中庭で椅子に座り、夏の日差しを浴びながらウトウトとしていた時。
「こら〜。待つのだ!!」
「いやぁぁ」
家の中をドタバタを駆け回る2人。
平和だなぁ。
「パパぁ」
アイが俺の足にしがみつく。
「ん?どうした?」
「ママがね。びょういんに行くっていうの」
そういえば、今日はアイの予防接種の日か。
アイを抱き上げる。
「アイは病院嫌いか?」
何度も縦に首を振る。
「そっか」
ぎゅっと抱きしめると、アイがキャッキャと騒ぎ出す。
抱きしめられるのが好きなのはお母さん似だな。
「じゃあ、今日は2人でどっかに」
「か〜ず〜き」
後ろからどす黒い殺気が感じられる。
振り返るとそこには仁王立ちのメイがこっちを睨んでいる。
「今日はアイを病院に連れて行くのだ」
「いやいやいや。おちゅうしゃいや〜〜〜」
アイが俺にしがみつく。
しつけを間違えたかな?
「アイ。お注射我慢できたら、アイが行きたがってた海に連れて行ってやるぞ」
「ホント?」
「もちろんだ」
アイがうなる。
多分、頭の中で海と注射が天秤にかかっているのだろう。
「あと、カキ氷ややきそばも買ってあげる。ついでに夜は花火だ」
「行く!!着替えてくるね」
アイが俺から飛び降りて家の中に入っていく。
「まったく。あの性格はいったい誰に似たのだ」
「メイだろ?」
「和輝なのだ」
俺かなぁ?俺ってそんなに計算高かったっけ。
まぁいいや。
「それにしても」
メイが俺の膝に乗っかってくる。
重くは無いがさすがに暑い。
「メイにももっと優しくして欲しいのだ」
「してるだろ?」
「もっとなのだ」
メイにキスする。
まったく、自分の娘に嫉妬してどうするんだか。
「ん。なら、今夜はベッドのなかでもっと優しくしてやるよ」
「和輝はベッドの中では正反対なのだ」
「好きなくせに」
メイの顔が赤くなる。結婚して何年もたつのに、変わらずに可愛いやつだ。
俺は、黙っていることが出来ずに、もう一度キスしてしまった。
「アイも!アイも!」
俺とメイの身体がはね飛ぶ。
着替えが終わったアイが中庭に出てくる。
「パパ。ちゅ〜して」
アイが目をつぶって口を差し出す。
やっぱり育て方を間違えたな。
「わぁぁ。きれぇ」
夜、海岸で花火見物。
メイとアイの顔が花火に釘付けになる。
あ、ちなみに花火と言っても、手に持ってシュワーじゃない。
咲之進さんに花火をするといったら、空に打ち上がるやつを用意してくれた。
「かーぎやー。たーまやー」
「和輝。前から気になってたのがそれはなんなのだ?」
「江戸時代に玉屋と鍵屋って2つの花火屋があってね。それで見ている人たちがそう叫んだのが始まりなんだ」
もう一発、そらに大輪の花が咲く。
「きゃーぎやーたーまゃー」
アイも俺にならって掛け声をかける。
まぁ、まだ意味はよくわかってないだろうけど。
「ふむ。メイのだんな様は博識だから頼りになるのだ」
メイが俺の肩に頭を預ける。
さっきおふろにはいったから、シャンプーのいい匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
アイがいなければ、ここで夫婦の営みをはじめたいくらいだ。
「メイ。この旅行の後、2人っきりで温泉にでも行こうか」
「ん」
夜空には、俺たちの顔を染める、大輪の花々。
膝の上には天使のような笑顔の娘。
そして、隣には俺の最も愛している奥さん。
この幸せ。わすれないようにしないとな。