週刊ウィンリィちゃん 第11号:禁断の愛


 部屋中に光が広がっていく。
 赤や青い光線。
 それが、螺旋を描きながら、その中心にあるモノへと集まっていく。
「・・・アル・・・」
 中心にあるのは大きな一つの甲冑。
 そして、その側で立つ一人の少年。
 エドワード・エルリックとアルフォンス・エルリック。
 失った右腕と左足を取り戻したエドワード。
 彼が、自分の弟であるアルフォンスの体を戻そうと、禁忌である人体練成を行っているのだ。
 部屋の光は徐々にその勢いを弱め、逆に、アルフォンスの甲冑そのものが光り始める。
 甲冑が紅く強い光りを、いや、甲冑そのものが光へと変質したように見える。
 光と変質した甲冑は、その姿を徐々に変えていく。
「・・・アル・・・戻って来い!」
 エドワードのその声と共に、徐々に光はヒトを形作る。
 そして、一瞬の強い輝き。
 あまりの輝きにエドワードも、目を瞑ってしまう。
「・・・にい・・・さん」
 か細い声。
 エドワードが目を開けると、甲冑の姿も光もなく一人の子供が横たわっている。
「・・・アル・・・・・・ん?」
 子供は裸だった。
 顔は幼さの残る顔。胸には膨らみかけた双丘。柔らかそうな手足。そして、足の間にはあるべきものが無い。
 エドワードの目の前に横たわる子供。
 紛れも無く、それは少女の体だった。
「兄さん・・・ありがとう・・・ボクを・・・」
 彼女はそれだけを言うと目を閉じて、体から力が抜ける。
「お、おい!アル!!アル!!」

「ね、兄さん。あ〜ん」
 病室のベッドで横たわる少女が口を大きく開けて待つ。
「はいはい」
 その口に、一口大に切ったりんごをエドワードが運ぶ。
「ん〜。甘くておいしぃ。はぁ、やっぱ生身の体はいいなぁ。もう一口、あ〜ん」
「ったく、いきなりいっぱい食うと腹に来るぞ」
 そう言いながらも、エドワードは少女の口にりんごを運んでいる。
「アル!!」
 病室のドアが開き、一人の少女が息を切らせながら入ってくる。
 少女の名はウィンリィ。
 エドワードとアルフォンスの幼馴染だ。
「・・・って、アルはどこよ・・・」
 ウィンリィは病室に入るなり、キョロキョロと辺りを見回す。
「目の前にいるだろ」
「へ?」
「ウィンリィ・・・お見舞いありがと」
 ベッドに寝たまま少女が微笑む。
「・・・え!?えぇぇぇぇぇぇぇ・・・」

「つまり、練成に失敗して女の子になったと」
「まぁ、失敗なんだろうなやっぱり」
 エドワードがこれまでの経緯を話す。
 ホムンクルスたちとの戦い。そして、実親のこと。
 全てが終わった後に、エドワードがアルフォンスの体を練成したこと。
「ふぅん。でも、よかったじゃない。アンタもこっちに残れたし、アルだって」
「いや、さすがに体がなぁ」
 二人でアルフォンスの方を見る。
 今は、ベッドの上でウィンリィの持ってきた本を読んでいるところだ。
「面影はあるわね」
「あぁ。多少な」
 元々中性的な顔立ちだったアルフォンスだ。
 顔だけみれば、元のアルフォンスだとわからないこともない。
「ま、いいんじゃない?弟が妹になった程度だし」
「おいおい。さすがに」
「・・・迷惑?」
 アルフォンスが顔を向けずにそう言う。
「え?あ、いや・・・別に迷惑じゃねぇけどよ」
 さすがのエドワードも少々ばつが悪そうに頭を掻く。
 容姿が変わったとはいえ、中身は紛れも無く弟のアルフォンスのものなのだ、完全には彼女を否定はできない。
「とりあえず、今までどおりでいなよ。きっと元に戻す方法が見つかるって」
「・・・そ、そうだな。姿が変わってもアルはアルだ!よっしゃ、アルが回復したらまた旅だぞ」
「うん。ありがと・・・兄さん」
 アルフォンスは本を置き、エドワードたちに背中を向ける。
「なんか飲み物買ってくるよ」
 エドワードが病室から出る。
「あ、あの・・・ウィンリィ」
「ん?」
「・・・ぼ、ボク・・・おかしいんだ」
「ん〜・・・確かにその姿はおかしいわね」
「そうじゃなくて」
 アルフォンスの態度が少々おかしい。
 ベッドの中で身をくねらせている。
 不審に思ったウィンリィがベッドに近づいて顔を覗き込む。
 耳まで真っ赤な顔。
 目もかすかに潤んでいて、完全に愛らしい少女の顔だった。
「兄さんを見てると・・・体が熱くなって・・・胸がドキドキして」
「え?」
「ねぇ!!これって・・・ボク、兄さんのこと」
 恋。
 実の兄への。
「ストップ!アル。あんたは男の子なのよ?」
「そうだけど。でも、でも」
「・・・練成の影響なのかしら」
 完全に恋する乙女モードのアルフォンス。
 この状態の女の子には何を言っても無駄だろう。
「ま、好きにすれば。告白するのもしないのもアンタ次第よ」
「・・・うん」
「じゃあ、私は帰るから。頑張りなよ」
 いったい、何を頑張るのか。
 ウィンリィはそれだけを言うと病室から出る。
「ウィンリィ、帰るのか?」
「うん。ちょっと用事あって。また来るわ」
 代わりに部屋に入ってくるエドワード。
 アルフォンスは、またエドワードに背中を向ける。
「アル。大丈夫か?俺はここにいるから寝てもいいんだぞ?」
 買ってきたコーヒーに口をつける。
「あ。うん・・・・ねぇ、兄さん」
「ん?」
 アルフォンスがエドワードの方を見る。
 まだ、顔は真っ赤なままだ。
「・・・ぼ、ボクを・・・抱いて」
「ぶぅぅぅぅぅぅ!!」
 口に含んだコーヒーを思い切り吹き出すエドワード。
「あ、アル!?」
「ボク、兄さんのことが好きなんだ・・・兄さんに・・・この体を」
 アルフォンスが上半身を起こして、着ていたパジャマを脱ぎだす。
 その下には何も身につけていない。
 ふっくらとした双丘。
「・・・いいよ。兄さんなら・・・さわっても」
「アル・・・ってできるか!!」
「ぶぅ。してよ!」
「ダメだ。ったく。早く服着ろ服」
 エドワードが病室から廊下に出る。
「あ」
 ドアのすぐ外でしゃがんでいたウィンリィとエドワードの目が合う。
 ウィンリィは笑みを浮かべながら彼の顔を見る。
「覗いてたな」
「あはは。もう、エドもあそこで女の子に恥をかかせちゃだめよ」
「アイツは弟だ!」
 そうはいうが、エドワードの頭からは先ほどの、半裸のアルフォンスの姿が消えない。
「ま、これからまた二人旅するなら間違いが起きるかもしれないしねぇ」
「起きるか!」
「あはは。ま、私にとっては、男でも女でもアルはアルだからさ」
「俺もだよ。ったく・・・どうしてこんな風になったんだか」
 エドワードは頭を振る。
 色々と考えては見たが要因はまったくわからない。
 もし、次にアルフォンスを元に戻す機会があっても戻るかどうか。
「ひょっとして。あのアルって、エドの願望だったりしてね」
「おい!」
「兄さん・・・」
 病室の中からアルフォンスの声がする。
 ドアを開け中に入る二人。
「兄さん・・・大好きだよ」
「うっ」
 満面の笑みのアルフォンス。
 エドワードに安息の日は来るのか。
「・・・兄さん・・・エッチ・・・しようね」



アルフォンス  「ふふ。この続きはウィンリィちゃんアダルト編でね」
エドワード   「あるかぁぁ!んなもん」
ウィンリィ   「あるわよ」
エドワード   「へ?」
ウィンリィ   「正確にはこれから出来るんだけどね」
アルフォンス  「ボクや兄さんや・・・ウィンリィのあんな姿やこんな姿が」
エドワード   「お、俺は絶対に出ないからな!!」
ウィンリィ   「ばかねぇ。一部の人は、アンタとアルとかアンタと大佐さんのを期待してるんだから」
エドワード   「えぇぇぇぇ!?」
アルフォンス  「と、いうわけで。ウィンリィちゃんアダルトは近日公開」
次回予告
 さて、お芝居シリーズ第2弾。
 今度の舞台は『白雪姫』
 はてさて、どんな内容になるのか。
 次回、スノー・ホワイト。
 次回もチャンネルに練成よ。

エドワード   「お、俺はアダルトになんて絶対に出ないからな!!」
ウィンリィ   「まだ言ってるよ・・・」
 
 

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