週刊ウィンリィちゃん 第12号:スノー・ホワイト


 ここはとあるお城。
 王様とお妃様。そして、一人のお姫様が住んでいるお城。
 お姫様は白雪姫という名前で、とてもとてもかわいらしいお姫様だったそうです。
 王様もお妃様も、その可愛い白雪姫のことが大好きでした。
 白雪姫が7歳の誕生日を迎えた日。
 お妃様はいつものように鏡に向かって言いました。
「鏡よ鏡。世界で一番かわいいのは誰ダ」
 すると鏡はいつものように答えました。
『それはお妃様でございマス』
「お〜っほっほっほ。あたりまえネ」
『しかし、もっとかわいらしいのは、白雪姫デス』
「・・・それは本当デスか?」
『ハイ』
 その答えに怒ったお妃様は兵士に命じました。
「白雪姫を殺すのデス」
 兵士たちはびっくりしました。
 先ほどまでとても可愛がっていたお妃様がそんな命令をしたのですから。
 しかし、彼らは一般の兵士です。お妃様には逆らえません。
 兵士たちは白雪姫に剣を向けました。
 哀れ白雪姫はここで殺されてしまうのか。
「・・・なんで俺が姫で、ウィンリィがナレーションなんだよ」
「まぁまぁ。兄さん落ち着いて」
「これが落ち着いてられるか!!どうして俺がこんなピンクのヒラヒラドレスを着ないといけないんだよ」
 お姫様はあまりの出来事に気が動転しているようです。
 恐怖に怯え、震える白雪姫。
 そこに、一人の兵士が手を差し伸べました。
「あ、ボクの台詞か。えっと、さぁ姫。逃げましょう」
 兵士は白雪姫を隠し、そのままお城の外へと逃げていきました。
 そして、お妃様には白雪姫を殺したと報告したのです。
「よくやったワ。王もよろこんで・・・アレ・・・どこダ?シャオメイ?」
 ちょ、アンタの席はここじゃなくて向こうの王座でしょうが。
「あ、シャオメイ。どうしてそんなトコニ?」
 てぇぇい!物語が進まなくなる。
「ぬぁぁ!お前、シャオメイを投げるナ!!」
 はいはい。さっさと進めて進めて。
「シャオメイ、じゃなかった。王も喜んでいるゾ」
 ・・・まったく動かないんですけど。そのパンダ。
「気にするナ・・・ん、うん。改めて。鏡よ鏡。世界で一番かわいいのは誰ダ」
『・・・・・・・』
「鏡?」
『ちょ、若。だめデス。若は今回出番はモガモガ』
 ???
 えっと。鏡の中で何かが起こったようですけど。
『あ〜あ〜。ごほん。世界で一番かわいいのは白雪姫デス』
「声が変わったネ」
 リンさん・・・・
 ま、まぁいいわ。ほら先に進んで。
「はっ・・・し、白雪姫・・・どこまで憎らしい子」
 なんか、ずいぶんと迫真の演技で。
 場所は変わってお城から離れた山の中。
「ハイホーハイホー。ほれ、みんな声を出さんか」
「どうしてコイツは元気なんだ?」
「ボクはもう帰るよ」
 かわいらしい帽子を身につけた・・・えっと・・・あんまり可愛くないってか、小人でもないし。
 ちょ、誰よアイツら呼んだの。
「お久しぶり、ウィンリィちゃん」
 あ、エドのお母さん。
「今日は呼んでくれてありがとう。みんなを連れてきたわ」
 ・・・アンタか余計な真似を。
 ってことは、本来小人役の軍人さんは?
「寝ちまってるよ。いい夢を見ながらな」
 うぅ。来たからにはちゃんと演技してくださいよ。あう。
「はいはい。私は面倒だから嫌なんだけどね」
 だったら帰ってよ・・・
「ラストぉ・・・お腹すいたぁ」
 じゃあ、来ないでよ・・・
 はぁ、えっと、次のシーン。
 白雪姫が小人と山の中で出会うシーンね。
「ちょっと待て。本当にこのまま続けるのか?」
 それしかないでしょ?これ、生本番なんだから。
 観客を待たせちゃダメ。ほらエド、演技演技。
「はいはい。えっと、あなたたちは・・・」
「わしらはこの山に住むホムンクルスじゃよ」
「ホム・・・小人だろうが!!」
「そうじゃったかな?」
 ダメだ。おしまいだ。
「まぁ、どうでもよい」
「よくねぇだろ。ったく・・・えっと、お、私を一緒に住まわせてください」
 エド。この状況でも演技を続けるあんたは偉いわ。
 お姉さん感動。よよよ。
「よよよ、じゃなくて先に進めろよ」
 ん〜・・・予定外の出来事だから、ここいらは全部はしょって・・・お妃様の毒りんごのシーンね。
「もうメイの出番カ?えっと、りんごりんご・・・あ〜〜〜!!!」
 パンダ・・・食べてるわよ。
「シャオメイ吐き出セ!それは特製の猛毒入りダゾ!!」
 いや、メイちゃん。それはあくまで芝居のりんごであって。
 あ、パンダが倒れた。あれ?
「シャオメ〜イ・・・・・ま、いっか。それじゃあ、代わりに何か」
 ちょ、ちょっと待ちなさいよ!
 そのりんご、本当に毒入りなの?
「もちろんダ。毒が入ってないと毒りんごにならないからナ」
 りんごを用意したのは誰?
『・・・私デス。毒りんごを用意せよと命令されたものデ』
 鏡の裏からお返事どうも・・・
 う〜ん。困った困った。
「おい」
 どっかにりんごの代わりになるようなものは。
「おい!」
 何よ。
「お前、俺がアレを食ってたらどうしてたんだよ!!」
 へ?あ、そっか。本当ならエドが食べてたのよね。ん〜・・・まぁ、実際には食べてないし。
「結果論で話すなよ・・・俺は降りるからな」
 ちょ、ダメよ。ここまで来て。
 舞台を壊す気?
「しるか。お前が代わりにやればいいだろ」
 りんごを?
「何で俺がお前を食べないといけないんだよ!!じゃなくて白雪姫だ白雪姫!!」
 あぁ、そっちか。
 いやよ。そんな得体のしれない小人に囲まれるなんて。
「てめぇ・・・」
 あ、そうだ。ラース。そこのエドを殴ってでもいいから眠らせておいて。
「あん?・・・」
「やるのじゃ、ラース」
「はいはい」
「ちょっと待て!!」
 あぁ、小人たちは実はお妃様の放った刺客だったのです。
 ついに白雪姫はその命を落としてしまうのでしょうか。
「待ちたまえ!」
 へ?
「はっはっは!!お嬢さんの危機とあらば、どこへでも現れよう。このロイ・マスタングが」
 あぁ、もう。この人は。
 ロイさん!!あなたも今回は出番なしのはずですけど。
「急遽、王子役の中尉に代わってはせ参じた次第さ」
 リザさん・・・逃げたな。
「さぁ、お嬢さん、もう安心だ。下がっていたまえ」
 あれ。エドに気づいてない?
 ふぅん。面白そう。
 白雪姫の危機に颯爽と現れた王子様。
 姫を助け出すことは出来るのか。
「ふっ。造作も無いこと。さぁ、これを見よ!!」
 うわ・・・なんですかそれ?
「彼らの生前の遺骨や遺品だ。さぁさぁ」
「ボク。一抜けた。こんなことで時間つぶしててもしょうがないし」
「私も」
 あらら。帰っちゃった。
 王子様の攻撃は小人たちを、一人、また一人と消し去っていきます。
「あとはあなただけですよ。大総統」
「う、うむ」
「大総統の義子さんも見ていますよ?」
「うむむ。意地を張っていてもしょうがないか。退散する」
 ついに最後の一人を撃退した王子様。
「えっと・・・」
「白雪姫。私と共に暮らそう」
「ちょ・・・おい」
 つ、ついに来たか!?
 白雪姫と王子様のキスシーン・・・いいんでしょうか。
「姫」
「待てって言ってるだろうが!!!」
「ぬ?・・・鋼のか?」
 おしい、エドがかつらを取るのがあと数秒遅ければ。
「おしいじゃねぇ!」
「何をしているのだ貴様。まさか、そんな趣味があったとはな」
「俺の趣味じゃねぇ!」
 ふぅ。まぁいいわ。
 白雪姫は王子様に助けられて幸せに暮らしましたとさ。
 めでたしめでたし。
「・・・ちょっと待て。もしホムンクルスどもがこなければ中尉は王子のままだった」
 そうなりますね。
「その場合、鋼のは中尉と・・・」
 キスシーンありますよ?
「・・・貴様。焼け死ぬのと燃え死ぬの・・・どちらがよい?」
「どっちも同じじゃねぇか!!つうか、どのみち演技だ演技!本当にするわけねぇだろ」
 あ、これって・・・
「その身をもって証明して見せろ」
「やったろうじゃねぇか!!」
 この前と同じパターン!?
 やば、逃げないと。
「兄さん・・・大佐・・・」
『・・・あ〜・・・僕らも逃げようカ』
『了解デス』



エドワード   「結局同じ結果じゃねぇか!!」
アルフォンス  「うまくいくと思ったんだけどねぇ」
ウィンリィ   「うんうん。どっかの誰かさんがぶちこわさなければね」
エドワード   「おい・・・どっかの誰かって誰だよ」
ウィンリィ   「さぁねぇ」
エドワード   「てめぇ!!」
次回予告
 私の名前はリザ。
 孤児だった私をあの人は引き取ってくれた。
「そうだ、その目だ。俺を憎め・・・それが人殺しへの第一歩だ」
 そして、散ったあの人。
 私の名前はリザ。リザ・ホークアイ。
 次回『寡黙の鷹』
 次回もこのチャンネルに練成をおねがいします。

エドワード  「シリアス編?」
ウィンリィ  「てか、リザさんって孤児だったの?」
アルフォンス 「そんな話聞いたこと無いけど・・・」
エドワード  「まぁ、誰にも言いたくはないことの一つや二つはあるさ」
アルフォンス 「そう・・・だよね」
ウィンリィ  「にしても」
エドワード  「ん?」
ウィンリィ  「また出番なさそうじゃない!!」
 
 

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