週刊ウィンリィちゃん 第9号:夢の島


『ダメだ。返してきなさい』
『・・・ごめんなさいね。パパがダメだって言うなら』
 少女は森の中を走っていた。
 小さな体で精一杯走った。
 来ているジャケットの胸元からは一匹の子犬が顔を出していた。
「もういいもん・・・私とワンちゃんの二人で暮らすんだから」
 少女はまだ10歳にも満たない年齢。
 子犬の方も、生まれたばかりの幼犬だ。
 疲れてきたのか、徐々に走る速度が遅くなっていく。
 そして、ついには足を止め、大きな木の根元に腰を下ろす。
「えっと。どこに行こうか?」
 少女が子犬に話し掛ける。
 だが、子犬は軽く首を傾げるだけだ。
「あ、そうだ。ここに家を探さないとね」
 そう言うと、少女が立ち上がり森の中を歩き出した。
 この森は原生林であるために、巨木が多い。
 その巨木には人が一人すっぽり入れるような、ウロが空いているのもある。
 それを探しているのだ。
「ん〜・・・こっちはなんか汚いし。こっちは・・・うわ。虫だらけだ」
 一つ一つ丁寧に調べていく。
「あ。これ、いいかも」
 調べていくうちに見つけた一つのウロ。
 少女が入っても余裕のある空間。
 虫もいないし、汚くも無い。
「よぅし。家はこれで決定ね」
 子犬を胸元から出して、ウロの中へと入れる。
「あとは・・・」
 急に少女のおなかが小さく鳴く。
「おなかすいちゃった・・・」
 少女はポケットを探すが何も出てこない。
 急に家を出てきたので、食べ物は何も持ってでなかったのだ。
「じゃあ・・・食べ物さがそっと」
 辺りを見回す。
 すると、少女が見たことのある草が青々と茂っていた。
「あ、これ。ママが採ってきてくれて美味しかった草だ」
 少女がその山菜を摘み取る。
 この付近に住んでいる人たちなら一般的に食べている山菜で、一旦お湯に通して食べるとほのかな甘味のある山菜だ。
 ただし、生で食べればアクが強く、苦いものであるのだが。
「ん・・・うぁ・・・苦い」
 少女はその山菜をそのまま口に含んだ。
 だが、すぐにそれを吐き出してしまう。
「うぅ・・・そっか。お湯で煮ないとダメなんだ・・・まずは火をつけないと」
 しかし、少女はマッチなどの火種になるようなものは持ってない。
「じゃぁ。前にパパが教えてくれた方法で」
 少女は太目の木の枝をもって、朽ち果てた木の側へと行く。
 木はボロボロになっており、そこから板状になったかけらを取り出す。
「よし。えっと・・・この板に棒を」
 木の枝を棒に見かけて両手ではさみ、木の板の上でその先端が回転するようにこすり始めた。
 原始的な方法ではあるが、火が着かないことは無い。
 ただし、それは大人がやっても難しい火のつけ方だった。
「んっしょんっしょ」
 少女は一生懸命に棒を回転させるが、一向に火のつく気配は無い。
 そして、1時間ほどたったことだろうか。
 木が乾燥していたことと、付着していた乾いたおがくずが火種となり、うっすらと煙を上げ始める。
「やった。もうちょっと」
 少女の顔に笑みが浮かぶ。
 それから数分後には板の一部は赤くなり少しずつ火が出始めた。
 少女がそこに、細かい枝をくべていく。
 それにより、最初は小さな火種だったものは、焚き火のように変わる。
「よし。あとはお水を沸かさないといけないから・・・」
 だが、焚き火の周りを石で囲ったわけではない。
 それどころか、周りには乾燥した木の枝や葉が多く落ちている。
「・・・え?」
 焚き火の火がそれらに引火し始めた。
「あ・・・あぁ・・・」
 火は徐々に燃え広がり、やがて巨大な炎となった。
「こ・・・こわいよぉ・・・」
 少女はその場にへたり込んでしまう。
 はじめてみた燃え広がる木々。
 あと1時間もしないうちに、確実に山火事と発展してしまうだろう。
「・・・け、消さなくちゃ」
 少女がよろよろと立ち上がるが、あまりの熱さに近づくことが出来ない。
「ど・・・どうしよう」
 途方にくれ、何も出来なくなったそのとき。
 少女の体が徐々に濡れ始める。
 いや、少女だけではない。
 森の木々にも水滴が現れ始める。
「雨?」
 それは一瞬の出来事だった。
 急に滝のような雨が森を襲い始めた。
「あ・・・」
 その雨で炎がその勢いを弱め始めた。
 そして、少女が見守る中、その炎は火となり・・・完全に消えてしまった。
「よかった・・・くしゅん」
 安堵と共に大きなくしゃみをする。
 ずっと雨にあたっていたために体が完全に濡れてしまったのだ。
 急いでウロへと戻る。
「ふぅ」
 ウロの中で濡れた服を脱ぐ。
 幸いにも季節はまだ初秋。
 夏ほどではないが、まだ寒いというほどでもない。
 ただ、雨により徐々に気温は下がっていく。
「あ・・・暖めてくれるの?」
 子犬が少女に近づいてくる。
 少女が抱きしめると、子犬から程よいぬくもりが感じ取れた。
「・・・・・」
 4つの目がウロの中からじっと外を見つめる。
 降り出した雨はやむ気配を見せない。
「・・・寒い」
 子犬のぬくもりよりも、雨によって奪われた外気が少女の体温を奪っていく。
「・・・帰りたいよぉ・・・」
 少女が子犬に顔をうずめて涙をこぼし始める。
 初めての孤独。
 初めての恐怖。
 今までは両親が居てくれて守ってくれていた。
「・・・パパぁ・・・ママぁ・・・」
 だが、今の少女には自分の家がどこにあるのかもわからない。
 無我夢中で走った森の中。
 帰ろうにも帰れない。それが少女の心をさらに締め付ける。
「・・・あっ・・・どこにいくの!」
 子犬が少女の腕をすり抜けて外に飛び出す。
「ワンちゃん!!・・・・・・っく・・・ひっく・・・」
 ついにこらえきれなくなり、声をあげて泣き出してしまう。
 誰も居ない。
 自分ひとりだけ。
「・・・うわぁぁぁん・・・・」
 少女は泣いた。
 普段からあまり泣かない少女ではあったが、今だけは別だった。
「ここに居たのか・・・心配したぞ?」
 それから数分して。
 ウロの中を誰かがのぞく。
「・・・あ・・・パパ」
 少女の父親。
 涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、父親に抱きつく。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
 涙を流しながら謝りつづける。
「いいんだ。パパも悪かったよ。ごめんな」
 父親は持ってきた替えの服とカッパを少女に着せる。
 そして、抱き上げる。
「さぁ。帰ろう」
「うん・・・・あ。ワンちゃん」
 先ほど居なくなってしまった子犬のことを気にかける。
「これかい?」
 父親の胸の中から子犬が顔をだす。
「この犬がここを教えてくれたんだ。パパのズボンをひっぱってね・・・」
「ワンちゃんが」
 逃げ出したと思っていた子犬は、少女の父親が側に来ていることを知って、迎えにいっていたのだ。
「ねぇ・・・パパ」
「いいよ。飼っても。そのかわり・・・ちゃんと面倒みるんだぞ」
「うん!」
 少女が満面の笑みでうなずく。
「えへへ。よろしくね・・・ワンちゃん」
「さぁ。帰ろう・・・ママが待っているよ・・・ピナコ」



エドワード  「えぇぇぇぇぇ!?」
アルフォンス 「これって・・・ウィンリィとデンの話じゃなかったんだ・・・」
ウィンリィ  「うん。だって、デンはお父さんが連れてきたんだし」
ピナコ    「懐かしい話だのぉ」
ウィンリィ  「あ、ばっちゃん」
ピナコ    「この頃は私もまだまだ若かったからねぇ」
エドワード  「若すぎ」
ウィンリィ  「ってか、タイトルと本文があってないし・・・」

次回予告
 ウロボロスの紋章が刻まれた女性
 彼女は誰も愛さない、誰も愛せない。
 そして、悲劇が生まれる。
 次回。血
 次回もこのチャンネルを練成しないさい

ウィンリィ  「げ!なんでアンタがここにいるのよ」
ラスト    「もちろん、来週の次回予告よ」
エドワード  「なぁ、最近、俺ら全然活躍してないな」
アルフォンス 「仕方ないよ。週間ウィンリィだし」
ウィンリィ  「私も全然出てないわよ!」
ラスト    「ふふ。来週をお楽しみにね」
ウィンリィ  「もっと私に出番を!」
 
 

 戻る