週刊ウィンリィちゃん 第3号:燃える大地


 アメストリスの東部のある町。リゼンブール。
 のどかな農業町で、この町で起きる事件と言えば、ウシやウマが逃げ出すという程度だ。
 しかし、そんなリゼンブールでこの数日、不思議な爆発音を聞くという事件が起きていた。
「あん?」
 農作業をやっていた男が顔を上げる。
「なんだ?どこかで爆発でも起こったのか?」
 男は不思議な爆発音を聞いていた。
 しかし、音のする方を見てもそこはだだっ広い草原。
 爆発するような施設も建物も何も無いはずだった。
「気のせいか」
 男がまた農作業に取り掛かった。

「ねぇ、兄さん聞いた?」
「なにがだ?大総統のあの余興か?」
 書物を読んでいたエドが、頭上からかかる声に顔を上げる。
 そこにはアルがエドを見下ろすように立っていた。
「ううん。リゼンブールで謎の爆発事件」
「あぁ、そっちか。あれだろ、なんもないところで急に爆発が起こるとかいう」
「うん。場所が草原とかだし、誰も被害が出てないみたいだけど」
 リゼンブールは彼らの生まれ故郷だ。
 あまり帰っていないとはいえ、事件が起こっては気にしないわけにはいかない。
「ねぇ、いってみる?」
「そうだな。ウィンリィについでにこの腕と足でも整備してもらうか」

 列車が急ブレーキをかけて、止まる。
 その衝撃で座席に横になっていたエドが椅子から落ちた。
「くそぉ!なんだなんだ」
 エドが窓の外を見ると見慣れた景色。
 リゼンブール駅の少し前のところで足止めをくらったようだ。
「どうしたんだろう?」
 車両の前のドアが開き、車掌らしき人物が入ってくる。
「申し訳ありません。土砂崩れで線路上に大量の土砂が積もっております」
「土砂崩れ?」
「ここってそんなに地盤もろかったっけ?」
 客が歩いて駅に行くために列車からおりていく。
 もちろん、エドとアルもそれにつづき列車を降りる。
 列車が止まっている数メートル前には大量の土砂があり、それが完全に線路をふさいでしまっていた。
「地盤は悪くないよな」
「うん。最近は雨も降ってないし」
 土砂崩れの個所は不思議な形だ。
 一部だけ何かで吹き飛ばされたかのようにえぐれ、その下の部分だけが崩れたようだ。
「なぁ、ひょっとして」
「あの爆弾事件?」
 もしも、これが最近うわさの爆弾事件と関係があるなら、初めての実害だろう。
 危うく人的被害に及ぶような事件だ。
「まぁいい。とりあえず、リゼンブールに急ごう」

「バウ」
「あ、デン。ただいま」
 アルの足元に一匹の黒犬がじゃれつく。
 エドたちの幼馴染のウィンリィの家で飼っている愛犬だ。
「おや。エドとアルじゃないなかい。どうしたんだい?」
 家から一人の老婆が出てくる。
 ウィンリィの祖母のピナコだ。
「ん。ちょっと整備と・・・あと」
「爆弾事件かい?」
 エドが頷く。
 ここに来るまでに駅から乗せてもらった馬車で事件の概要を聞いてきた。
 最初に爆発が確認されたのは、今から2週間ほど前。
 特長は、爆発音がかなり大きいわりには、実際の爆発してる場所の被害の少なさだ。
「あれ。ばっちゃん。ウィンリィは?」
 アルが首を動かし見回す。
「あぁ、ちょっと出てるよ。最近この時間になるとふらっとどこかに行っちまうんだよ」
 三人と一匹が家の中に入る。
 エドが機械鎧の調整を受けていると、ドアが開き誰かが入ってくる。
「あ、エド。それにアル・・・どうしたの?」
 ウィンリィだ。
 その顔と手は黒い何かがついている。
「あ、ウィンリィ。お久しぶり」
「ウィンリィ。その、顔と手の黒いのはなんだ?」
 お風呂場に向かおうとするウィンリィをエドが止める。
 ウィンリィが不自然な顔で振り向いた。
「あ。えっと、オイルよオイル。ほら、ばっちゃんにも」
「火薬だろ・・・」
 パタパタと動かしていた腕がピタリと止まる。
 同時に、その額には冷や汗が。
「ふぅ・・・だから、おやめって行ったじゃないかい」
「え?え?兄さん?ばっちゃん?ひょっとして」
「はぁ。ばれちゃったか」
 ウィンリィがエドの前に来て両手を差し出す。
「なにしてんだよ?」
「捕まえに来たんでしょ?軍の命令かなんかで」
「馬鹿。特に実害もなにも無いのに軍が動くわけ無いだろ」
 エドの顔が呆れ顔に変わる。

「んで?なんでそんなことしてんだ?」
「これ」
 ウィンリィに手紙を手渡される。
 そこには、軍の紋章が。
「大総統の余興。なんでお前のところにまで話が着てるんだよ」
 大総統が行う祭り。殺し御法度の格闘大会。
 ただし、武器でもなんでもありの大会だ。
「それに出ようかなって。でも、私、力とか無いし」
「お前なら十分素手OKだと思うけど」
 一瞬のうちにエドが床に伏せる。
 その頭にはスパナが。
「それで爆弾を?」
「うん。毎日実験してたの。今日はちょっと失敗しちゃったけど」
 線路の土砂崩れもウィンリィの仕業のようだ。
「でも、この試合タッグだよ?誰と出るの?」
「お、俺はでねぇからな」
 アルの足元でエドがうめく。
「ばふ・・・」
「誰もアンタには頼んでないわよ。ふふん」
 ウィンリィが不敵に微笑む。
 その微笑が・・・エドとアルには悪魔のように見えたという。


ウィンリィ   「なにこれ?」
エドワード   「ドリームカーニバルのネタだってよ」
ウィンリィ   「ふぅん。なんか中途半端ね」
エドワード   「だな」
ウィンリィ   「ま、いいわ。来週のほう・・・あ・・・れ・・・こ・・・」
ラスト     「ふふふ。ウィンリィちゃんはまたねぇ」
エンヴィー   「来週は俺たちがここを仕切るぜ」
グラトニー   「お、美味しいの?」
エンヴィー   「お前は話すな」

次回予告
 秋。秋といえば満月。お月見・・・そして運動会。
 大総統が計画した大運動会。
 そこに乱入するホムンクルスチーム。
 はてさて、どうなることやら。

エンヴィー   「大運動会?」
ラスト     「えっと。ギャグ、かしら?」
グラトニー   「お月見。おだんごおだんご」
ラース     「お前はどっか行ってろ!!ったく。俺は出ないぞ」
スロウス    「ダメよ。全員出るんだから」
グリード    「ふん。優勝は俺がいただくぜ!!てめぇらには負けねぇからな」
ラスト     「チームせんだってば・・・」
 
 

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