週刊ウィンリィちゃん 第17号:ハガレン愛の劇場:後編
「つまり、アンタは脱走したお嬢さまを追っかけてただけなのか?」
「そうだ。それを貴様らが」
エドとアル。それにナッツ家のガードの男が馬車で大通りを下る。
男の名はバリス。
ナッツ家ガードの隊長だ。
「あのな、あんな風に追いかけてたら誰だって勘違いするだろ」
「仕方ないだろ。俺たちがガードなのは世間にはかくしているのだから。おい、もっと急がせろ!」
バリスが馬を操っている男に怒声をあげる。
今は、オレンジを誘拐してきた犯人が指定した場所へ向かっている最中。
犯人が指定した場所とは街の中心にある時計塔。
「でも、なんでそんな場所を?逃げるにしても四方を囲まれてたら終わりだろ?」
「あの時計塔は地下道に繋がってるんだ。逃げようと思えばそこから出れる」
「なら、地下道にも人を配備するんですか?」
「いや。地下道は入り組んでる上に出口が複数あるからな、人を配置しても捕まえれるかどうか」
「つまりは逃げ出す準備も万端ってことか」
エドが腕を組んで考え込む。
今回の第1目標はオレンジの救出。
犯人の確保はその次だ。
「犯人からの要求は無いのか?」
「あぁ、今のところはな。だが、普通に考えて金だろうな」
エドが更にうなる。
「どうしたの兄さん?」
「いや、なんか引っかかるんだよな」
「言っておくがお前らは手を出すなよ。これは俺たちの問題だ」
「あ?」
「前に何度かあったんだよ。お嬢さまが街の男雇って芝居をうったことが」
過去にもオレンジはこういう騒動を起こしていた。
お小遣いをあげろだの勉強したくないだのと要求をのせて。
そのたびにバリスは命の縮むような思いをしているのだ。
ここでエドのようなよそ者に手を出されたら、ただのお家騒動ではなくなってしまう。
「そんなら丁度いいや。俺はここで降りるぜ」
そう言うと、エドは馬車を停める。
「に、兄さん?」
「アルは一応そいつについてろ。嫌な予感がするんだよ」
そう言うとエドは馬車を降り元来た道を戻っていった。
「なんなんだ。お前の兄は?国家錬金術師ってみんなあぁなのか?」
「さ、さぁ・・・」
アルとバリスを乗せた馬車は時計塔に向かって走り出した。
「どうなってる?」
「犯人に動きはありません・・・お嬢さまの姿も」
バリスが先に来ていたガードの1人に聞く。
時計塔からは犯人の姿もオレンジの姿も見られていないようだ。
「・・・!」
突然、時計塔の扉が開き中から数人の男が飛び出した。
男たちはそれぞれ、剣や斧を持っているが動きはただの素人だ。
バリスやアルの前にはなす統べもなく崩れ落ちる。
「おい!お嬢さまはどこだ?」
バリスが出てきた男の襟首を掴んで持ち上げる。
「けっ・・・この街はもう終いだ!!」
男はそう言って手を上にあげる。
同時に時計塔の時計盤のあたりから爆発が起きた。
「な!?」
バリスが落ちてきた瓦礫を避ける。
その時、掴んでいた男をその場に落としてしまう。
「あとは別働隊がお前らの頭を」
男を巨大なレンガの塊が押しつぶす。
時計を動かしていた巨大な歯車やレンガなど様々なものが辺りに雨のごとく降り落ちる。
「くそ!いったん下がれ!」
バリスが号令を出すとガードたちがそこから離れる。
「バリスさん!!」
バリスの真上に落ちてきた瓦礫をアルが蹴り飛ばす。
「すまん。君も早く離れるんだ」
「バリスさんも早く」
時計塔のあった広場は凄惨な状況だった。
バリスたちを襲った男たちはもちろん、ガードの中にも犠牲者が出てしまった。
一般人に被害がなかったことが不幸中の幸いだが、被害はかなりものだ。
「バリスさん」
「君か。さっきは助かった・・・しかし、これは一体・・・まさか」
バリスが大通りの先。
山の中腹にある領主の館を見る。
「陽動・・・」
アルの呟きにバリスがうなずく。
「何が目的だ・・・金か?地位か?」
領主アムールの前には1人の男が立っている。
男の上での中にはナイフを首に当てられたオレンジの姿がある。
「アンタとこの子の命さ。新しい領主さまは俺たちにとって住みやすい街にしてくれるそうだからな」
オレンジの頬に赤い線が走る。
そこから鮮血がにじみ出る。
「お、お父様・・・」
「どういうことだ・・・」
「まだわかんねぇのか?俺たちの依頼主はアンタの弟だよ」
アムールの顔に驚愕の表情が浮かぶ。
「バカな!そんなハズはない」
「ふ。信じようが信じまいが俺には関係ないさ。さ、お仕事おしご・・・」
男の声が途中でつまる。
「やっぱ地下道はここまで通じてたんだな」
男の後ろに現れたエド。
エドの右手は後ろから男の首を掴んでいた。
「がっ・・・」
「このまま握りつぶすか?・・・・さ、オレンジを放しな」
エドが力を込めると首に指がめり込む。
男がオレンジを放し、ナイフを地面に落とす。
「バカな・・・屋敷内には仲間が」
つぶれた声で男が呟く。
「国家錬金術師相手にあの程度じゃ足りねぇよ」
エドは男から手を放し、背中を蹴る。
その場に四つんばいになった男の背中に両手をあてる。
同時に練成が起こり、男はどこからか現れた鉄の縄で身動きが取れなくなった。
「一丁あがり」
「うっ・・・エドさまぁぁぁ」
オレンジがエドに抱きつく。
よほど怖かったのだろう。
あの勝気な性格のオレンジが顔をグシャグシャにして涙を流している。
「エド殿・・・このたびは助かりました」
アムールも深々と頭を下げる。
「エドさま・・・行ってしまわれるのですね」
「俺たちには目的があるからな」
事件の翌朝。
エドたちは領主の館の門の前でオレンジと対面した。
誰にも会わないように早朝に出てきたのだが。
「わかりました・・・なら、わたくしもついて行きます」
「へ?」
オレンジの足元には小さなカバンが一つ。
「どのような困難もエドさまと一緒なら乗り切れますわ」
「ちょっと待て!」
「あぁあ・・・兄さん、こういう子はしつこいよ」
「アル!お前、無関係のフリしてないでどうにかしろよ」
エドとアルが走りだす。
「エドさまぁぁぁ。待ってくださいましぃぃ」
「冗談じゃねぇぇぇぇぇぇぇ」
エドワード 「まさか、マジでついてくる気じゃないだろうな」
オレンジ 「エドさまのお側ならたとえ火の中水の中」
ウィンリィ 「すごいのに惚れられたね・・・ご愁傷様」
エドワード 「こらこら!ウィンリィもアルもなんとかしてくれよ」
アルフォンス 「なんとかって言われてもねぇ・・・?」
ウィンリィ 「ねぇ。まぁ、よかったんじゃない?エドにも恋人が出来て」
エドワード 「おひ・・・マジかよ」
次回予告
・・・・・・・・・・・
エドワード 「は?」
アルフォンス 「ネタが浮かばないんだって」
エドワード 「おいおい。何を考えてるんだ」
アルフォンス 「まぁ、来週までには考えるらしいから」
エドワード 「いい加減だなぁ」
ウィンリィ 「来週こそ!私も出してよ」
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