鋼の大怪盗


 木々の間を何かが駆け抜ける。
 それはまるで、獲物を追いかける狼の如く。

「ったく。なんでこいつら呼んだんだよ!」
「予告状が届いた以上。こうするしかないでしょ?」
 リビングで男女が口論をはじめる。
 リビングにはこの男女のほかに、身なりの正した男が数人。どれもこれも警官のようだ。
「マスタング警部。こちらが予告状を受け取った、ウロボロス家の」
「どうもはじめまして。私、アメストリス警察のロイ・マスタング警部です」
 マスタング警部が、口論している男女の間に割り込む。
「あら。どうも。私はこの屋敷に住むラストですわ。それでこっちがグリード」
 女の方が答える。グリードと呼ばれた男は、顔をしかめてそっぽを向いて部屋を出て行く。
「屋敷にはほかには誰が?」
「あとは、グラトニーとエンヴィーの二人がいますが、今はちょっと出掛けていて」
 すぐに戻ってくると思いますと、後に続ける。
「警部。これが肝心の予告状です」
 マスタングの横にいた女性が一枚のカードを手渡す。
 そこにはこう書かれていた。
『今夜0時。ウロボロス家の秘宝、賢者の石を頂戴する・鋼の怪盗』
 今、このアメストリスの東部を騒がせているの怪盗。
 華麗に盗みを働き、警官たちをあざ笑うかのように闇に消える。
「賢者の石ですか。これはどちらに?」
「地下の宝物庫ですわ。ご案内します」

 ウロボロス家の背後にある崖の上。一人の少年がそこに立っている。
「外の警備は10人。今回はずいぶん少ないな」
 ウロボロス家は、森の中に存在しそこにたどり着くための道は立った一本。
 一歩間違えば、森の中でさまようことになるだろう。
 そして、その家の裏手には高い崖が存在している。つまり、崖下にため、背後からの強襲は無理に等しい。
「この森と崖があるから、人員を少なくしたのか?」
「兄さん。ここから行くの?」
 少年の背中に背負ったカバンから小さな甲冑の人形が顔を出す。
 ただ、その人形は自分で動き、あまつさえ言葉を話すようだが。
「あぁ。俺にとっちゃこんな崖。関係ないからな」

「こ!これは!?」
「これが我が家の秘宝。賢者の石です」
 マスタング警部の前に、一つの真っ赤な石がある。
 ただし、その石はマスタング警部よりも巨大だ。石というより岩。
「どうやって持って行くんだ。これを」
「さぁ。私もこの予告状が来たときに驚きましたよ」
 もちろん重さは見た目通りの重さ。かなりの重量だ。
 間違いなく、大人が十人以上でやっと持てるといった程度。
「持っていけるなら、持っていって欲しいですね。最近これが邪魔になってきたので」
「ホークアイ警部補。帰るぞ」
「はい」
 警部と警部補の二人は帰り支度をはじめる。
 屋敷の周りにいる警官たちも、馬車に乗り返っていく。
「あ、そうだ。美味しいワインが手に入ったので、晩餐でも一緒にどうですか?」
「いえ。私たちは」
「そうですか。今日はもう仕事もありませんし。いただきましょう」
 拒否をしようとした警部補の口を押させ、警部が賛同する。
 そうして、3人で地下室を後にした。

「兄さん?行かないの?」
「ちょっとまて。警官隊がみんな帰っていく。これは、罠か?」
 崖の上で見ていた少年がつぶやく。
「兄さん。じつはここを降りる方法、考えてなかったでしょ」
「!」
 少年の頭の上を冷たい風が吹き抜ける。

「・・・警部」
「さぁ、どうぞ」
「・・・警部!」
「あらあら。私を酔わせてどうする気なの?」
「警部!!」
 ホークアイ警部補の声が、ダイニングに響き渡る。
「なにかね」
「なにかね。じゃありません。戻って報告をしないと」
「報告も何も、怪盗が指定した時間は0時だ。あと3時間もあるではないか」
「警官隊を撤収させておいて。それは職場放棄と同じですよ」
 警部補が警部をまくしたてる。
 持ち前の頭脳と冷静な判断力。そして指揮力などから、とんとん拍子に出世した彼女だった。
 しかし、この警部についてからは何もかもがうまくいかない。
「では、君だけ帰ればいいではないか」
 確かにその通りなのだが。彼女は。
「そ、そう言うわけにはいきません。私は警部を補佐するのが役目ですから」
「ふむ。ひょっとして、君は私に惚れているのか?」
 警部が笑いながら言う。
 そして、そんなわけはないかと、声をだして笑ったがその声は警部補には届いていない。
「あ、あの、わ、わたし、は。見回りに行って来ます!!」
 警部補の顔が見る間に真っ赤に染まる。
 そして、リビングの外に駆け出していく。

「ホークアイ警部補」
 ベランダで外を見ていたリザの肩を、ロイが掴む。
 振向くその顔はまだ赤い。
「すまない。君が」
「いいんです。私は、警部を補佐するのが役目です。こんな感情は抱いちゃいけないんです」
 ロイの言葉を途中でさえぎる。
「すみません。持ち場に戻ります。あと3時間無いので、見回りをつづ」
 今度はリザの言葉がさえぎられた。
 ロイの口によって。
「んっ」
 ロイの舌が、リザの口の中に侵入する。そして、お互いがお互いの舌を求め合い絡み合う。
 二人の高ぶった声は、夜の森に消えていく。

「ん〜。兄さん寒いんだけど」
「お前、そんな身体で寒いのかよ」
 少年はまだ崖の上で屋敷を見ている。
「身体は寒くないよ。心が寒いんだよ。兄さんってホント考えなしだなって思って」
「うるせぇ。お、そうだこの手で行くぞ」
 何かを思いついたのか、少年がカバンからある道具を取り出した。

「おかえりなさい。もう、0時になりますよ。ずいぶん長く見回りをなさってたのね」
 リビングでラストがくつろいでいる。
 ちなみに、警部と警部補の二人の衣服は、どことなく着崩れている。
「あ。あぁ。うむ」
「や、屋敷の中に、問題はありません。たぶんですけど」
 警部補の最後の台詞はほとんど聞き取れないほどに小さい。
 ちょうどその時、0時を知らせる鐘の音が鳴り響く。
 と、同時に玄関の呼び出しベルがなる。
「誰かしら」
「まさか、鋼の怪盗でしょうか?」
「これは私たちをおびき寄せる罠か?」
 玄関のドアを開けると、そこには屈強な男が立っていた。
「このたびはアームストロング便をご利用、まことにありがとうございます。荷物はどこですかな?」
「に?荷物ですか?」
 さすがのラストもその男にあっけにとられる。
 なぜなら、男は上半身裸なのだ。
 その上半身は鍛えぬかれ、女性のウエストほどの腕や筋肉で膨らみ割れた胸や腹が見てとれる。
「賢者の石を運んで欲しいとか」
「あ、それでしたら・・・地下の赤い石・・・ですわ」
 男は地下の階段を下りていく。
 そして、男が数人がかりで持たなくてはいけなさそうな石を、一人で運び出す。
「では、これはお預かりしますので」
 外に止めてある。大型の馬車の荷台に石を積みこむ。
「そうそう。時間外の受領と偽名での受付は以後はやめてくださるようお願いします」
 そう言って、男が出て行く。
 扉が閉まったあと、ラストの手には一枚の紙切れが。
 そこには『受領書:鋼の怪盗様』と書かれている。
『えぇぇぇぇ!!!』

 少年は崖の上で、赤い石が運び込まれた馬車を見て微笑む。
「どうだ、完璧な作戦だろ」
「くぅくぅ」
「寝るな!!」
 少年の右手には、携帯電話が握られていた。




なんだこれは。いいのかこんなので。
あまりのくだらなさに、くらっときてしまった。ダメダメ作品?
冒頭はどこの伏線にもなってないし。グリードは結局途中から出てこないし。
ロイとリザは×××しちゃうし。
エドにいたっては、最後までずっと少年のままだし。怪盗になってないし。
 
 

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