこちらへ」
「うん」
メイちゃんをゆっくりと、椅子の上に座らせる。
「どうしたの?」
「お、光か。ん〜、よくわからん。別に酒は飲んでないはずなんだけど」
「そっか」
顔を近づけて見るけど、別にお酒の匂いはしない。
あれ?
「ん〜・・・さいあいの・・・」
さいあい?最愛?
まさか。
私は和輝君の方を見る。
「どうした?」
和輝君は特に変なところはない。
ってことは、メイちゃんに告白したわけじゃなさそうだけど。
「ま、いっか。おなかすいてる?」
「あぁ。すいてるすいてる。昼からなんも食ってないからな」
「んじゃ、向こうにまだ料理残ってるから、いこ」
私が和輝君の腕を取り、引っ張っる。
あは。腕、組んじゃった。いいよね、クリスマスだし。
けど、和輝君の足が止まる。
「どうしたの?」
「それが・・・」
和輝君の服のすそを、メイちゃんが掴んで離さないようだ。
むむむ。やっぱりメイちゃんはライバルだ。
けど、無理矢理はなすのもあれだし。
「じゃあ、ちょっと待ってて。持ってくるか」
私は1人で料理の元へ向かう。
「何してるの?」
「何って、料理を和輝君のとこに運ぼうかなって」
「はぁ。無理矢理連れてくればいいじゃない」
う。
やっぱりそうかな?
けど、和輝君もお腹が空いたって言ってたわりには、メイちゃんの手をほどこうとしなかったし。
「過ぎたことは気にしない。今は、美味しい料理を持っていってあげないと」
お皿に、チキンやサラダを乗せる。
あぁ、やっぱりあまりいっぱいはもてないや。
「かしなさい。私も一緒に運んであげるわ」
「ありがとう。琴子はやっぱり優しいね」
私と琴子はそれぞれ2皿ずつもって、和輝君のところへ行く。
メイちゃんは寝ちゃったらしく、椅子を並べて横になっていた。
「はい。どうぞ」
「サンキュ」
「ここい置いておくわね」
「水無月さんもありがとう」
寝てしまっても、しっかりと和輝君の服のすそを掴んだままだ。
むぅ。メイちゃん。なかなかやるね。
「ん。さすが咲之進さん。美味い美味い」
「え!?これって三原さんが作ったの?」
「はい。本日は私めが作らせていただきました」
すご〜い。
こんなに料理が上手だなんて。いいなぁ、メイちゃんはいつもこんなの食べてるんだ。
和輝君は料理上手な方がいいかな?
「もう少し和食を増やして欲しかったわ」
「申し訳ありません。焼き魚と白飯。それにお味噌汁でよければご用意いたしますが」
「お願いしようかしら」
「では、少々お待ちください。それでは和輝さま。メイ様をよろしくおねがいします」
「わぁった」
う、和輝君とメイちゃんは三原さんの中ではすでに公認の仲なのかな。
そうだよね。こんな姿見せられたら。
どうすれば勝てるかな?メイちゃんになくて私にあるもの?
「何してんだ光。じっと自分の胸なんか見て」
「え?あ、あはは。なんでもないよ」
ふぅ。そりゃメイちゃんよりはスタイルいいけど。悩殺できるほどではないよね。
あとは運動神経くらいかな。けど、メイちゃんがそんな勝負に乗るわけ無いし。
ましてやそんなので勝っても、無意味だろうな。
「ねぇ」
「あん?」
「今日、一緒に帰っていい?」
「そりゃあ、光の家は俺の帰り道だからいいけど。なんで急に?」
「いいのいいの。気にしないで」
帰り道で2人っきりになったら、なにか仕掛けないと。
じゃないと、和輝君。きっとメイちゃんの所に言っちゃうから。
「お待たせいたしました。陽ノ下様も和輝様も、どうぞ」
三原さんの後ろにいるメイドさんが、おぼんを渡してくれる。
その上には、ほかほかの白飯に程よい焦げ具合の焼き魚。それにお豆腐のお味噌汁。
「いいに匂い。いただきます」
琴子が食べ始める。
琴子って和食にうるさいからなぁ。大丈夫かな?
「美味しいわ。この味、普通のお店では食べれないくらいに」
へぇ、じゃあ、アタシもいただきま〜す。
「さて、そろそろ帰ろうか」
「おう」
さすがに和輝君もメイちゃんの手をはずす。
あぁあ、握って部分が伸びちゃってる。
「和輝さま。お部屋の準備が整いました?」
「お部屋って?」
「本日は、和輝さまにこのお屋敷に泊まっていっていただくよう、メイ様より言付かっております」
えぇ!?
それじゃあ、一緒に帰れないの?
メイちゃん。用意周到すぎだよ。
「ん〜。けど、光と水無月さんを1人で帰すわけにも行かないし、俺は帰るよ」
え?
「メイちゃんには朝、電話するって言っておいて」
「かしこまりました。お車でお送りしましょうか?」
「いや、いい。それじゃあ、咲之進さん。今日はどうもありがとう」
そう言うと、和輝君が私の手を取る。
和輝君のぬくもり。暖かいな。
「私は、逆方向だし他の人と帰るから。それじゃあ、またね。光、牧君」
琴子がさっと外に出てしまう。
ってことは、ずっと2人っきり!?
やったね。
「じゃあ、俺たちも帰るか」
「うん」
暗い夜道を二人で歩く。
うぅ、住宅街とはいえ、街灯は少ないし。
ここを一人で帰ることにならなくてよかった。
「ねぇ、どうして、泊まらなかったの?」
「お前、俺になにか話があったんじゃないのか?前からそうだろ、その顔は俺になにか話したいことがあるときの顔だし」
そっか。ちゃんとわかっててくれたんだ。
それに、メイちゃんのお泊りを断ったってことは、ひょっとして。
今日は思いっきり甘えちゃお。
「ん〜ん。こうして一緒にいれればいいや」
私は思いっきり、和輝君の腕に自分の腕を絡め、身体を押し付ける。
今日がいつまでも続いてくれればいいな。