和輝君の部屋のドアを閉める。
横を見るとレイの形相は少々やばいものがある。
俺、明日の朝日拝めるかな。
「さ、さぁ、ここにいてもしょうがないし、リムジンに戻って電話をまとうぜ」
「貴様。私が今、どのような思いなのかわからないわけではないだろ」
「もちろん。けど、今は和輝に任せよう。あいつならきっとメイちゃんを説得できるさ」
そう言って、アパートの階段を下りていく。
レイもしぶしぶながらついてきた。
階段下にはいつものリムジンが停まっている。
「しかし、メイもメイだ。私が女であることがそんなにもショックなのか?」
「いや、レイだってこうなるってわかってたから打ち明けれなかったんだろ」
「ふむ」
リムジンに乗り込む。
「レイ様。どうなさいますか?」
「とりあえず、直人の自宅へ。直人を下ろした後、メイから連絡がくるまで別宅で待機だ」
「俺も待つよ」
「気にするな。これは私とメイの問題だ」
ここまで引っ張りましておいて、気にするなってのは。
「いいよ。それに、レイがばれたのだって、俺がひびきので買い物しようって言ったからだし」
「そうじゃないか!元はと言えば原因は貴様か!直人!!」
いくら広いとはいえ、リムジンの中で叫ぶなよ。
こんなことなら、ブティックには誘わない方がよかったかな。
「まぁよい。では、適当にこの周辺を走ってくれ」
「了解しました」
リムジンが走り出す。
何度乗っても、エンジン音や振動が、後部座席にはほとんど来ない。
家のボロ車とはえらい違いだ。
沈黙がその場に漂う。
「そういえば」
レイが口を開いた。
「藤崎はどうした?」
あれ。詩織?なんでまた。
「メイちゃんの話じゃないの?」
「メイのことを彼に任せておけといったのは直人ではないか」
ふむぅ。だからって突拍子も無いというか。
「で、どうなのだ」
「最近はアイドル性に磨きがかかってきたって感じかな」
「寂しくは無いか?」
「どうしたんだ、一体。レイが詩織のこと言うなんて珍しいな」
はっきり言って、レイと詩織は犬猿の仲だ。
レイの一方的な毛嫌いという気もしなくもないけど。
「最近学校で見ないから、少々気になっただけだ。直人は昔から仲良かったんだろう?」
「まぁ、そうだけど」
「何をする!!」
俺はレイの隣に座って、横から抱きしめる。
俺が昔は詩織を好きだったって誰かから聞いたんだろう。
「俺が今、好きなのはレイだから」
「べ、別に私はそんな」
まったく、どうしてこう素直じゃないかな。
和輝も苦労するだろうな。
あ、和輝がメイちゃんと結婚したら俺はお義兄さんになる可能性もあるのか。
どれくらい抱きしめていただろうか、メイのポケットの中から電子音が鳴る。
「ん。誰だこの番号は?」
「和輝の家の番号じゃないのか?」
市外局番はこのひびきの市のものだし。
「もしもし」
レイが電話に出る。
「メイか?」
どうやら俺の勘は合っていたらしい。
「泊まる!?ダメだ、帰って来い。今から迎えに行くぞ」
レイの口調が強まった。
泊まるって。誰がどこに?
「切られた」
「で、何だって」
「メイがヤツの家に泊まると言っていた」
やばい。声が冷静になった。
これは一荒れくるぞ。
「雪之丞!!和輝の家へ飛ばせ!!」
「了解しました」
「レイ。落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか!もしも、メイを傷物にしたら」
ダメだ。レイは完全に我を忘れてる。
はぁ。和輝。死ぬなよ。