「うぅ。や、やっと決まった」
 合宿5日目の深夜2時、やっとのことで企画書が出来た。
 もっとも、これからの文化祭までは、さらなる地獄なのだが。
「風呂にでも入ってくるか。お、そういや屋上に露天風呂あるんだよな」
 屋上に向かう。
 この合宿所に来て、露天風呂に入らずに帰れるか。
 かくゆう俺は風呂好きだ。特に女風呂・・・冗談です。
 けど、風呂好きは本当だ。心も身体も休まるからな。
 階段をあがり屋上にでると、人影が見えた。
「ありゃ、先客?」
 しかし、人影は脱衣所の前を行ったり来たりしている。
 覗き?こんなに時間にか?
 夜の闇に目が慣れると、それがメイちゃんだとわかる。
「なにしてんだ?」
「ひゃぁ!?」
 声をかけた俺の方に勢いよく振り向く。
「な、なんだ貴様か。驚かすな」
「すまんすまん。で、何してるんだ?風呂にはいらないのか?」
 メイちゃんは頭をたれてモジモジしている。
 別に混浴ってわけでもないし、入るのに勇気は必要ないと思うのだが。
「よくわからんが、入るなら入って寝たほうがいいぞ。明日は昼には帰るんだから」
 俺は男湯ののれんをくぐる。
 ん?服のすそが引っ張られた。
「い、一緒に入って・・・ほ、ほしいのだ」
 へ?
 一緒に入ってほしい?・・・そ、それって。
「め、メイは露天風呂に入りたいのだ。け、けど、一人は・・・こわいのだ」
 徐々に声のトーンが落ちていく。
 まぁ、ここは脱衣所にしか照明はないし、暗いから怖いのはわかるが。
「大丈夫なのだ。こんなこともあろうかとメイは水着を用意してきているのだ」
 そう言って、ふろ桶の中からワンピースの白い水着を取り出す。
「俺は、水着なんてないぞ?」
「問題ないのだ」
 メイちゃんが指を鳴らすと、どこからともなく咲之進さんが現れて俺に何かを渡す。
 広げてみるとトランクスタイプの男性用水着だ。
 つうか、咲之進さんが来るならあまり怖くない気が。ってか、俺が危険?
「さぁ、入るのだ。水着だからプールと変わらないのだ」
 また、いつもの明るさに戻っている。
 たしかに、水着ならいいか。
「先に入って着替えるから、呼んでからくるのだ。わかったか?」
「わかった」
「帰っちゃダメなのだ」
「わかってるって。ちゃんと行くから」
 メイちゃんが脱衣所の中に入っていく。
 まさか彼女があんなことを言うとは。夢にも思わなかった。
 あ、夢と言えば。最近、あの夢見ないなぁ。
「も、もういいのだ。は、はいってくるのだ」
 中からメイちゃんの声が聞こえる。心なしか震えてないか?
 水着だからいいと言ったのはアイツなのだが。
 一応、誰も入ってこないように、脱衣所の前の札を準備中にしておく。
「さて。げ、この水着、めちゃくちゃ派手だな。誰の趣味だよ」
 南国ムードただよう絵柄の水着を着用。
 露天風呂への戸をあける。
「ん〜。温泉のいい匂いだ」
「き、気持ちよいのだ」
 メイちゃんは既に湯船に漬かっている。肩まですっぽり。
 よく、この夏にあそこまで漬かれるな。ぬるいのかな?
 俺は、桶にお湯をとり身体を流す。
「普通の熱さだな。メイちゃん熱くないの?そんなに漬かってて」
「め、メイは普通なのだ。こんなのへっちゃらなのだ」
 語尾が裏返っているのが少々きになるが、まぁ、本人がそう言うならそうなんだろう。
 ゆっくりと湯船につかる。
 濃い乳白色の湯船は、入った体がほとんど見えなくなるほどだ。
 昼間ならいざ知らず、夜では完全に見えない。
「ん〜。いい気持ち。ふぅ。心まであったまるな」
 山の心地よい風が、夏と温泉の熱さを程よく中和してくれる。露天風呂はやっぱり最高だ。
 メイちゃんの顔が見たくなって、近寄ってみる。
「へっ?」
 メイちゃんが俺に気付き、ゆっくりとその距離をあける。
「あれ。どうした?水着、着てるんだしいいだろ?」
「それは・・・」
「顔、見て話ししたいし」
 メイちゃんは理解したのか動かなくなる。
 つうか、動くとやっぱ少し熱い。よく、アイツは平気でいられるな。
「ふぅ。どうした?」
「な、なんでもないのだ」
 よくはわからないが、メイちゃんの顔がほのかに赤くみえる。まぁ、温泉に肩まで漬かっていればそうなるか。
「夜空綺麗だな。この前、川で見た時も綺麗だったけど、やっぱ市街地とは違うよな」
「そ、そうだな」
 といいつつ、彼女はずっと下を向きっぱなしだ。
 なにかおかしい。さすがに。
 ゆっくりと背中に触れてみる。
「ひゃぁ」
 肌の感触。
「お前、水着は?」
 多分、メイちゃんは水着を着ていない。
 いくらなんでも、メイちゃんが背中が開いたワンピース着ているとは思えないし。
「小さかったのだ」
 やはり。
 それで、肩まで漬かってたのか。
「それならそうと言え。俺が先に上がるから、お前もあとから上がってこいよ」
 俺は仕方無しに、湯船から出ようと立ち上がる。
「あ」
「お、おい」
 立ち上がった俺の腰をメイが掴んだためバランスが崩れた。
 俺は、湯船の中に倒れこんでしまった。
 腰を掴んでいたメイも一緒に。
「なにすんだ!」
 湯船から顔を出し、メイちゃんの方を振り返る。
 俺の目の前には、先に起き上がっていたメイちゃんの、発展途上な二つの胸のふくらみがあった。
「きゃぁぁ」
 メイちゃんが胸を両手で抱きかかえ、湯船に漬かる。今度は、口のあたりまで漬かっている。
 今度は顔が近いからわかる。
 耳まで完全に真っ赤だ。
「すまん」
 俺も湯船に漬かり、メイちゃんの方を向いて謝る。
 気まずい沈黙がその場に流れる。
 フクロウの声が、遠くによく聞こえる。
「メイが悪いから。し、仕方ないのだ」
 うつむき答える。
 真っ赤な顔で恥じらいのあるメイちゃん。
 やばい、抱きしめたい。けど、さすがにまずいか。
「も、もうあがるのだ。先に・・・出て待ってて欲しいのだ」
 さすがにそう言われては、出るしかない。
 俺は湯船からあがり脱衣所へ行く。
 熱い・・・からだが火照る。
「あがってきてもいいぞ」
 脱衣所を出ると、そこには咲之進さんが立っている。
「メイ様が何があっても入ってくるなと言われたからここにいますが」
 目が鋭く光る。
「次に何かあったときは・・・わかっていますね」
 そういうと咲之進さんは風と共に俺の前から消える。
 こ、怖い。
「そ、そこにいるか?」
 メイちゃんの声が脱衣所から聞こえる。
「あぁ、いるよ」
 咲之進さんの忠告は心に刻んでおこう。
「さっきはすまなかったのだ」
「いいよ。俺も悪かったし」
 脱衣所からメイちゃんが出てくる。
 浴衣をきた彼女も可愛い。
 あれ。なんで俺はメイちゃんをこんな風に見てるんだ?
「あ、あのな。和輝にお礼をいいたかったのだ」
「え。あ、うん」
 あれ?今、俺のこと和輝って。
「和輝のおかげで、電脳部が変わったのだ。それに、みんな、メイも変わったって言ってくるのだ。多分、それも和輝のおかげだから」
 まただ、今度は2回も呼ばれた。貴様ではなく、名前で。
「ありがとうなのだ。言葉だけじゃなくてなにか、お礼もしたいのだが」
「いいよ。俺のことを和輝って呼んでくるようになったから。それでいい」
 自分でも気付いていなかったのか、また顔が赤くなる。
 多分、メイちゃんに少しでも認めてもらえたってことだよな。
「も、もう寝るのだ。早くしないと朝食の時間に起きれないのだ」
 早歩きで、屋上の階段を降りていく。
 女子は2階。男子は3階。
 3階で2人の足が止まる。
「おやすみメイちゃん。また明日な」
「ん。おやすみなのだ」

 
 

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