週刊ウィンリィちゃん 創刊号:体と肉と心をヤク者たち


「うみぃ。ららら。うみぃ」
 ウィンリィが浮かれながらカバンに荷物を詰めていく。
 水着や浮き輪、ビーチサンダル。
「お前、ずいぶん浮かれてるな」
 エドがやってくるが全然気づいていない。
 ビーチボールにすいかにビーチパラソル。
「ちょっと待てぇぇぇ!!」
「あ、エド。来てたんだ」
 やっとウィンリィがエドに気が付く。
「ウィンリィ。なんでカバンにすいかやらビーチパラソルが入るんだよ!!」
 エドがつかつかと歩いてきて、ウィンリィの前に置いてあるカバンの中身を除き見ようとする。
 が、寸前でウィンリィがカバンのジッパーを閉める。
「ダメだよ。女の子カバンなんだから」
「そういう問題じゃないだろ!?だって、お前」
 カバンを肩に担ぎ立ち上がる。
「さ、海に行くよ」
「海なんてどこにあるんだよ。ここは内陸国だぞ!?」
 ウィンリィがエドの首を掴み引っ張る。
「さぁさぁ。行くよぉ」
「ちょ、放せぇぇぇ!」
 ウィンリィが部屋の奥にある扉を開く。
 すると、そこは隣の部屋ではなく、多くの人でにぎわう砂浜と綺麗な海の海水浴場。
「さぁ、泳ぐわよぉ」
「・・・・どこだよ。ここ」
 ウィンリィとエドが砂浜に立ち、扉を閉めると扉が消える。
「あ、ウィンリィ。兄さん。待ってたよ」
 少し離れたところから二人を呼ぶ声が聞こえる
 鎧姿のアルフォンスだ。
「あぁ、アル。遅くなっちゃってごめんね」
「ううん、大丈夫だよ」
 エドは未だに話についていけずに呆けてる。
「どうしたの兄さん?」
「ある・・・うわぁっちぃ」
 エドがアルの体に手を触れると、その手が真っ赤になる。
「あ、今ボクの体、フライパン見たくなってるから気をつけてね」
「あとでお肉焼こうね」
「本当に焼くの?」
 ウィンリィが誰もいない場所をみつけて、カバンを置く。
 ジッパーを開け、中に手を入れる。
「かさぁ。かさかさかさぁ。アンブレラぁ」
 そこから、巨大なビーチパラソルが出てくる。
「!?」
 すかさずエドがカバンの中を見るために走り出す。
 しかし、寸前でジッパーが閉められる。
「えへへ。あまぁい」
 その手には水着と浮き輪。
「あ、この浮き輪膨らませといてね」
 そう言って、ウィンリィはどこかに行く。
 カバンをみたがジッパーにはカギがついていて開けることが出来ない。
「ふぅ・・・仕方ない」
 ゆっくりと風船を膨らませ始める。

「じゃぁぁん。どぉ?」
 戻ってきたウィンリィは真っ赤なビキニに着替えている。
「派手」
「さすがに、それはちょっと」
 エドもアルも不評のようだ。
「えぇぇ?そう?まぁ、いっか。あ、浮き輪ありがとう。行ってくるね」
「お、おい。俺たちは?」
「アンタたち?その体で泳げるわけ無いでしょ?荷物番よ。どっかにかっこいいお兄さんいないかなぁ」
 ウィンリィが浮き輪を抱えて走っていってしまう。
 取り残される二人。
 真っ赤なコートの完全防備な子供と、完全鎧・・・あきらかにこの場所では浮いていた。

「ただいまぁ」
「おけぇり」
 笑顔で海からあがってきたウィンリィとぶすっとした顔で向かえるエド。
「すごくいい海だったよ」
「ウィンリィ・・・お風呂じゃないんだから」
 アルの鎧の上では焼肉がいい匂いをだしている。
 周りの小さな子供がそれを食べにきて集まっている。
「アル。あ、私の分もとっておいてね」
 アルは器用に肉を皿に置いていく。
「ん。オイシ。エドは食べたの?」
「いらねぇ・・・」
 エドがウィンリィに背を向ける。
「ねぇねぇ。何怒ってるの?海は入れなくて?」
「あ。あのね、ウィンリィ、ナンパされてたでしょ?」
 海に入っている間にウィンリィに声をかけてきた男は実に10人以上。
 全部追い払ったが、ウィンリィも嫌な顔はしていない。
「ふぅん」
 ウィンリィがエドの目の前に歩いていって、座る。
「妬いた?」
「だ、誰が!!」
 お皿からお肉を一枚箸で掴む。
「はい。あ〜ん」
 それをエドの前にもっていく。
「い、いらねぇ」
「そう?美味しいよ?」
 その肉を自分の口に運んで食べる。
 そして、もう一枚とり、同じようにエドの前にもっていく。
「はい。あ〜ん」
「あ・・・あ〜ん」
 口を開いたエドの中に肉を入れる。
「どう?」
「ん・・・美味い」
 顔を赤くしてうつむいてしまう。
 普段は勝気だが今日は珍しく、素直になっている。
「エド・・・今度来るときは・・・一緒に海に入れるといいね」
「あ、あぁ」

 夕日が沈んでいく。
「さ、帰ろうか」
 ウィンリィが例のカバンを開け、そこから大人ほどの大きさの扉を取り出す。
 そのとき、ウィンリィがカバンを閉め忘れたために、エドは中を見ることができた。
「え?」
 そこには何も無い。いや、闇だけがある。
 そして、その闇の中に、金色に光る巨大な瞳が一つ。
「!?」
 それを見たエドの体が固まる。
 次にエドが意識を取り戻したのは、それから3日後のことだった。


ウィンリィ   「いぇい。どうした週刊ウィンリィ創刊号は。あ、私は主役のウィンリィでっす」
エドワード   「パクリだろ。落ちも弱ぇし」
アルフォンス  「うん。あまり面白くは無いよね」
ウィンリィ   「はいはい。脇役のエドとアルはもう帰った帰った」
エドワード   「それに俺は妬いてねぇ」
ウィンリィ   「じゃあ、ここで次回予告行ってみよぉ」

次回予告
 ついに体を取り戻したアル。しかし、その体は元の体ではなかった。
「に、兄さん」
「アル!?お前・・・その体・・・」
 いったいアルの体になにがあったのか。
 そして、二人の運命は。
 次回『夏の終わりの花火大会』 次回もこのチャンネルを練成よ。

エドワード   「つうか、ナレーションとタイトル関係ないし」
アルフォンス  「ボクの体で遊ばないでよぉ」
ウィンリィ   「来週もよろしくねぇ」
エドワード   「人の話を聞けぇぇぇ!!」
 
 

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