週刊ウィンリィちゃん 第2号:夏の終わりの花火大会


ウィンリィ   「って!!ちょっと待った!!」
エドワード   「ん?どうした?」
ウィンリィ   「どうした?じゃないわよ。今日は何日?」
アルフォンス  「えっと、9月12日」
ウィンリィ   「創刊号が出たのは?」
エドワード   「8月30日・・・」
ウィンリィ   「2週間よ2週間!!なに考えてるの。全然週刊じゃないじゃない」
アルフォンス  「忘れてたんだって」
ウィンリィ   「・・・殺す」
エドワード   「だぁぁぁウィンリィ!!スパナを取り出すなぁぁ」
アルフォンス  「あ、え、えっと。第2号スタートです」

 夜の闇の大空。そこに鮮やかな火の花が咲き乱れる。
「たぁまやぁ」
 夏の終わりを告げる大花火。
 特設の花火会場は多くの人でにぎわっていた。
「綺麗だね」
「あんなの。ただの火の連鎖爆発だろ」
 空を見上げ喜ぶアルフォンス。それと対極にふてくされているエドワード。
「あんた。もう少し感受性を養いなさいよ」
 そのエドワードの頭をウィンリィが小突く。
「いいじゃねぇか別に」
「兄さんも花火を楽しもう・・・あ・・・」
 一本の光が大空に上がるが、それは爆発を起こさない。
「不発?」
「ええぇ?また?今年は不発が多いわね」
 周りの客からも不満の声があがる。
 ついには立ち上がり帰りだす者も。

「こんばんわぁ」
 ウィンリィが小屋の扉を開けて中に入る。
 中には作業着姿の数人の男が車座なっている。
 男たちの顔は例外なく暗い。
「誰だ?」
「あ、今日花火を見せてもらったんですけど」
「客か。苦情なら勘弁してくれ。こっちも落ち込んでるんだ」
 手前に座っていた男が立ち上がりウィンリィを外に追い出そうとする。
「あ、あの。今日失敗したのって、火薬のせいじゃないですか?」
 奥に座っていた髭面の男がその言葉に反応する。
 立ち上がり自分の脇に置いてあった箱を手に持ちウィンリィの前にやってくる。
 箱の中には黒い砂のようなものが入っている。
「これ・・・純度が悪くないですか?」
「わかるか」
 ウィンリィが箱の中の砂を指につけて、その感触を味わう。
 この黒い砂は火薬。花火の命と言ってもいいものだ。
「今年は火薬の業者を変えたんだ」
「どこの業者さんなんですか?」
 箱の蓋に貼られた紙。そこに業者の名前が書いてある。
「ウィンリィ。兄さんが早く来いってぇ」
 外からアルの声が聞こえる。
「あ、これ。ちょっと借りますね」
 蓋に貼られた紙を剥ぎ取りウィンリィが外に出て行く。
「な、なんだったんだ?」
「まさか・・あの子」

「ここがその業者ね」
 ウィンリィが目の前の建物に掲げられた看板と、紙に書かれた名前を見比べる。
「なぁ、なんで俺がここにいるんだよ」
 その後ろでエドがぼやいている。
 はっきり言って、やる気といえそうなものは何も感じられない。
「ここは裏の社会にも手を伸ばしてるのよ?そんなところに私一人で行かせるつもり?」
「俺には関係ねぇだろうが」
 エドの不満をよそに、ウィンリィが建物の中に入っていく。
 まず目に付いたのは、広い部屋とその中央に立つ体格のいい男。
「誰だ」
「社長はいる?ロックベルが着たって言ってちょうだい」
 男は怪訝な顔をしながら奥に入っていく。
 待つこと数分。甲高い男の声が奥から響いてくる。
「ロックベルですってぇ?ちょ、ちょっと・・・どこよ」
 奥から出てきた別な男。
 顔には化粧が、その動きにはシナがあり、腰を振りながら歩いてくる。
「あら?いないじゃない」
 その口調はまさにオカマそのもの。
 派手なスーツと派手な化粧。はっきり言って最悪の部類の人種のようだ。
「はじめまして。私はウィンリィ・ロックベルです」
「あら?ロックベルって・・・あなたなの?」
 ウィンリィを見て、明らかに胸をなでおろす。
「なんの御用かしら?」
「これ。あなたのお店の領収書よね。最悪の火薬を売りつけた」
 ウィンリィが男の前に手に持った紙を突き出す。
 男がそれに目を通す。
「確かに私の店の商品ね。でも売ったのは極上の火薬よ」
 男がそう言うと、ウィンリィは男の腹を思いっきり殴る。
「嘘言っちゃダメよ・・・私はピナコ・ロックベルの孫よ」
 男が腹を押さえてうずくまる。
「私は嫌なのよ。このリゼンブールでそういう商売されるの」
「だ・・・だから、そんな火薬は・・・」
 その時、複数の男が入ってくる。
 昨日、花火小屋で見た男たちだ。
「あぁ、やっぱり来てやがったか」
「昨日の女の子。うわ・・・おそかったか」
 男たちはそろって肩を落とす。
「貴方たち。悪徳業者は今こらしめるからね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
 男たちがウィンリィの振り上げた拳を止める。
「な、何するのよ!!私は許せないの!!」
「だから違うんだって」
 ウィンリィをずるずると外に引きずり出す。
 暴れているが流石に数人の男につかまれては逆らうことが出来ない。
「こいつを見てくれ!!」
 ウィンリィの前に差し出された手には黒光りする砂。
 上質の火薬だ。
「あれ?」
「業者を変えて、保存方が変わったのをこの新参者が知らなくてな。誤って湿気らしちまったんだ」
「えっと、それじゃあ・・・ここの火薬は」
「間違いなく上質ないい火薬だよ」
 ウィンリィの顔が蒼ざめる。
 この後、家に帰ってピナコに怒られたのは、言うまでもない。


ウィンリィ   「やっぱこの作者殺す!!」
エドワード   「どうどうどう。落ち着け」
ウィンリィ   「私はこんなに凶暴じゃないわよ」
エドワード   「そうか?」
ウィンリィ   「エド。何か言った?」
エドワード   「スパナもってこっちを見るな!!」
アルフォンス  「あ、えっと来週の・・・?予告いっきまぁす」
次回予告
 爆弾狂と化したウィンリィ。
 彼女は破壊と殺戮の限りを繰り返す。
「ウィンリィ・・・俺の手で・・・」
 悲しみを乗り越え立ち上がるエドワード。
 そして、その二人を見つめる影。
「その二つ名は私を倒してからにしてもらいましょう」
 次回『燃える大地』

エドワード   「なんか、この次回予告って全然信用できないよな」
アルフォンス  「うん。今回も違ったもんね」
ウィンリィ   「というかなに?爆弾狂って」
エドワード   「なんか、ゲームしてて思いついたらしいぞ?」
ウィンリィ   「まぁ、いっか。どうせこんなシリアスにはならないだろうし」
エドワード   「それじゃあ、また来週」
 
 

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