和輝さま。メイ様をよろしくお願いします。
今、お嬢様の想い人がお嬢様のお部屋に入っていった。
「咲之進さん、何をしているのです?」
「美耶子殿。今、メイ様はお取り込み中ですので」
美耶子殿は、メイ様の侍女長を務めていらっしゃる方。
まだ若いながら、メイ様の最も信頼されている方の一人。
本日はメイ様の誕生パーティのための準備にいらっしゃったのだろう。
「えぇ、見ていましたからわかっています。けど、今日は誰も通すなって言われてませんでした?」
「和輝様は特別です。あの方は」
「あぁ、なるほど。そう言うことですか」
私の話を最後まで聞かずに一人で納得する。
ふむ。さすがは長年侍女を務めるだけはある。
「そういうことでしたら、どうぞこちらへ」
そう言って、メイ様の部屋の隣部屋に入っていく。
ドアを開けたままというのは私にも入って来いということだろうか。
「いかようですか?」
「こちらへ」
この部屋は、普段から使われておらず、何もものはないはずなのだが。
しかし、現在はこの部屋に、小さな一脚のテーブルと、そこに置かれたラジオのようなものがある。
「美耶子殿。これは」
「さぁ、これを耳に」
渡されるまま、ラジオのようなものに備え付けられたヘッドフォンを耳にあてる。
『まったく・・・この色は、このドレスには合わないのだ』
メイ様の声が聞こえる。
まさかとは思っていたが、これは。
「盗聴器ですか」
「えぇ、そのとおりです」
美耶子殿は悪びれた様子もない。
それどころか、自分も予備のヘッドフォンで部屋の様子を聞いている。
「美耶子殿。これは犯罪ですぞ」
「いいえ、これはメイお嬢様をお守りするための手段にすぎません」
「ものは言いようですか」
『和輝は、メイの心を動かすのだ。お父様よりもお母様よりもお兄様よりも。和輝が一番』
ヘッドフォンからは、そう言った言葉と、かすかに途切れる吐息が聞こえる。
どうやら、2人は仲直りをされたようだ。
「もう、問題はないでしょう。さぁ、部屋からでますぞ」
「いいえ。ここからが問題なのです。先ほど接吻をなされたように思いますが、それで殿方が満足されるでしょうか」
「と、おっしゃいますと?」
「この後、床を共になさるおつもりかと」
ピ!
考えもしなかった。いや、あのメイ様がそのようなことをするなどとと。
和輝さまにしてもそこまではしないのではないだろうか。
『メイちゃん』
『和輝』
ピピ!
2人の衣服が擦れ合う音が聞こえる。
しかし、私には、もしメイ様が望むのであればそれを止める権利は無い。
「やはり、やめましょう。これ以上は」
「何かあっては遅いのでは?旦那様にどう御報告されるので?」
ピピピピ!!
「しかし、これは犯罪です」
「お嬢さまをお守りするうえでは、犯罪などありえません」
ピピピピピピピピ!!
「先ほどからなんですか。この音は?」
「あ、まずいですね」
美耶子殿がそういうと、急にこの部屋のドアが開かれる。
ピーーーーーーーー!!!
「さーくーのーしーん!!」
そこには鬼の形相でこちらを睨むメイ様のお姿が。
その手にはなにやら小型の機械がもたれている。
「貴様!メイの部屋を盗聴するとは何事なのだ!!この検知器が全てを物語っておるのだ」
そう言って、メイ様は部屋に入ってこられる。
手にもたれた検知器が更なる反応をしめす。
「やはり、これが受信機か」
「こ、これは美耶子殿が」
振り返ると美耶子殿がいない。
メイ様の肩越しに見える廊下に、いつものようにたっているのが見える。
いつのまに。
「美耶子は外にいるのだ。さぁ、この不祥事。どうしようか」
教訓。美耶子殿の誘いには乗らない方が身のためである。
私は、この後3ヶ月間。お給金を貰うことが出来なかった。